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ブースカ

第3湯
 青森八甲田山周辺の湯巡り(後編)

青森八甲田山周辺の湯巡り2日目。天気は薄曇り。夏に突入しているとは思えないほど爽やかな朝を迎えた。

今回のツーリングのメインとなる東北地方を代表する温泉である酸ヶ湯や蔦温泉、谷地温泉、猿倉温泉。青荷温泉に入湯すべく、手際よく朝食を済ませて撤収し、午前8時前に森林公園キャンプ場を出発した。

いつもならもう少し余裕があるのだが、最終目的地である青荷温泉の日帰り受付が午後3時までということもあり、それまでに他の4湯に入らなければならない。

入浴時間はもちろん、着替えや移動、さらに昼食時間を考慮すると、なかなかタイトなスケジュールだ。今まで培ってきた温泉ツーリングテクニック(?)が役に立つ時が来た。

まずは蔦温泉に午前9時半まで到着すべく、気合を入れて国道4号線を十和田町方面へと進み、途中国号102号線に入って八甲田山方面に向かった。

国道102号線は有名な奥入瀬渓流を通るのだが、奥入瀬渓流とは反対の国道103号線方面に進むと、奥深い森林の中に堂々とした木造建築の一軒宿が現れる。それが蔦温泉だ。

ロータリーのような駐車場にバイクを停めて、日帰り専用の受付で入湯料400円を払って浴場に向かう。

男女別の湯船はさほど大きくはないが、建物同様の木造作りの浴場は天井が高く、とても風情がある。

お湯は無色透明。適温で朝風呂には最高。東京から来た男性が私のバイクを見て話しかけてきた。どうやら昨日は十和田湖で花火大会があったらしく、観光客でいっぱいだったとのこと。十和田湖でキャンプしなくて正解だった。

まったりしたいところだったが、次の谷地温泉に向かうことにした。

谷地(やち)温泉は蔦温泉から国道103号線を酸ヶ湯方面に10分ほど行き、側道を入ったところにある。

谷地温泉も蔦温泉と同様、一軒宿だ。開湯して400年は経過しているらしいが、最近新装オープンしたらしく、平屋の建物は新しい。

入湯料は500円。男女別の木造の湯船は、湯温が42℃の「上の湯」と、湯温が39℃「下の湯」に分かれており、これぞまさに温泉といった硫黄臭の漂う白濁湯だ。

下の湯は満員だったので上の湯に浸かる。じんわりと身体に湯が染み込んでくる。効能は高そうだ。

空が出た下の湯に入ってみると、ぬるめなため長時間浸かるにはこちらが良さそうだ。秘湯気分を満喫したところで、次の猿倉温泉に向かった。

猿倉温泉は谷地温泉から酸ヶ湯方面に向かって国道103号線を進み、側道に分け入った山の中にある一軒宿だ。

山小屋風の建物に入り、入湯料500円を払う。

建物奥にある男女別の浴場はこじんまりしているが、露天風呂がある。お湯は谷地温泉と同様に白濁している。

内風呂はやや熱め。露天風呂に行ってみると湯船が2つあり、奥はややぬるめのお湯だった。飛来するアブと戦いつつ、緑に囲まれた白濁湯の露天風呂は最高。

3湯目に差しかかるとタオルがびしょびしょで使い物にならなくなる。絞って何とか汗を拭った。

しばしクールダウンしてから、いよいよ最大の目的地である酸ヶ湯(すかゆ)に向かう。

酸ヶ湯に近づくと、俄然観光客の量が増える。

ワイディングロードを進んでいくと、国道103号線沿いに酸ヶ湯はあった。

湯治場も兼ねた堂々たる建物は、名湯の雰囲気を漂わせる。ロビーで入湯料1000円を払う。

ここ酸ヶ湯の名物といえば通称「千人風呂」と呼ばれている混浴風呂だ。実際に目の当たりにすると、その湯船・浴室の巨大さと、湯船から溢れんばかりに流れる白濁湯に驚く。

混浴風呂の他に男女別の浴場もあるが、ここは是非千人風呂に入ってみていただきたい。

また脱衣場にはいろいろな能書き・アドバイスが書いてあり、それを見ているだけも飽きない。

秘湯と呼ぶにはあまりにも入浴客が多いが、温泉好きなら一度は入っておきたい。

酸ヶ湯から出てきたところでちょうど午後12時。コンビニで買ったおにぎりと、酸ヶ湯の名物「酸ヶ湯そば(670円)」で腹ごしらえ。

ここまでほぼ予定どおり。あとは青荷温泉に午後1時頃に着けばOKだ。

国道103号線から国道394号線を進み、黒石方面に向かう。国道394号線から国道102号線に向かい、青荷温泉へと向かう林道を進む。

途中、空の平高原温泉という名の温泉があったが、帰りに寄ることにして、午後1時半、青荷温泉に到着した。何とか間に合った。

駐車場にバイクを置き、受付で入湯料500円を払う。

青荷温泉はランプの宿として知られている秘湯だ。

浴場は一軒宿ながら小川の流れる敷地内に点在しており、まずは橋を渡った先にある混浴露天風呂に入る。

お湯はややぬるめの無色透明。5湯入った達成感に浸りながらしばしまったり。その後、男女別の滝見の湯に入った。

無事、青荷温泉が入れたのであとは帰京するのみだが、帰り道に先ほど発見した空の平高原温泉に入ってみることにした。

道沿いにポツンとあり、どうやら出来て間もない温泉らしく、建物は非常に簡素な作りで、看板がなければ単なるプレハブ小屋だ。

入湯料は200円。湯船は無色透明のお湯で満たされている。窓からの眺めはよく、意外に落ち着いて入れた。

私が出た後も地元の人が訪れており、知る人ぞ知る温泉なのだろう。

ここからどうやって帰京するかだが、何故かもう1湯入りたくなり、国道454号線から国道7号線に入り、さらに国道282号線に進んで十和田南ICの近くにある大湯温泉の共同浴場「川原の湯浴場」に入った。入湯料は150円。

湯船はこじんまりしており、無色透明のお湯は湯慣らししてから入らないと熱くて入れない。まさに共同浴場の醍醐味。地元のおじいさんたちと一緒に湯に浸かった。

浴場から出ると時間は午後5時。あとはひたすら東京を目指すのみ。

東北自動車道と走り、途中1回も渋滞に遭遇せず、自宅に着いたのは午前3時を回っていた。さすがに疲れた。

1泊3日と強行軍だったが、東北の名湯を巡れた充実したツーリングだった。


[第2湯青森八甲田山(前編)]
[第3湯青森八甲田山(後編)]
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毛野ブースカ
ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は446湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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(2010.09.14更新)

  • 立派な木造作りの蔦温泉の正面玄関。お湯は無色透明な優しいお湯。まったり入るにはピッタリの温泉だ

  • 立派な木造作りの蔦温泉の正面玄関。お湯は無色透明な優しいお湯。まったり入るにはピッタリの温泉だ。




  • 山奥にひっそりと佇む谷地温泉。硫黄臭が漂う白濁したお湯は温泉好きならずとも満足できるはずだ

  • 山奥にひっそりと佇む谷地温泉。硫黄臭が漂う白濁したお湯は温泉好きならずとも満足できるはずだ。




  • 周囲を緑に囲まれた猿倉温泉の露天風呂。お湯は白濁というよりもエメラルドグリーンに近い色となっている

  • 周囲を緑に囲まれた猿倉温泉の露天風呂。お湯は白濁というよりもエメラルドグリーンに近い色となっている。




  • 東北を代表する名湯である酸ヶ湯。白濁湯が溢れる巨大な混浴露天風呂は圧巻の一言。一度は入っておきたい

  • 東北を代表する名湯である酸ヶ湯。白濁湯が溢れる巨大な混浴露天風呂は圧巻の一言。一度は入っておきたい。




  • そば粉100%のそばと甘みのあるつゆが特徴の酸ヶ湯そば。立ち食いも可能なので、温泉に入った後のシメで食いたい

  • そば粉100%のそばと甘みのあるつゆが特徴の酸ヶ湯そば。立ち食いも可能なので、温泉に入った後のシメで食いたい。




  • 青荷温泉の混浴露天風呂。敷地内を流れる小川を渡ったところにあり、まったりとした時間が過ごせる

  • 青荷温泉の混浴露天風呂。敷地内を流れる小川を渡ったところにあり、まったりとした時間が過ごせる。




  • 青荷温泉に行く途中で発見した空の平高原温泉。温泉マークがなかったら見逃してしまう。ある意味で秘湯だ

  • 青荷温泉に行く途中で発見した空の平高原温泉。温泉マークがなかったら見逃してしまう。ある意味で秘湯だ。




  • 温泉街にある共同浴場の風情を漂わせる大湯温泉の「川原の湯浴場」。源泉をじっくりと味わうことができる

  • 温泉街にある共同浴場の風情を漂わせる大湯温泉の「川原の湯浴場」。源泉をじっくりと味わうことができる。


    ブースカ的評価
    (5段階評価)

    ●蔦温泉
    ★★★★★
    なめらかなお湯は泊まって味わいたい
    ●谷地温泉
    ★★★★★
    硫黄臭の漂う2種類の白濁湯は効能高し
    ●猿倉温泉
    ★★★★
    野趣溢れる山奥の露天風呂はお薦め
    ●酸ヶ湯
    ★★★★★
    温泉好きでなくとも行っておくべし
    ●青荷温泉
    ★★★★★
    何種類かの浴場が楽しめる一軒宿
    ●空の平高原温泉
    ★★★★
    地元の人しか知らない出来立ての共同湯
    ●大湯温泉
    ★★★★★
    温泉街の共同湯の雰囲気が味わえる

     

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