- HERO‘S 大神 龍
(2011.9.2更新)※写真をクリックすると大きくなります。
新潟からの帰り道、長野県松本市まであと20キロほど手前の254号線。このコーナーを読んでくれている人にはこの件(くだり)はお馴染みだろう。そう、オレが冒頭で具体的な場所を記す時というのは大抵、そこでオレがトラブルに見舞われたと言う事だ。
別に無理矢理でっち上げてるわけでも狙ってやってるわけでもない。これもある種の才能なのだろうか!? まるで磁石が砂鉄を拾い集めるように厄介事がぴたりとオレに吸い付いてくる。
穏やかな日和の休日に新宿の歌舞伎町を歩けば外国人テロリスト扱いで警官に取り押さえられ、台風並みの強風の中、高速を走ればエコカーを名乗るはずの車がなぜか180キロに迫るスピードでオレを追い回し、極寒の吹雪の中を走り、辿り着いた露天風呂に浸かれば怪しいオヤジがオレのパンツを盗みやがる。
そしてこの日、2つ通り抜けるだけで600円も払わなければならないトンネルを抜けるととてつもないピンポイント豪雨がオレを襲いマシンがストップした。目に飛び込んできた屋根付きのバス停に避難してこのバケツをひっくり返したような雨が落ち着くのを待つ。雲の流れは速く、タバコを1本灰にしたあたりで雨は止んだ。
まったく、何だったんだ!? と言いたくなる。気を取り直して再始動を試みるがエンジンは沈黙したままだ。しかも悪い事に焦りからくるオレの不用意な再始動チャレンジによってバッテリーが終了。何度か押し掛けしてみるがシェルパは息を吹き返す気配を見せない。結果、自動販売機もないような山の中腹で残り500キロという距離を残しオレは途方に暮れるハメになってしまった。
ところでオレのもう一つの才能(才能と呼べるのかは定かではないが)は、こんな状況下にあってもなんとかなってしまうという事だ。
突然どこからか救いの手が差し伸べられてそれに呼応するようにラッキーな出来事が連鎖する。あとになってその帳尻を合わせるようにツキが戻ってくるのなら最初からトラブらないでくれればいいのにと常々思うのだが・・・
まぁこれがオレらしさと言う事になるのだろう。この面倒な手順さえなければオレのバイクライフはとてつもなく快適なんだが・・・。前フリが長くなってしまったがひとまずこの後の話は置いておいて今回の旅を最初から語っていくとしよう。
新潟“俺節”。3年前、四国の星野氏、東京のがんじーあたりからその噂を聞きつけエイプで単身乗り込んだのが最初だった。これによってオレの中で東北、北陸におけるバイク乗りとの繋がりが大きく広がったのは間違いない。昨年はホーネット900で参戦。行く度に新鮮でケタ外れの刺激をオレに与えてくれる。
そして今年のマシンはシェルパ。このところ酷使し過ぎという感は否めないが6月のETC休日特別割引の廃止を受けて走るコースは下道。そして距離が距離だけにいざという際に高速走行が可能であるという保険的な要素を踏まえた上での選択だった。
マシンにしてみればこのムチャ振りにイラッときたのか、スタート直後から好調時に比べたら加速も悪く、最高速も伸びない。明らかにパワーダウンしている。それでも国道やバイパスなどでの流れの中では何の問題もない走りをしてくれる。琵琶湖を掠めるように日本海側に抜け8号線を新潟へ向け走った。夜になって通過した金沢では盛大に花火が上がっていた。
夜の国道8号線は交通量も少なく街中を抜けると信号も少ないため高速のようなペースで距離を稼げる。この日は富山県高岡市を過ぎたあたりの道の駅で仮眠を取ることに。時刻はちょうど日付が変わろうかという頃だった。
翌早朝6時に目覚め、一般の利用者で賑わう前にテントを畳み撤収の準備を完了して痕跡を消し去る。これが公共施設などを軒下としてお借りする時の最低限の礼儀である。単なる自己満足に過ぎないが立つ鳥跡を濁さずというやつだ。
- [次のページへ]