今月の一言
“Cheese under the nail”
(チーズ アンダー ザ ネイル)
地盤がしっかりしてなければ、いくらその上のものが立派でもいずれ根本から腐るでしょう。日本の建造物の高さがアメリカなどに勝てないのは、地盤がゆるいのと地震があるからなんですって。しっかりした木材を、ゴッツい釘でがっしりと打ち込んでも、打ち込んでる相手がチーズじゃあしっかり固定されないわな。
作者は今、香川県におります。鳴門の渦でも見て、讃岐うどんでも食べて、オオボケコボケでも観てこようという算段です。だって仕事がないんだもの!
仕事がないということはお金もないんだけど、反対に時間はたくさんあるわけで。これはこれでいいんじゃないかと思ってるわけですよ。
今までの世の中はお金が第一でさ、家族や友達と過ごす時間も限られていたけれど、仕事がないおかげで時間に余裕が生まれてそんな人たちとも時間を過ごしやすくなったんではないでしょうかね。
自分だけかもしれませんが、僕の周りではこういった現象が起きていて、土日祝になると公園やプールといったところに、今まで以上に家族連れをたくさん見るようになったと思ってます。
そう、お金がかからない遊びね。これ大事。
さっき淡路島では所沢ナンバーのスーパーシェルパを見ました。いいよねぇ、250ccのオフ車でさ、トコトコと淡路まで来てんだぜ? 時間はかかるけどお金はかからない、小排気量ツーリングはそんな遊びの最右翼ですよ。
そんな作者はトランポの四輪で来てます。まったく説得力ありません。が、基本はシタミチ主体で、土日や夜間に割引された高速を使うようにしてます。こうやって距離を稼いで、バイクじゃ難しい車中泊で宿泊費を浮かせてるわけです。
よってここまでかなりリーズナブルに来てます。急ぐ旅じゃないからアクセルも踏まないし、おんぼろワンボックスはリッター10キロを稼ぎ出しています。なかなかやるじゃないか。
ところがこのETC割引、なめてかかって「まぁいくらか割り引かれるはず」なんて思ってると、案外メンタマ飛び出る価格が表示されてりするんだ。表示された価格とは別に割り引かれてるのかもしれないけれど、昨日本州から淡路島に渡った時の料金にはアゴがハズレそうになった。まぁ、橋だから高いのかもしれないけれど、もう、よくわからないんだよね、ETC割引。
さぁ、色んな意見があるかもしれませんが、高速道路については無料化大賛成の筆者です。普段の生活だったら軽自動車で十分なのに、高速道路に乗るために2000ccもあるワンボックスに乗ってるわけだ。
で、それに見合った税金や保険を払ってるんですね。だったらどんな道路でも自由に乗らせてくれよ! と思うわけ。
日本のシステムはよくできてると思うんですよ。だってお金がないけど足が必要な人には、非常にランニングコストの少ない原チャリや車検のない250ccがあるでしょ? どうしても四輪が必要な人には軽自動車があるでしょ? 4ナンバーの軽自動車なんて税金4000円ですよ!? バイクと一緒なんだから!! そうだな、今思ったけど250ccバイクと軽自動車だけ高速道路完全無料ってどうだろう。
あと、トラックとかの緑ナンバーね。仕事で乗ってる人は当たり前に完全無料でしょう。あぁ、いい案だ! これでお願いしますよ!
その思いつき発言は置いといたとしても、この前、島根県の人と話していたら「高速道路無料は大歓迎です。だってこっちみたいな田舎に企業が進出できるってことですから。土地は安いし、仕事が欲しい若手もたくさんいる。高速道路が無料になれば地域の活性化は本格的に期待できます」と言っていました。そうだよな、納得。
このグチの行き着く先は、「高速道路無料化」ということそのものが「チーズ」だってことなんです。
基礎が固まってないからいくら議論しても発展しないでしょう。世間はイタズラに「混む」とかいって非難するけど、混むなんて最初だけだっつの! 無料が当たり前になれば混まねぇつの! 何で混むかって、いつまた有料になるかわからない不安があるから、今のうちに無料を味わっておこうという貧乏根性でしょう?
「この先100年間は完全無料決定! 政党が変わろうが何がおきようが決定事項で絶対にひっくり返りません!」と宣言されれば、誰が好んで渋滞にハマリにいくかってんですよ。
基礎がチーズじゃなくなれば、そこからはじめて議論が膨らむってもんです。
えぇっと、なんだっけ? あ、チーズね。
この表現「Cheese under the nail」とは、最初に説明した地盤の話と同じで、固めようとしているものの相手が固まっていなければ、新たに固めようとしているものは絶対に固めることはできないという意味です。
語源は諸説ありますが……いや、諸説ないなぁ。決まっちゃってますね。アメリカの西部開拓時代の大工さんの間で広まった表現とされています。
※ ※ ※
当時の大工は、大工といっても比較的大工仕事が得意な仲間が、他の家も建てるのを手伝っていたという程度のものだった。というのも、開拓民たるもの何でも自分の手でこなさなければならなかったからであり、大抵の人は知識があろうがなかろうが自分で自分の家を建てたものなのだ。
西部もカルフォルニアのほうまで行けば暖かく、乾燥した土地の為木材もよく乾き、建築に向いた材料が豊富だったといえる。西海岸の北部、モンタナ辺りでは木材にするまでもなく、木をそのまま使ったログハウスが一般的だった。
しかし、ミズーリやアーカンソーなどの中央部にはなだらかな丘陵地帯が続き、木材となるような木々も豊富ではなかった。
そこで中央部での開拓民は手に入れることのできる材料で何とかするしかなかったのである。
こういった材料の不足に加え、この地域はカルフォルニアのように乾燥しているわけでもなく、スワンプと呼ばれる沼のようなものも点在し、季節によっては湿った気候となっていた。これにより材料の木材も、そして建築された後の家も、徐々に腐っていくことが多々あった。
これによりこの地域では木材の見る目が高い大工が増え、家を建てる場所や角度、床下の通気など、せっかくの家を腐らせないための建築技術が進歩していったのだ。
この中で生まれたのがこの言葉、「Cheese under the nail」。
腐った木材がカッテージチーズのようにボロボロと崩れてしまうことからこうよばれるようになり、基礎が腐ってしまったらいくら釘を刺して補強しようがダメだ、という意味で使われていた。
※ ※ ※
使い方としては
「How’s that house you’re mending Jim?」
(
今修理してるあの家はどんな調子なんだい、ジム?)
「Oh, not good Fred. I’ve got cheese under the nail」
(あぁ、よくないよ、フレッド。チーズ アンダー ザ ネイルみたいだ)
もしくは、バイクの整備などをしている時にも使うことがあります。
「What was the problem with the carbie?」
(キャブレターは何が調子悪かったの?)
「I had cheese under the nail」
(チーズ アンダー ザ ネイルだったね)
この場合の「Cheese under the nail」は原因を特定していませんが、何かしら調子が悪かったわけです。バイクで使う場合も、この言葉の語源のように何かがちょっと腐っていたり、詰まっていたりといった時に使います。
何かが折れていたり切れていた場合は使いませんね。キャブだったらキャブガスが腐って緑になっているような状態でしょうか。また、相手にその原因を説明するのがめんどくさい場合、もしくは原因を教えたくない場合にも使います。
「あぁ、ちょっとしたところが具合悪かったのさ」というようにね。
ちょっと長いから使いにくいかもしれないけど、単純に問題の原因を「チーズ」と定義づけ、困ったことになったら「チーズだぜ……」と言ってみてはいかがでしょう。てかこのコラムの登場する表現って浸透してんのか!? マサカ!
- クリスチャン・マロン