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衛藤達也
現地集合、現地解散 ドイツ5日間、200台撮影の旅 その4
【前回までのあらすじ】 1980年代後半から`90年代にかけ、ミスター・バイク誌上で数々の作品を発表したエトーカメラマン。姉妹誌TARGAから「5日間で200台撮影して」との依頼でドイツに渡った。初日撮影ワンショット目にいきなり大型ストロボを壊してしまうという大ハプニングに直面するも、鍛え抜かれたプロ魂を発揮し災い転じて撮影スピードが早くなる。さらに昼メシを食べる時間も惜しみ精力的に撮影をこなし、順調に思えたのだが……
(2011年4月4日更新)
だって興味ないんですもの……
3日目の昼には予定通り、車両の置きを全て撮り終えた。
昼は持って行ったパンを食べて午後からはイメージの撮影を開始。
車両を博物館の裏に運んでもらい、ケンオーが考えたシーンを作り撮影を始めた。
すると、「いいですかエトーさん、このカットは`60年代のレースシーンで熱く戦ったマシンを切り取りたいのです。凄く素晴らしかったことを表現したいのです。解りますか、エトーさん、僕のいっていることが?」と、熱く語り始めた。
しかし、あまりにもマニアックな話で自動車に興味がない私はチンプンカンプン。
「フーン」という感じで聞き流していたら、言葉の端々がキツくなってきた。
「撮影する車の知識がなくて、よく撮影できるもんだ」とは言わなかったが、たぶん思っていただろう。
このままではまずいなあと反省し、夜の食事のあとにホテル横あったハードロックカフェ(六本木に有るのとはロゴが違った)なる居酒屋に誘った。
店に入るとなぜかでかいドーベルマンがいた。
ドイツといえばビール。ということで、まずはビールを注文し乾杯。
一杯飲むと機嫌が直ってきたようで、いつものように好奇心がむらむらしてきたのか「ちょっと偵察してきます」と席を立った。
2、3分するとと興奮して戻ってきた。
「エトーさん奥の方で、ドイツ人が何をしていたか解ります? いいですか、大きいドイツ人が大きな丸太に向かって釘さしゲームをしているんですよ。釘さしですよ。居酒屋で釘さしなんてしますか? 見てきてください.凄いですから」
そう言われ見に行くと、本当に釘さしをやっていた。
合理的なドイツ人がなぜ居酒屋で釘差しに夢中になるのか? 奥が深い。
関係修復もなってホテルに戻った。
それはいいのだが、さすがに3日目となると、日本人の私はどーしても湯船につかりたい。
でも、部屋にはシャワーしかない。
そこで、タイルの床が10センチほど高さがあったのでタオルで栓をして、水位8センチくらいお湯をためて行水してみた。
それをケンオーは鋭い眼差しで見ていたようだ。
風呂から出るといきなり「いいですかエトーさん」が始まった。
そして、なぜか延々と香水のうんちくを叩き込まれた。これがのちに私を香水マニアにしてしまうきっかけになろうとは。
4日目も着々とイメージカットを撮影。ケンオーは相変わらず、大好きな車を舐める様に観察をし、撮影箇所を指示してくれる。単体撮影と違い余裕ができ、日が暮れたら撮影は終わり。
余裕が出来たので、たまには冒険をしようと違うレストランに入ったり、お土産を買う時間もないので雑貨屋に入ったりした。
あいかわらず2つしかドイツ語の解らない私は、めんどうくさいので会計は「勝手に取ってくれ」両手に札と小銭を乗せて差し出した。
するとケンオーは「また、このおやじ、オネーさんにうけようとして……大人はなんて汚いマネをしてモテようとするのだろうか」この時は目や態度ではなく、口でしっかりといわれた。
(もう一回続く)