Hi-Compression Column

HERO`S Meeting Report

HERO‘S 大神 龍
HERO`S Meeting Report
年齢不詳
職業フリーライター
見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。
愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ900。


初秋、新潟娘四国襲来!! 迎撃初日は大波乱
(2011.10.24更新)※写真をクリックすると大きくなります。

このところ、良くない事が続いていた。

細かい事を言えばオレ自身は良くない事だらけなわけだがそんなお笑いネタになるようなちまちました凶事ではない。3ヶ月ほど前には香川の仲間が事故で亡くなり、つい先日、愛知の仲間が重病で倒れた。

そしてこの日の夜、愛媛県松山市の路上でオレは突然、オレの進路を塞いだ車両に激突し、軽く宙を舞った。

よく聞く話でそんな時、過去の記憶が走馬灯のようにスローに流れるというがありゃウソだ。オレの頭に浮かんだのは“不覚”の二文字。そして直後、オレは烈しい衝撃に見舞われた。しかも左側頭部から肩、背中にかけてアスファルトに叩きつけられるという最悪な着地である。

まったくシャレになっていない。そう、オレはこんな所で平和ボケしたドライバー相手にアクロバテックな芸を披露してる場合ではないのだ。  

ひと月半ほど前の新潟俺節にて、その大騒ぎな宴が沈静化してきた深夜にオレはえっちゃんという女の子と話し込んでいた。その話の中で彼女は9月の終わり頃に一週間ほど休みを取ってバイクで四国を一人旅するつもりなのだと言った。

そういう事ならはっきりと予定が決まった段階で言ってくれれば色々とお勧めな場所やルートなどを案内してあげると言い、オレは自分の連絡先を彼女に教えておいた。そして9月の半ばを過ぎた頃、彼女から連絡がきた。決まった大まかなルート、日程を聞いたオレは四国の仲間にそれに合わせた形での協力を要請した。その初っ端、しまなみ海道経由の愛媛側から四国入りするという事でオレは松山のタイトロープ星野氏に初日の彼女の接待をお願いしていた。

今回の彼女の旅は一人旅が前提であるが、なにぶん限られた日数での初めての四国という事で効率よく四国を走ってもらうために要所要所のナビ役をオレが引き受ける形でこの日の夜、ささやかながらの歓迎会に向かう途中だったのだ。

片道900キロの距離を走り抜けえっちゃん、念願の四国入り。ハッキリ言ってこのコ、すげぇタフ。
片道900キロの距離を走り抜けえっちゃん、念願の四国入り。ハッキリ言ってこのコ、すげぇタフ。

結果次第では何もかもブチ壊しにしてしまうこの事態、まずは冷静に状況を判断する必要がある。

オレ自身意識は途切れていない。体に多少の痛みを伴うが手足は動く。後方を見るとシェルパが横たわっている。そのすぐ後ろでは後続車が列を成していた。オレはシェルパを起こし引きずるようにして路肩に寄せた。すぐに駆けつけて来た警察官の指示で目の前にあったコンビニの駐車場にバイクを押していった。

事故処理班が来るまで時間があるということでマシンのダメージを確認するとフロントから派手にぶつかっていった割にはハンドルストッパーが折れた以外は大きな損傷は見られない。代わりにリアキャリアが大きく捩れている。おそらく失敗したジャックナイフのような飛び方だったのだろう。エンジンはセル一発で始動。試しに8の字を書いたりしてみたが低速での操縦性に問題はない。何とか自走できそうだ。体の方も痛みはするが目立った動きの制限はない。どうやら打撲程度で済んだようだ。

せっせとマシンチェックをしてるそんなオレを警察官と事故相手のドライバーはまるで珍しい生き物でも見るような目で呆然と眺めている。確かに普通の人と比べたらオレの体は壊れにくいのかもしれない。だがオレとて人間だ。不死身ではない。そもそも学術用語的にみれば不死身と言う言葉は存在しない。アクシデントに見舞われた時、生と死の境界線はあまりにも曖昧な“運”という言葉で括られる。つまりオレに付随する良いんだか悪いんだかわからないこの奇妙な強運は相も変わらず健在という事だ。

この後の事故処理云々について細かい事はここではふれない。第三者がこの時の光景を見たとしたらおそらくオレが悪者に見えた事だろう。だが・・・ハッキリ断っておくがこの事故は結果としてほぼ100%に近い割合でオレが被害者であるという事で話はついている。誤解のないように。

前夜から通しの1000キロ走行後のえっちゃんとアクシデント直後のオオカミ男。その事を前提に見るならこの絵面は実に非現実的。
前夜から通しの1000キロ走行後のえっちゃんとアクシデント直後のオオカミ男。その事を前提に見るならこの絵面は実に非現実的。

その後、星野氏がえっちゃんとプリウス(あの忌々しいエコカー)で駆けつけてくれた。最近、タイトロープ入りしたセイジさんも来てくれてなんとか仕切りなおしである。

しかし・・・事故直後でマシンの状態が把握できてないのでゆっくり行ってくれと言ったのにもかかわらず星野氏はとんでもないスピードで逃げていく。具体的な数字は書かないがシェルパでほぼ全開走行である。相変わらず何に乗せても彼の走りは状況を選ぶ事無くオレに対して容赦がない。まぁおかげで走ることに関してはほとんど問題がないことがわかって少し安心したわけだが。

オレ達は松山市内の星野氏お薦めの居酒屋で愛媛の郷土料理を前に乾杯した。えっちゃんの歓迎会でありながらつまらぬ事故で話題の半分をオレがかっさらった感があるがこの日のえっちゃんの行動は男のオレから見ても凄まじいものがあった。聞くと前夜に新潟を出発して夜通し愛機のゼファーを走らせ朝の8時に四国入り。星野邸に荷物を置いてそのまま佐田岬へ行って来たのだと言う。単純に考えてほぼ1000キロの距離を走ったことになる。

新潟には魚沼二輪愛好会というちょっとイカレたチームが存在するが(彼女の彼氏もこのチームのメンバー)まったく新潟勢は男も女もツワモノ過ぎる。

この夜、オレ達はよく呑み、食べ、笑った。そんなこの四人のうち女の子は新潟からほぼ不眠不休で1000キロを超える距離をバイクで走り、胡散臭い一人の男はほんの2時間前にバイクで宙を舞うほどの大事故をやらかしたなんて周りの誰も想像することなどできなかっただろう。

それにしても今回のトラブルは彼女の初四国ツーリングを歓迎するサプライズとしては度が過ぎた。まったくもって申し訳ないことをした。ただ、ただ、反省のみである。



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