Hi-Compression Column

バイクの英語

今月の一言

“Jack of all trades”


(ジャック オブ オール トレイヅ)

(2011年6月15日更新)

「何でもできます」の裏返しは「何も極めていません」だったりする。するのか?

専門家、と呼ばれる方々は、果たして本当に専門なのか……。

さーどうだろう、けっこうみんなJack止まりなんじゃないの?


僕は基本的にテレビを見ない人だから地デジ移行と共にテレビを川に捨ててやろうと思っていたのだけど、最近のテレビはハードディスクとやらに簡単に色々録画ができるってから、奮発して買っちゃいましたよ新型テレビ。

やっぱりエーちゃんでしょう、と「ソニーのブルァビア!」……ってのはウソでたまたま安かったからソニーのブラビアにしました。

これで夜中のモトGPもF1も観れるようになり(てか、アナログ時代にもビデオがあれば見れたんだけど単純にビデオをもってなかった)大変嬉しいわけです。

今夜はイギリスGP!……だけど同時にF1もやるからかぶっててF1は観れないでやんの。やっぱりダブルチューナーにするべきだったか? いやいや、モトGPとF1しか観ないのに、テレビごときにそんなに投資はできませんよ。  

でも、あればたまにはつけるテレビ。夕方のお風呂上りに何気なくつけてみたりすることもあります。どの局も相変わらず震災のニュースは山盛りですね。

どの局も「○○の専門家先生」が登場して、やれ東電のやり方がオカシイ、やれ政府は何やってんだ、やれ悲惨ですねとまくし立てる。ここで引っかかるのが「専門家」という言葉。

その道の専門家なのに、ケチなニュース番組で悪口を言ってるわけですよ? それって本当に専門家なのだろうかと疑問に思うわけです。

だって本当の専門家で、その分野を超専門にやってて、この上ない知識や経験や判断力をもってたら、その人はニュース番組になんて出ずに現場の指揮を取っていることでしょう。様々な対応に追われているでしょう。少しでも状況を改善させるために自分の持てる知識を投入しているはずでしょう。  

批判ばっかりしやがって。批判は簡単なんだよこのナスビ! アンタの「専門」知識とやらでブチブチ文句言ってないで何かを変えてみやがれってんだ。


僕はカスタムショップで「ウチでは何でもやります」と言う所をあまり信用していない。

カスタムって様々な要素が絡み合ってるから、全部をやるわけにはいかないもの、実際。

ところがちゃんとしているところほど「フレームはね、平塚の○○ってトコに出してるんだ」「マフラーはやっぱり職人には敵わないからね、厚木の○○にお願いしてる」なんて言って、ショップとつながりのある各分野の専門家の存在を隠さない。

カスタムの専門家って、カスタムマシンを造る専門ではなく、カスタムをプロデュースする専門家だからね。そこを履き違えちゃいけない。あらゆる専門家を知り、それらの長短を知り、それをうまく組み合わせる。これぞカスタムショップでしょう。


今回の英語はJack of all trades。

JackとはトランプでいうJ印で、王子に当たる絵札。tradesとはtrade(商売)の複数形で、あわせると「全ての商売においてジャックぐらい」という意味。

これに続く言葉として「Ace of none」というのがあって「ジャックぐらいだけど、エースといえるほど極めたものはない」という意味。いわゆる器用貧乏ってことです。何でもそこそこ上手にこなすけど、プロってほどじゃない……。



右上へ


多くの事柄において「ジャックぐらいはできます」というのはもちろん魅力的ですから、この言葉は悪い意味で使うわけじゃないんですけどね。

周りにいるでしょう、何かと器用にこなして、なんでも自分でやっちゃう人。別に何の資格とかもってるわけでもなく、修行をしたわけでもなく、ただなんでもできちゃう人。で、不思議とそんな人こそ何かの「専門的技術や知識」はなかったりするんだ。まさにJack of all trades Ace of noneですね。


この語源には諸説ありますが、基本的にはヨーロッパ圏において「王子」という立場の人は日本とは比べ物にならないほど自由に色々なことをやってきた背景があります。故ダイアナ妃もずいぶんと色々な活動をしていたでしょう。

王位につくとさすがに自由気ままに活動するのは難しくなりますが、現在のイギリスの王族も若いうちは寮制の学校に入って一般の人とバカやったり、軍隊に入ってみたりと様々な経験をします。日本では考えにくいですね。

   ※    ※    ※

ある年、イギリスの湖水地方が台風被害だか何だったかの自然災害にあって、観光客が激減した年がありました。

ところがこれは風評被害がほとんどで、実際にはたいした被害はなく、観光業界にとっては大変な痛手となっていました。

この現地に当時の王子が視察に行き、ベッド&ブレクファースト(英国のいわゆる「民宿」)を視察した際に「何かお手伝いできることは?」と尋ねると「王子がうちに泊まりに来てくださいよ」と言われたそう。

例えば皇太子にそう言う民宿は日本にはまずないだろうけど、その後王子が本当にその民宿に泊まりに行ったというのにも驚く。

その視察後、お忍びでそのベッド&ブレクファーストに数日泊まり、チェックアウト後にそれがメディアに発覚。視察だけでなく実際に王子が泊まりに行ってるんだから安心だ、ということで観光客が一気に戻ったということです。

   ※    ※    ※

日本も今大変なんだからさ、そういった欧州的な、地位や立場を超えたフレンドリーさが求められていると思うんですけどね。なかなかどうして……。


一方で、まだ王位についていない「王子(Jack)」という立場だからこそこういった小回りもきくわけです。

小回りのきくうちに様々な活動をして、まんべんなく自分の経験値を上げていく。王になる者にとって大切なことでしょう。そして王になった時にその国のAceになればいいのですな。


われわれ王位とは関係ない一般人にとっては、Jack of all trades はタダの器用貧乏ということになるけれど、幅広く蓄えこんだ経験はそのうちどれかがAceへと昇華して、その道の専門家になれるかもしれない。特に若いうちは色々と経験したいものですね。

あれ? この言葉はもしかして「カワイイ子には旅をさせろ」って意味なのかな??

ちなみに一番最初の話に戻ると、カスタムショップなどに求められるのは専門的技術よりも広い知識やコネクションだからJackのほうが合ってると思います。

原発対応の方々は超専門知識をもってるAceがやるべきでしょう。じゃあテレビで無責任に批判してる「専門家とやら」はナンダ? クレーマーか?


アントン・ファンク
バイクの英語
「アッキーがキタ」のアッキーさんのライバルとして、ファンクロックというカテゴリーを築いたミュージシャン。バイクのことはよくわからないが、音楽のこともよくわからない。よくわからないけど楽しいから、よくわからなくても理解できる「ファンク」と「AX-1」を愛する。群馬県出身。


topへ

[第11回“That's not Cricket”]
[第12回 “Jack of all trades”]
[第13回“Clever old stick”]
[バックナンバー目次へ]


目次
↑クリックするとMBHCC目次に戻ります
バックナンバー目次
↑クリックするとバックナンバー目次に戻ります