Hi-Compression Column

バイクの英語

今月の一言

“Brass monkey weather”


(ブラス・モンキー・ウェザー)

(2011年12月20日更新)

 もうね、交通事情のひどさに日本を離れたくなる! 

 色々ありますよそりゃ。年金はゼッテーもらえないのになぜ払う! とか、原発事故が収束? バカじゃん! とか(ちなみに原発はお台場に作ればいいのにね。そしたら安全性も説得力あるよ)、国債ばっかりで立ち行かなくなるのは目に見えてるとか、政治を全く信用できないとか、とにかく不景気とか、冬が寒いとか、……そう、いっぱいあります、日本を離れて海外に住んでやろうと思うことは。

 今までずっと読んでた雑誌の内容がどうにも最近つまらなくなって読まなくなる、というのは、要は見放してるわけです。

 それと一緒、日本という国も見放しそうな今日この頃です残念ながら。


で、見放しそうな原因最右翼が交通事情なのよ! いっつも言ってるけど、高効率ロータリーシステムである「ラウンダバウト」を導入すれば、年間5万キロほど運転する僕はもっと日本を愛せると思う。

でもね、実は信号機を作ってるのはバイク乗りにはなじみのある会社でね、ラウンダバウトが導入されて信号機がなくなるとその会社は大切な公共事業を失って傾いちゃうんだって(ホントか?)。だからその会社が傾かないように、僕らは赤信号で停まらされて老いていくわけです。

よくそんないつもいつも交通事情に腹を立てていられるね、と言われそうですが、最近の例をいくつか。

①高速道路右側を頑なに走り続けるプリウス。

プリウスという車に罪はないよ。だけど絶対数が増えたせいかプリウスドライバーの運転マナーが気になってしょうがない。

先日は高速道路の追い越し車線で、105キロぐらいでずーっと居座ってるプリウスがいた。真ん中車線や左車線の方が流れが速くてどんどん抜かれるのにお構いなし。コッチは左側追い越しをしたくないからずっと後ろにいたのだけど、いつまでたってもどく気配がない。パチパチとパッシングしてもお構いなし。ハイビームにしてもお構いなし。ウソでしょう、と、とうとう業を煮やして左側から追い越したら、なんとソイツ、ハイビームをくれるんですよ……。信じられん!

コイツはタダのバカだからしょうがないとして、これとは別に高速道路の右側車線が詰まる原因がありますね。それは3車線の左側車線を使わないという変な風潮。なんと教習所で「高速道路は真ん中車線を走るよう」に教わるそうですよ! 俺は教習所に行ったことがないから真実はわからないけど。ほんとかよ!? だから下手糞やペースの上がらないドライバーが真ん中車線に居座るのか!

で、真ん中車線がいつも詰まってるから、ちょっとでもペースを上げたい人は追い越し車線に追いやられる。結果として追い越し車線が110キロぐらいで流れることになり、(それでも速度制限以上だけれど)スムーズな交通の流れ及びスムーズな追い越しが阻害される。

で、左から抜いて捕まる。初心者ほど「だって一番左車線を走ったらトラックを追い越すのに真ん中車線に進路変更しなきゃいけないから怖い」なんて言うのを聞くけど、そんなこともできないなら免許証をあげるべきではない(断言)。そんなこともできないならそもそもトラックを抜くな。

先日ヨーロッパに行ったら高速道路のマナーが恐ろしくよくて感動した。

むこうでは追い越し車線に当たる左車線はいつもフリーで、追い越しをしたらみんなどんどん右に戻っていく。ユーチューブでバイクの最高速アタックなんて見ると、追い越し車線にいる車がどんどんどいていくでしょ? まさにアレ。みんなちゃんとミラーを見てるんだね。

②全く無意味な登坂車線

作った人もかなり頭が悪いんだけど、全然使われない登坂車線の現状を改善しようとしない人は実刑に値すると思う。せっかく車線を増やして、わざわざ「登坂車線」なんて看板を立てるのに、誰も使わないではないか! 

そう、使わないヤツが悪いよ。間違いない。だけどそれじゃあ意味がない。アメリカでは車線を増やす場合、それは速い側につける。アメリカでは左、日本では右にあたる側ですね。だから増えるのは遅いレーンじゃなくて速いレーンなわけだ。登坂車線ではなく追い越し車線がつくのです。これ、別に頭良くないですよ、アタリマエです。結果として速く走りたい人が進路変更のリスクを犯して前に出るのです。遅い人は進路変更する必要はない。実に理にかなってる。

この話をすると「だって真ん中には中央分離帯があるから車線を増やせないじゃん」と言う人がいるけど、もうその頭の悪さ加減に泣きそうになる。

じゃアメリカではどうやってるんだっつの!! 車線の増やし方は今のままでいいのさ、車線を決めるラインのひき方だけですよ、変えなきゃいけないのは。

第1通行帯が緩やかに左に行って、同じように第2、第3通行帯も左に寄る。そうすれば今まで第3通行帯だった所に追い越し車線ができるじゃんか。アタマを使えよな……

③全く無駄な赤信号 

そもそもラウンダバウトを作れば全ては解決するんだけど、某社の経営状況も踏まえて(?)信号のシステムを続けるならば、ぜひ夜間限定で点滅式を導入していただきたい。

深夜早朝に誰も来ない赤信号で停止するのは本当に腹立たしい。優先道路は黄色の点滅に、そうではないほうを赤の点滅にすればいちいち停まらずスムーズに通行できる。このエコブームなのにこんな所でムダをやめないのは何故なんだ……。



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さらに言えば、最近ある自動車会社の安全性に関する取り組みを見てきたけれど、ブレーキのアシストやハンドルのアシストとか、車線をキープするアシストとかとにかくいろんな技術を惜しみなく投入してすごいことになってる。どんどんドライバーの仕事を減らす方向に進むのだけど、それじゃ安全性はあがらないのだよ。ドライバーにはもっと責任感を持って運転に取り組んでもらわないと。

ちなみに僕が車会社の偉い人だったらまずは単純にバイクと同じようにライト(車幅灯)を消せないようにするね。それで安全性は飛躍的に向上する(断言)。

ヨーロッパではライトが消せない車が多い。日本では雨が降ったり朝晩の薄明かりの中など視認性の悪い状況でもライトを点けていない車はかなり多いから、これだけでも改善されればよっぽど安全。さらには車内でのテレビを禁止すればなお事故は減ると思う。


あーあ、交通事情を決められるエライ人になりたいな!


日本を離れたい理由のなかで最初に挙げた一つ「冬が寒い」というのが今回の英語であって、交通社会に対する憤りは聞き流していただいてOKです。いや、偉い人が読んでたら聞き流さないでね! 

寒い季節のバイクは厳しいですが、まぁこの季節ならではの色々な楽しみもありますし、バイクを冬眠させてしまうのは(雪国以外では)ちょっともったいないと思う。靴に入れるホッカイロとグリップヒーターで冬場でも十分にバイクは楽しめますよ。凍結だけは気をつけてね。


今回の英語はBrass monkey weather です。ん? 真鍮の猿の天気? 全く想像がつきませんね。でも信じられないくらい寒い天候の時に、その寒さをさして「Brass monkey!」と言うのです。語源には諸説ありますが有力なものを一つ。


   ※    ※    ※

時代は(今回も)大航海時代。イギリス、スペインを中心に世界中に船を出し、新たな土地を捜し求めていた時代に遡る。

当時のヨーロッパで強力な船を持っていた国々は競って遠くまで行き、我先にと新天地を発見していた。その競争は凄まじく、イギリスでは海賊を雇ってまで他国の船を出し抜く(及び沈める)ことに躍起になっていた。これにより海上での戦闘はしばしば行われ、まだ通信手段がなかった当時は有名船でも遠慮なく沈められ、それは時には同じ船籍の味方同士でも、手柄ほしさに海戦になることがあったという。  

当時の海戦は船の横に備え付けられた大砲によって打ち合うというもの。しかし初期の大砲とはただの鉄球を放つものであり、中に爆薬は入っていなかった。近年人気を集めたあの海賊映画の場面を思い浮かべればわかるだろう。大砲に火薬を詰め、鉄球を放ち、その鉄球が開けた穴によって敵船を沈めるのだ。

この大砲に詰めるための鉄球だが、次々と大砲に装填するために大砲の横の真鍮製のラック(レール)にボーリングのボールのように並べられていた。

このレールは船の揺れで鉄球が落ちないよう、かなり幅の開いた二本のレールでできていて、鉄球はその二本のレールの間に深く沈むようにおいてあった。しかし北海など、特別寒い地域で戦いが起きた場合、鉄球及びラックが寒さで縮むことがあった。このラック、鉄球が落ちないようかなり深く置いてあったがために、ラックも鉄球も極端に縮むと、なんと鉄球が2本のレールの間から下に落ちてしまうことがあったのだ。

これほどまで寒くなると、たとえ敵艦がいたとしても戦闘は休止された。鉄球が真鍮製のラックから落ちるほど寒い、と言う意味でBrass(真鍮)という言葉が使われるわけだが、さらにMonkeyはなぜ使われるのか。

これはこの真鍮製ラックには必ず猿の像が備え付けられていたからである。猿の像はラックの奥に設置され、鉄球をその猿の像から受け取るかのように作られていた。なぜ猿だったのかはわからないが、海賊が猿を飼っていることも多かったことから、船にしっかりと捕まり海に落ちないものの象徴としてあがめられていたと考えられる。

Brass monkey weather とは真鍮の猿の天気。すなわち猿の像がついた真鍮製ラックから鉄球が落ちるほど寒いんだから戦闘休止、屋内に入って暖まろう、ということなのだ。

   ※    ※    ※

いかがですか? これはかなり有力な説ですので信じていただいてOKです。Brass monkey weatherのときはムリしてバイクに乗らず、コタツでみかんとしゃれ込みましょう。でもね、鉄球が縮むぐらいだからソートー寒い話ですよ。ということは関東ぐらいの寒さだったら元気にバイクに乗りましょうね!



筆者:マリオ・テガ
バイクの英語
  昔はヤマハでレースもやっていた有名ライダーだが、今は旧い小排気量イタ車を愛するイタリアのおじいちゃん。冬でもバイクに乗り(といってもイタリアはそんなに寒くならないが)、手先が冷たくなるのを極端に嫌がったために初期のグリップヒーターを考案したとされる。今回のコラムには「冬のバイクは楽しいけどテガね、冷たくなる」とシメの一言。


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