第12湯
紀伊半島の温泉(第3日目)
前日の大荒れの天気がウソのように晴れ渡った、まさに五月晴れの3日目。今日は国道42号線を走って和歌山市方面に向かい、大阪で寄り道してから東京に戻るという、いつもながらのハードスケジュールで進めることにした。
起床後、まずは雨でズブ濡れになった装備類を天日干しするところから始まった。ここまで晴れていて、しかもそよ風が吹く天候はそうあるものではない。あっという間に装備が乾き、気分上々で午前8時30分にキャンプ場を出発。
国道42号線を走り、御坊市を過ぎたところで県道176号線、県道21号線に入り、滝原温泉「ほたるの湯」に向かおうと思った。しかし、開店時間までまだ時間があったので、御坊市方面に戻ったところにある川辺温泉「きさくの湯」に入ることにした。
ツーリングマップルに書いてある場所に近づいているのだが、なかなか見つからない。15分ほど探し回り、県道26号線沿いにあるのをようやく発見した。建物の前を何度か通過していたが全然気づかなかった。
川辺温泉「きさくの湯」は。県道26号線と日高川沿いにある温泉だ。県道からは非常にアクセスしやすいが、和風料理店を併設したコテージ風のペンションにあり、一見すると分かりにくい。入湯料は600円。浴室は内風呂と露天風呂が用意されており、県道沿いとは思えないほど静かで落ち着いている。お湯は無色透明で朝風呂にバッチリ。湯加減もちょうどいい。
幸先のいい朝風呂に入ったところで、先に向かおうと思っていた滝原温泉「ほたるの湯」に向かう。県道21号線から山間部に入り、途中、案内看板が多く建てられており、迷うことなく温泉に到着した。初めて来た旅行者にとって、これはありがたい配慮だ。
滝原温泉「ほたるの湯」は有田(ありだ)郡広川町にある日帰り入浴施設だ。広川町の交流促進センターも兼ねているため館内は広々としており、宿泊も可能。入湯料は500円。その名のとおり6月になるとホタルが周辺で飛び交うという。内風呂は広く清潔感があり、露天風呂はそれほど大きくはないが、ゆったりくつろげる。無色透明の冷鉱泉の温泉は肌触りの優しいお湯だ。
滝原温泉を出ると午後12時ちょっと前だった。気温が上昇し、やや汗ばむ陽気の中、昼食前に1湯入ることにした。
次に向かったのは、湯浅御坊道路の湯浅インター近くにある二の丸温泉だ。国道42号線に戻り、湯浅インターを過ぎて山間部に差し掛かるところに二の丸温泉はあった。
二の丸温泉は有田郡湯浅町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円。この温泉の特徴は、川沿いに建てられた4階建ての施設のうち、内風呂のある地上1階横の階段を降りていくと地下1階があり、地下1階部分すべてが露天風呂になっていることだ。壁のない内風呂と露天風呂のコンビネーションといったほうが正しいかもしれないが、開放感はバツグン。お湯はアルカリ性の強い単純泉。滑らかなお湯なので、長湯したくなる。
なかなかユニークな二の丸温泉に入ったところで、昼食を摂るべく国道42号線に戻り、有田市方面に進んだ。国道沿いに見つけたうどん屋で(国道沿いには、なぜかうどん屋が目立った)カレーうどん定食を食す。腹を満たしたところで、うどん屋から15分ほど走ったところにあった有田川温泉「光の湯」に入ることにした。
有田川温泉「光の湯」は、有田市内の有田川沿いにある日帰り入浴施設だ。今回のツーリングで入った施設の中では最も大きかった。入湯料は700円。若干料金は高いが、内風呂、露天風呂ともに充実しており、なかなか気合の入った温泉だった。ゆっくりくつろぐには最適な温泉だ。
有田川温泉に入ったところで午後2時30分前。ここからは国道42号線を走って和歌山市に入り、淡路島に最も近い加太(かだ)を目指すことにした。
温泉で火照った身体を走りながら空冷しつつ、ふと気づいたことがあった。それは和歌山県の日帰り温泉は開店時間が遅いことだ。午前11時や午後12時といったところが多く、この地域の特性なのかもしれない。そうした事情を把握していなかったので、昨日は危うく朝風呂を逃すところだった。朝風呂に入りたい方は、事前に時間をチェックしておくことをお薦めする。
照りつける日差しの中、和歌山市内に入り、俄然交通量が多くなった。和歌山県庁前を過ぎて国道26号線に進み、加太方面に向かう県道7号線に入った。加太に向かう途中で、新町温泉と書かれているところがあったので、寄ってみることにした。
新町温泉は和歌山市加太駅前にある温泉で、どうやら銭湯のようだ。入湯料は340円。浴室は中央に湯船があるいかにも銭湯らしい作りをしており、泉質表示はどこにも掲げられていない。調べてみても、はっきりと温泉とは掲示されておらず何とも微妙だが、とりあえず温泉カウントに入れておくことにした。
謎多き新町温泉を出て、加太に到着。加太湾からは夕陽の向こうに淡路島が見えた。しばし海を眺めたところで、加太湾近くにある加太淡島温泉「大阪屋ひいなの湯」に入ることにした。
加太淡島温泉「大阪屋ひいなの湯」は、加太地域でも指折りの宿泊施設だ。料金はやや高めの900円。浴室はそれほど大きくないが、露天風呂は紀伊水道と夕陽を一望できる開放的なロケーションにある。お湯は無色透明のナトリウム塩化物泉。食事にもこだわっているようなので、泊まってゆっくり過ごしてみたい温泉だ。
加太淡島温泉を出たところで午後5時を回っていた。そろそろ帰路のことを考えなければならない。あと1湯入りたいが、その前に和歌山ラーメンを食べてみたかった。
とりあえず来た道を戻り、和歌山市内に入ったがラーメン屋らしいものは見つからない。仕方ないので、阪和自動車道の和歌山インター近くにある花山温泉「薬師の湯」に入ることにした。これが紀伊半島ツーリング最後の温泉だ。
花山温泉「薬師の湯」は、和歌山インターにほど近い宿泊施設も併設した日帰り入浴施設だ。入湯料は1000円(午後5時以降は600円)。館内は昭和テイスト漂う懐かしい作りだが、入浴客で溢れかえる浴室に入ると、石化して湯船に堆積した茶褐色のお湯が待ち受けていた。ほとんど湯船の底が見えず、ゆっくり入ってお湯を確かめると、鉄分の匂いがした。予想どおり鉄分が酸化して出来た色だった。
紀伊半島ツーリング最後の温泉は、なかなかインパクトのある温泉だった。
花山温泉の館内で見つけたラーメンマップをもとに、インター近くにある元花山東マル高ラーメンで和歌山ラーメンを食べた。これで思い残すことなく紀伊半島を去ることができた。
和歌山インターから阪和自動車道を通り、大阪市内で知人に会ってから大阪を出発。昨年淡路島から帰る時と同じように夜通し走り、新名神→伊勢湾岸道→東名高速を通り、午前6時に自宅に到着。一睡もしなかったのでフラフラだった。
数日後、バイクショップで前後タイヤを交換したところ、「お客さん、リアのスポークがグラグラですよ!」と指摘された。
確かにツーリング前からリアがブレるのが気になっていたが…よく帰ってきたと思う反面、もう無理無茶なツーリングはしないと決めた(って言っておきながら、バカだから出かけるんだろうな…)。
ブースカ的評価
(5段階評価)
- ●川辺温泉「きさくの湯」
- ★★★
- 県道沿いながら静かで落ち着いた温泉
- ●滝原温泉「ほたるの湯」
- ★★★
- 親切な道案内が旅人を迎えてくれる山間の温泉
- ●二の丸温泉
- ★★★★
- 他に類を見ないデザインの露天風呂は入ってみる価値あり
- ●有田川温泉「光の湯」
- ★★★
- この地域で最も充実していると思われる温泉施設
- ●新町温泉
- ★★
- 本当は温泉ではないかもしれないが、地域の人に愛される銭湯
- ●加太淡島温泉「大阪屋ひいなの湯」
- ★★★
- 日帰りではもったいない眺めのいい露天風呂が特徴
- ●花山温泉「薬師の湯」
- ★★★★
- インパクトのある泉質に地元の方が多く集まる老舗の温泉