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ブースカ

第14湯
四国一周湯巡りツーリング(その1)

怒涛のお盆進行も終わり、9月のシルバーウィークを挟んで遅めの夏休みを取ることにした。今年は節電対策ということもあり、編集作業が前倒しになったため、連休を利用すれば1週間ほど休めそうだった。1週間も休みが取れるなんて滅多にないので、温泉入湯数500湯を達成すべく、5月以来の大遠征を展開することに決めた。

北海道か四国一周か迷った末、四国を一周することに決めた。四国一周はかねてから行きたかった以外に、今年3月に病死した母親の生地である徳島県に行ってみたかったのだ。本音を言えば生前一緒に行きたかったのだが、その願いは叶わず、母親は天国に旅立ってしまった。今回は母親の写真を持ち、まさに「同行二人」の思いで向かうことにした。

出発日を9月15日に決めたものの、各地に被害をもたらした台風15号が近づいていた。しかし、日程は変えられない。往きはフェリー、帰りは状況を見ながら帰京日とフェリーにするか、陸路にするか現地で決めることにした。宿泊はキャンプだが、台風の状況からすると無理そうな予感がした。

東京から四国に向かうフェリーは「オーシャン東九フェリー」しかない。一日1便しかない19時30分東京発、13時20分徳島着の便を、出発一週間前に予約した。

出発当日、残暑厳しい東京は晴れ。天気予報を見ると、四国地方の天気は微妙。午前中に身支度をして、夕方前に有明埠頭フェリーターミナルに向かった。ターミナルに着いてみると、意外にライダーが多くてびっくり。

フェリーに乗り込み、二段ベッド式の寝台型部屋に荷物を置いて、出航後、まずは夕食。船内はそれほど揺れていなかった。夕食後は案の定やることないので、本を読み、風呂に入って寝た。

揺れは少ないかなと思っていたが、朝になるにつれて、揺れが激しくなってきた。寝る方向を工夫しないと吐きそうなぐらい、グワ〜ン、グワ〜ンと揺れた。トイレでもアソコばかり見ていると吐きそうになるので、正面をぼんやり見て用を足した。

紀伊水道に入るにつれて揺れが収まり、ようやく落ち着いたかと思ったら、雲行きが怪しくなってきた。午後になり、雨は本降りになってきた。定刻どおり船は徳島港に到着。上陸していきなりレインウェアを着なくてはいけない羽目に。何ともブースカらしい展開に笑ってしまった。

今回の四国一周ツーリングは時計周り、つまり徳島県→高知県→愛媛県→香川県と進み、最後は徳島県に戻ってくるルートにした。このルート設定には深い意味とワケがあり、ツーリング後半になってその読みは見事的中することになる。

とにかく徳島港を出発して、国道55号線をひたすら高知方面に進む。途中、徳島ラーメンのルーツと言われる「岡本中華」を見つけて「中華そば肉入り」を食した(実は、あとでこの店が有名なのが判明した)。特徴的な味とボリュームに満足。

腹を満たして再び走り始めた。日和佐を過ぎて、徐々に高知に近づくにつれて雨脚は強まってきた。そろそろ泊まる場所をどうするか決めなくてはならない。散々悩んだ挙句、国道55号線沿いに見つけた民宿「はるる亭」にした。キャンプできないのは残念だが、山側に向かう道が通行止めになるなど、仕方ない状況だった。

道の駅から電話をして、夕飯は用意できないが宿泊可能ということなので、コンビニで夕飯を買ってから宿に向かった。ずぶ濡れのレインウェアを玄関で脱ぎ、畳敷きの角部屋に通された。和室に泊まるのは久しぶりだった。

「はるる亭」は国道55号線沿いにある徳島県海部郡海陽町にある民宿だ。この民宿を選んだ最大の理由は温泉だった。ここの温泉は「宍喰温泉」と呼ばれており、この近辺でははるる亭とホテルリビエラの2箇所だけという。しかも日帰り不可なので貴重だ。

夕飯を食べる前に、まずはお風呂へ。母屋からちょっと離れたところにある浴室は、それほど大きくないが、キレイで落ち着いた作り。お湯に浸かると、温度は適温で、滑らかでぬめりのある肌触りが印象的だった。ついつい長湯したくなるお湯だ。今日はこれで帰るわけではないで、夕食後にゆっくり入ることにした。

風呂から上がり、夕食を食べながらテレビのニュースを観ていると、現在地付近に大雨洪水警報が発令されていた。う〜ん、明日からどうなるのか心配だった。

翌朝、窓の外は曇り。朝風呂に入った後、朝食を食べながら宿の女将さんと現地の状況を伺った。この地域も地震や台風などの被害が大きいらしく、廃業する方も出ているとのこと。今日は室戸岬を通って高知県に向かうと言ったら、雨の状況次第で通行止めになるので、早く出発したほうがいいとアドバイスを受けた。

こういう情報は現地に行かないと分からない。女将さんに礼を言い、素早く準備を整えて、宿泊料4500円を払って宿を出発した。この時点では幸い雨は降っていなかった。

国道55号線を1時間ほど進み、午前8時50分に室戸岬に隣接する第24番札所「最御崎寺(ほつみさきじ)」に到着した。最御崎寺でお守りを買い、歩いて室戸岬へ。雲が多くかかっているが、雨は降っていなかった。

室戸岬を出発し、太平洋を望む国道55号線を進む。途中、晴れ間が見えるなど快適で、台風の影響などまったく感じなかった。左側に土佐湾を見ながら奈半利(なはり)を過ぎ、ツーリングマップルでルートを見ると「二十三士温泉」というちょっと変わった名前の温泉が目に入った。国道55号線から近いので休憩がてら入ってみることにした。

そのものズバリ「二十三士(にじゅうさんし)」と呼ぶ二十三士温泉は、高知県安芸郡田野町にある温泉だ。名前は幕末の尊皇攘夷派23名の志士にちなんだものという。入湯料は700円。浴室は開放感があり、日当たりは良好。宍喰温泉ほどではないが、ややぬめりのある優しいお湯は入りやすい。

二十三士温泉を後にしたら、天候が急変。束の間の晴れ間だった。高知市に近づくにつれて雨脚が徐々に強まり、坂本龍馬像のある桂浜に到着した頃は土砂降りだった。

土砂降りの中、レインウェアを着たまま坂本龍馬像を見学し、そそくさと桂浜をあとにした。国道33号線が途中通行止めと表示が掲示されていたので、海岸線沿いを進み、国道56号線に出て四万十市(旧中村市)に向かった。

雨は降ったり止んだりという微妙な天気。桂浜から2時間ほど走ったので、休憩も兼ねて国道56号線沿いにある「土佐佐賀温泉こぶしのさと」に入ることにした。

「土佐佐賀温泉こぶしのさと」は高知県幡多郡黒潮町拳ノ川にある温泉宿だ。日帰りの入湯料は600円。館内は非常に小奇麗で、浴室も大きくはないが、和風の落ち着いた作り。お湯は無色透明で、癖のなく入りやすい。四国に上陸してから初めて露天風呂に入り、雨を憎らしく思った。

2日間で3湯は、いつもの私のペースでは少ないが、約一週間で四国を一周するために、1日の入湯数は2〜3湯くらいともともと決めていたので、天候を考えると、出だしとしてはまあまあいいほうだ。

2日目の宿泊地は、8年前に車で訪れたことのある「オートキャンプ場とまろっと」にすることにした。記憶を辿りながら県道42号線を進み、ようやく海沿いの高台にあるキャンプ場を発見した。

キャンプ場に入ると、だんだん記憶が蘇ってきた。あの時は寒い年末に訪れたが、意外とお客が多かったのを覚えている。今回もこんな台風の中でもお客は多かった。料金2000円はちょっとな高いと思いつつ、受付で書類の記入を済ませて(普通、オヤジしかいない受付に何人も若い女の子がいて、ちょっとあたふたしてしまった…)、指示された場所に向かった。

テントを張り、近所に買い出しに行って戻ってきてから、コインランドリーでウェア類を乾かすことにした。こんなにずぶ濡れになったのは初めてだ。まだ雨は降っていないが、海から吹き寄せる風は強かった。

夕食直後に雨が降ってきてテント内に退避。しばらくして寝入ったが、途中降りしきる雨音で起こされた。やっぱり台風が来ているんだなと実感した。

ジッパーの隙間からポツポツと雨が垂れてきた。50張以上して、あちこちシールテープが剥がれている我がテント。そろそろ引退かなと思った。

翌朝、雨が降ったり止んだりとかなり不安定な天候。朝食を摂り、晴れているうちにテントを畳んで出発。近くにある「四万十いやしの里」で朝風呂にすることにした。

受付で入湯料630円を払おうとすると「午前9時までですが、よろしいですか?」と店員が聞いてきた。店内のボードを見ると、朝は午前6時から午前9時までと記載してある。9時までは30分もあるので「大丈夫です」と言って料金を払った。

「四万十いやしの里温泉」は高知県四万十市下田にある宿泊施設を併設した温泉だ。今回泊まったキャンプ場から歩いてすぐのところにある。立派な外観や館内に相応しく、浴室も広々としており、開放感ある作りとなっている。お湯はアルカリ単純泉で、朝風呂にはぴったり。本当はゆっくりしたいところだったが、退出時間が迫っているので、そそくさと出てきた。

3日目は足摺岬に行き、宿毛を通過して佐田岬に向かう計画を立てた。雨は降っていないが、いつ急変するか分からない。さて、どうなることやら。(つづく)


ブースカ的評価
(5段階評価)

●宍喰温泉「はるる亭」
★★★★
良好な泉質を持つ日帰り入浴不可の貴重な温泉
●二十三士温泉
★★★
名前のとおり土佐の志士たちの息吹を感じる温泉
●土佐佐賀温泉「こぶしのさと」
★★★
日帰りだけではもったいない落ち着いた作り
●四万十いやしの湯「四万十いやしの里」
★★★
太平洋を望む高台にある瀟洒な温泉

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毛野ブースカ
ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は491湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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(2011.10.26更新)



東京⇔徳島⇔北九州を結ぶ「オーシャン東九フェリー」のカジュアルフェリー(2等寝台)の船内。すでに往きから波乱が始まっていた

東京⇔徳島⇔北九州を結ぶ「オーシャン東九フェリー」のカジュアルフェリー(2等寝台)の船内。すでに往きから波乱が始まっていた。


国道55号線沿いで見つけたラーメン店「岡本中華」。いわゆる徳島ラーメンのルーツと言われているお店だ。午後2時くらいでも店内は満席だった

国道55号線沿いで見つけたラーメン店「岡本中華」。いわゆる徳島ラーメンのルーツと言われているお店だ。午後2時くらいでも店内は満席だった。




これが岡本中華の「中華そば肉入り(大盛)」(800円)。豚骨醤油系ながらスープは白色という癖のない個性的なラーメンだった

これが岡本中華の「中華そば肉入り(大盛)」(800円)。豚骨醤油系ながらスープは白色という癖のない個性的なラーメンだった。




1日目の宿となった国道55号線沿いに建つ「はるる亭」。写真では見えないが左奥のほうに温泉がある。日帰り入浴はしていないとのこと

1日目の宿となった国道55号線沿いに建つ「はるる亭」。写真では見えないが左奥のほうに温泉がある。日帰り入浴はしていないとのこと。




「はるる亭」を名物である宍喰温泉。無色透明のぬるすべ感のあるお湯は、県外でも評判が高いだけあって、なかなかいいお湯だった

「はるる亭」の名物である宍喰温泉。無色透明のぬるすべ感のあるお湯は、県外でも評判が高いだけあって、なかなかいいお湯だった。




2日目は、まず室戸岬と第24番札所「最御崎寺」を訪れた。写真は室戸岬の灯台。この時点では幸いにも雨は降っていなかった

2日目は、まず室戸岬と第24番札所「最御崎寺」を訪れた。写真は室戸岬の灯台。この時点では幸いにも雨は降っていなかった。




室戸岬を過ぎて、奈半利に向かう途中の駐車場でのカット。台風とは思えない穏やかな晴れ間が見えていた。ずっとこんな天気だったらな…

室戸岬を過ぎて、奈半利に向かう途中の駐車場でのカット。台風とは思えない穏やかな晴れ間が見えていた。ずっとこんな天気だったらな…。




奈半利の近くにある「二十三士温泉」。ちょっと変わった名前だが、お湯は宍喰温泉のようにぬるすべ感のある優しいお湯だった

奈半利の近くにある「二十三士温泉」。ちょっと変わった名前だが、お湯は宍喰温泉のようにぬるすべ感のある優しいお湯だった。




桂浜に到着した時は土砂降り。そんな中、かの坂本龍馬像とご対面。幕末の志士になった気分で、四国一周を遂げようと誓った

桂浜に到着した時は土砂降り。そんな中、かの坂本龍馬像とご対面。幕末の志士になった気分で、四国一周を遂げようと誓った。




四万十市に向かう途中の国道56号線沿いにある「土佐佐賀温泉こぶしのさと」。外観はもちろん浴室も立派な温泉だった

四万十市に向かう途中の国道56号線沿いにある「土佐佐賀温泉こぶしのさと」。外観はもちろん浴室も立派な温泉だった。




2日目は四万十市にある「オートキャンプ場とまろっと」でキャンプ。場内は広く、整備の行き届いた綺麗なキャンプ場だった

2日目は四万十市にある「オートキャンプ場とまろっと」でキャンプ。場内は広く、整備の行き届いた綺麗なキャンプ場だった。




「オートキャンプ場とまろっと」の近くにある「四万十いやしの里」。朝は午前6時から午前9時までなので、朝風呂に入りたい方は要注意

「オートキャンプ場とまろっと」の近くにある「四万十いやしの里」。朝は午前6時から午前9時までなので、朝風呂に入りたい方は要注意。



[第13湯 湯南志賀高原 その3]
[第14湯 四国一周湯巡りの旅 その1]
[第15湯 四国一周湯巡りの旅 その2]
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