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ブースカ

第13湯
南志賀高原周辺の温泉

ゴールデンウィーク以降、仕事が重なり、なかなかツーリングに行けなかった。そうこうしているうちに梅雨に入ってしまい、夏までは無理かと思っていた。

しかし、そんなことでジッとしている私ではない。忙しさのピークが過ぎてぽっかり時間ができたのと、梅雨の晴れ間を利用して、群馬県と長野県の県境に点在する温泉に、日帰りで出かけることにした。

群馬県と長野県の県境と言えば、草津温泉や尻焼温泉などがある日本でも有数の温泉地帯だ。東京からも日帰りで行ける距離とあって、人気のツーリングスポットだ。今回は以前から入りたかった万座温泉をメインに、南志賀高原周辺を巡ってみた。

いつもより遅めの午前8時に自宅を出発。環八から関越自動車道に入り、藤岡ジャンクションから上信越自動車道に進路を変え、軽井沢、小諸を過ぎて、東部湯の丸インターで下車。県道94号線を通って国道144号線に出る前に、本日の第1湯である鹿沢温泉「紅葉館」に入ることにした。

鹿沢温泉「紅葉館」は群馬県吾妻郡の県道94号線沿いにある温泉旅館だ。県道沿いとはいえ、明治時代に建てられたという風情のある建物には大きな看板等がないので、見逃してしまいそうになった。

女将さんのいる受付で500円を払って浴室へ。木造の廊下を進むと、建物の奥に「雲井の湯」と書かれた浴室があった。客はわたしひとり。湯船はこじんまりしているが、源泉かけ流しのやや濁りのあるお湯はなめらかで気持ちいい。窓から日差しが柔らかく差し込み、つい長湯したくなってしまうお湯だ。

趣きのある雰囲気に後ろ髪を引かれながらも次を目指すことにした。県道94号線から国道144号に入り、万座ハイウェイを通って万座方面に向かう前に、国道406号線を少し走ったところにある半出来(はんでき)温泉「登喜和荘」に入ることにした。

半出来温泉「登喜和荘」は群馬県吾妻郡にある温泉民宿だ。国道沿いにあるものの、民家風の建物なので、これまた見逃してしまいそうになった。

受付で入湯料400円を払って浴室へ行ってみると、内風呂のほかに混浴露天風呂があることが判明。すぐさま露天風呂へ。花が咲き乱れるキレイな庭を通り、門をくぐると露天風呂があった。露天風呂は四角型と丸型があり、丸型はかつて農家が味噌を仕込むために作った味噌樽を用いているとのこと。

丸型は藻がすごかったので、四角型のほうに入る。ここでも湯船を独り占め。お湯は無色透明の源泉かけ流しで、ちょうどいい湯加減。快晴のもと、目の前に広がる新緑の季節を迎えた木々が生い茂る景色を見て、まったりとした気分になる。

何分、何時間でも入りたい温泉だったが、先は長いのでやむなく出発。途中コンビニで昼飯を食べてから、いざ万座温泉へ。高原らしい景色が連続する万座ハイウェイを進んだ先に、目的の万座温泉「プリンスホテル」があった。

万座温泉「プリンスホテル」は、草津温泉と並ぶこの地域を代表する温泉だ。温泉に興味がない方でも、おそらくここの混浴露天風呂「こまくさの湯」の景色は見たことがあるのではないだろうか。入湯料は1200円とやや割高だが、十分その価値はあるはずだ。

ホテルのフロントに行ってみると、日帰り入浴の受付は14時までとなっており、何とかセーフだった。高ぶる気持ちを抑えて露天風呂に直行。露天風呂への出入口を開けると、雑誌などで見たことがある景色が広がっていた。

白濁したお湯と、標高1800mの地点に広がる雄大な風景とのコントラストは最高の一言。硫黄臭が漂う広々とした湯船に浸かると、何とも言えない開放感が味わえる。と同時に、ようやく万座温泉に入れたことへの達成感がじわじわと沸いてきた。

鹿沢温泉、半出来温泉、そして万座温泉といい、今日はハイレベルかつハイグレードな温泉が連発しており、温泉好きとしては、まさに「イッちゃい」そうな気分だ。

充足感に満たされて万座温泉を後にして、志賀草津道路を通って県道66号線に入り、小布施方面に向かう途中の高山温泉郷に点在する温泉に入ることにした。まずは七味温泉「恵の湯」だ。

七味温泉「恵の湯」は七味温泉ホテル「渓山亭」に新たに併設された日帰り入浴できる露天風呂だ。入湯料500円を払って露天風呂に向かうと、白濁したお湯がたっぷり注がれた湯船が現れた。

単純硫黄泉のお湯は露天風呂ながらちょっと熱め。湯底に成分が溜まっているためか、足の裏が灰色になっていた(おそらくケツもそうなっていたはず…)。成分の濃さを体感できる温泉だ。内風呂も併設されているが、露天風呂に入ってほしい。

七味温泉を後にして向かったのが松川渓谷温泉「滝の湯」だ。駐車場から階段を降りたところに受付と浴室があり、入湯料は500円。

松川渓谷温泉の特徴は、広々とした混浴露天風呂だ。男性用更衣室と内風呂を通って露天風呂に向かう。周囲を大きな岩に囲まれた露天風呂は森に面しており、開放感のある作りとなっている。

木漏れ日を浴びながら今日5湯目の温泉に浸かる。お湯は無色透明で、湯加減はややぬるめだが、長時間ゆったりするにはちょうどいい。

温泉から上がったら16時30分を過ぎていた。そろそろ帰りのことを考えなくてはならない時間になってきた。しかし県道66号線沿いには他にも温泉がある。とにかく日没まで入ることにした。

次に向かったのは松川渓谷温泉から程なくしてある山田温泉「大湯」だ。山田温泉は県道66号線沿いの高山温泉郷の中心的温泉だ。他とは違ってちょっとした温泉街があり、「大湯」は温泉街の中心にある共同浴場だ。

木造の立派な外観は、一見すると共同浴場には見えない。以前入った石川県の片山津温泉や加賀温泉を思わせる作りだ。共同浴場が好きな私にとっては、なかなか興味深い。   

入湯料300円を払って浴室に。湯船は大小1つずつ。大きいほうの湯船のお湯を触るとかなり熱い。何度か湯かけして身体を慣らさないと入れないタイプだ。何度も湯かけをしてようやく湯に浸かる。無色透明のお湯は熱いがさっぱりしている。

夕方なので地元の人が続々やって来た。慣れている人はあまり湯かけせずに入っているが、さすがに長時間は入れない。外に出てクールダウンするが、なかなかダウンしない。これは走ってクールダウンさせるしかない。

最後に入ろうと決めたおぶせ温泉「穴観音の湯」に向かう途中で、やっぱり雨が降ってきた。20分ほどバス停で雨宿りしてからおぶせ温泉に向かった。

おぶせ温泉「穴観音の湯」は、長野県上高井郡小布施町にある日帰り入浴施設だ。建物そのものは、町を見下ろす小高い丘の上にある。駐車場からエレベーターで受付に向かって入湯料600円を払って浴室に向かった。

浴室に入ると、開放感のある内風呂と露天風呂からは町が見えて。日が暮れて、おまけに曇っていたのであまり眺望はよろしくなかったが、晴れた空気の澄んだ日なら、なかなかの見晴らしのはずだ。無色透明のお湯は硫黄を含んでいるが、匂いはほとんどしない。優しいお湯は、今日のシメの温泉としてはちょうどよかった。

外に出ると雨がすっかり上がり、夕陽が差していた。これで今日は7湯入り、日帰りツーリングとしてはまずまずの戦績だった。

梅雨が過ぎれば夏本番。ロングツーリングに出かけたいところだが、今年の夏は9月半ばまで仕事でいっぱい。シルバーウィークまでお預けだ。それまで妄想ツーリングをして過ごそう。


ブースカ的評価
(5段階評価)

●鹿沢温泉「紅葉館」
★★★★★
風情のある木造の湯船は時間を経つのを忘れる
●半出来温泉「登喜和荘」
★★★★
名前とは違った上出来の混浴露天風呂
●万座温泉「プリンスホテル」
★★★★★
細かな講釈は不要。文句なしの五つ星
七味温泉「恵の湯」
★★★★
足の裏やケツが灰色になるほど成分たっぷりのお湯
●松川渓谷温泉「滝の湯」
★★★★
広々とした混浴露天風呂でまったりしたい
●山田温泉「大湯」
★★★★
熱めのお湯はパーフェクトな源泉かけ流し
●おぶせ温泉「穴観音の湯」
★★★
内風呂や露天風呂からの眺めはグッド

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毛野ブースカ
ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は487湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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(2011.9.27更新)



県道94号線沿いにある鹿沢温泉「紅葉館」。一見すると逃して通り過ぎてしまいそうだが、明治時代に立てられた古風な建物だ

県道94号線沿いにある鹿沢温泉「紅葉館」。一見すると逃して通り過ぎてしまいそうだが、明治時代に立てられた古風な建物だ


鹿沢温泉「紅葉館」の「雲井の湯」。建物同様、木造の湯船にお湯が続々と注ぎ込まれる。時間が経つのを忘れてしまいそうだ

鹿沢温泉「紅葉館」の「雲井の湯」。建物同様、木造の湯船にお湯が続々と注ぎ込まれる。時間が経つのを忘れてしまいそうだ。




国道406号線沿いにある、いかにも民宿風の佇まいの半出来温泉「登喜和荘」。入るのをためらってしまいそうな雰囲気だ

国道406号線沿いにある、いかにも民宿風の佇まいの半出来温泉「登喜和荘」。入るのをためらってしまいそうな雰囲気だ。




名前とは裏腹に、露天風呂はなかなかの出来栄え。右側の丸型の湯船は味噌樽を再利用して作ったものだとのこと

名前とは裏腹に、露天風呂はなかなかの出来栄え。右側の丸型の湯船は味噌樽を再利用して作ったものだとのこと。




万座温泉にそびえる万座温泉「プリンスホテル」。温泉好きなら一度は入っておきたい混浴露天風呂があるホテルだ

万座温泉にそびえる万座温泉「プリンスホテル」。温泉好きなら一度は入っておきたい混浴露天風呂があるホテルだ。




これが有名な万座温泉「プリンスホテル」の「こまくさの湯」だ。この絶景と白濁したお湯のコンビネーションは最高の一言

これが有名な万座温泉「プリンスホテル」の「こまくさの湯」だ。この絶景と白濁したお湯のコンビネーションは最高の一言。




七味温泉ホテル「渓山亭」の露天風呂として新設されたばかりの「恵の湯」。外観はシンプルだが、注がれているお湯は逸品だ

七味温泉ホテル「渓山亭」の露天風呂として新設されたばかりの「恵の湯」。外観はシンプルだが、注がれているお湯は逸品だ。




白濁というよりエメラルドグリーンに近いお湯。湯底に成分が沈殿しており、知らないで入るとびっくりするかもしれない

白濁というよりエメラルドグリーンに近いお湯。湯底に成分が沈殿しており、知らないで入るとびっくりするかもしれない。




松川渓谷温泉「滝の湯」の混浴露天風呂。木漏れ日が差す無色透明の優しいお湯は、まったりするにはちょうどいい湯加減

松川渓谷温泉「滝の湯」の混浴露天風呂。木漏れ日が差す無色透明の優しいお湯は、まったりするにはちょうどいい湯加減。




共同浴場とは思えないどっしりとした作りの山田温泉「大湯」。一見さんを寄せ付けない熱めのお湯は、源泉かけ流しの証

共同浴場とは思えないどっしりとした作りの山田温泉「大湯」。一見さんを寄せ付けない熱めのお湯は、源泉かけ流しの証。




小布施の町を見下ろす場所に立つおぶせ温泉「穴観音の湯」。内風呂、露天風呂ともに眺めのいい場所に設置されて

小布施の町を見下ろす場所に立つおぶせ温泉「穴観音の湯」。内風呂、露天風呂ともに眺めのいい場所に設置されて。



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