Hi-Compression Column

順逆無一文

“駐車監視員”

(4月28日更新)

都市部で日常的にバイクに乗られている方なら感じていられるかもしれないが、最近、街中の駐車場で、あの実に不快な「二輪禁止」の表示が徐々に少なくなってきている気がしませんか。二輪用の駐車場が全然足りていない状況は相変わらずですが…。

「二輪禁止」の看板というのはそれとはまた違った次元の話で、二輪に対する差別意識を露骨に現わした、配慮というモノが一切感じられない表現だ。

特に公共施設でこの表示を出している所があるのには、怒りもそうだがあまりの低レベルの行政に失望すら感じる。都市交通の一員として扱う気がないなら自動車税なぞ払わないぞ! だ。

その不躾な「二輪禁止」の表示が「二輪は入庫できません」「ご利用できません」になってきた。当事者は「そんなささいな表示の違いくらいで」と思うかもしれないが、できることなら違法駐車は避けたいと思うまっとうなライダーにとって、都市部で二輪が止められる所を毎回毎回探して回るのはそれくらい大変なことなのだ。

改善ついでにリクエストをさせてもらえれば、「できません」で終わらせないで「近隣の二輪車が利用可能な駐車場案内」も表示していただければ助かる。

         ※

ドライバーや二輪ライダーから、目の敵のように思われることの多い駐車監視員。別に彼らに何ら問題がある訳じゃなく、手順が定められた仕事として自らのルーチンを黙々とこなしているだけ。

駐車禁止場所に駐車するのは己の判断な訳で、それで取り締まられたのなら己の判断の甘さにこそ怒りを覚えるべきで、まっとうな“仕事”をしているだけの人間に怒りの矛先を向けるのは筋違い。それこそまっとうな人間じゃない。

真に怒りの矛先を向けるべきは、自分達の無策ぶりを棚に上げて、なんでも禁止して取り締まりさえすればいいと安易な法律を施行した為政者と、現場での取り締まりすらあっさり放棄して上前だけはねる警察だろう。

まあ、とはいっても、現実に大枚が吹っ飛んでしまうことになる“確認標章”(ステッカー)を貼られた経験のある方には“敵”に見えてしまうのは致し方のないことかも。

で、ちょっと調べてみました。駐車監視員とは?

駐車監視員とは、2006年6月1月に施行された改正道交法により出現した“放置車両を確認する作業員”であり、全国の警察(正しくは警察署長)から委託された民間会社(正しくは公安委員会に法人登録した民間法人)の“従業員”なのですね。

民間会社の従業員とは言っても監視業務中はいわゆる“みなし公務員”とされますから、業務を妨害すれば警察官などの場合と同様“公務執行妨害罪”となるのでご注意を。

おなじみの出で立ちですが、4タイプが存在します。一般的なのは、ペパーミントグリーンにモスグリーンの肩章がついた上着の冬服、半袖か長袖シャツの夏服、ズボンはいずれもモスグリーン。それに雨天に着用する雨衣、厳冬期の防寒服の4タイプで、警察庁が仕様を出し民間業者がそれに沿って製作している。駐車監視員用の徽章が付いた帽子と腕章は警察からの貸与なのだそうだ。

必ず2人以上のチームで活動し、放置車両を発見しだい違反状況を確認し、専用端末で日時や場所、ナンバープレート画像などのデータをその場で警察へ送信。最後に“確認標章”(ステッカー)を貼り付けて駐車監視員としての仕事は一件落着、じゃなかった作業終了となる。

小宮山幸雄
komiyama
“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。


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実際の違反切符の作成や交付は昔と変わらず警察が行っている。要するに手下の民間業者の従業員に汗水かかせて街中をはいずり回らせ、自分達は机に座ったままで“テラ銭”を稼いでいるというわけだ。おっと横道にそれてしまった。

さて、じゃあ彼らはどうやって駐車監視員になったか、と言えば、まずは公安委員会のお墨付きである“駐車監視員資格者証”なるものを取ることから始まる。「各都道府県の公安委員会が国家公安委員会規則で定めるところにより、放置車両の確認等に関する技能および知識に関して行う駐車監視員資格者講習を終了した者に対して発行される」とある“資格証”だ。

講習の実体は、2日間の日程で計14時間の講義が行われ、その後概ね1週間後に1時間の終了考査を実施。この終了考査に合格すれば見事“駐車監視員資格者講習終了証明書”が発行され“駐車監視員資格者証”の交付申請が出来るようになる。

受講の手数料はお一人様19,000円。

交付資格としては、(1)18歳以上の者、(2)成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者、(3)禁錮以上の刑に処せられ、又は道路交通法第119条の2第1項第3号の罪を犯して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者、(4)集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で確認事務の委託の手続等に関する規則第3条各号に掲げる罪のいずれかに当たる行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者、(5)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して2年を経過しない者、(6)アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者、(7)精神機能の障害により確認事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者、(8)駐車監視員資格車証の返納を命ぜられ、その返納の日から起算して2年を経過しない者、となっている(警視庁の“駐車監視員資格者認定申請書”の注意事項から参照)。

要は18歳以上で普通に市民生活をされている方ならOKで、特に学力とか技術が必要というわけではないことが分かる。講習時に念入りに「ここ大事ですから」と出題される可能性の高い部分を教えてくれると言うことなのでちゃんと聞いていれば終了考査合格は容易だとか。

また元警察官など、警察関係者向けに「道路交通関係法令の規定の違反取り締まりに関する事務に従事した期間が通算して3年以上ある者」などには特例でいきなり認定考査が受けられる仕組みも作っているのはさすが。

で、この“駐車監視員資格講習終了証明書”を持って公安委員会に行き“駐車監視員資格者証”を交付してもらうというわけ。ちなみに古いデータしか見つからなかったが、2006年、改正道交法スタート時に誕生した駐車監視員の数は全国270警察署で約1600人とか。都市部での活躍ぶりからは現在は相当に増えているはず。

で、晴れて駐車監視員としてデビューかというとそうはいかない。“民間委託”と言うぐらいで委託された民間業者に雇ってもらわないと働けない。自分で勝手に“確認標章”が貼れる訳じゃない。

委託されている企業の多くは警備会社などで、そこに雇われるカタチで初めて監視の仕事に当たれるというわけ。ここら辺も警察からの天下りだの、利権がらみだのいろいろとあるが本題からはずれてしまうので割愛、また別の機会に。

ちなみに収入の方は雇ってもらう会社しだい。一般の警備会社従業員などと同様、給料制で月15万~20万円という方もいれば、パートさん的にシビアに実働時間による報酬だったり、様々のようだ。そうここまで読んでお気づきのように、まずは駐車監視員をリクルートしている企業を見つけることがすべてのスタートなのだ。そうでないとせっかく頑張って駐車監視員の資格を取っても、働く先がない。

駐車監視員になりたいという方は、まずは募集を行っている民間企業を探してください…。

以上、駐車監視員という職業の実体を調べてみました。実際に駐車監視員として働いているよ、という方々からのお便りもいただけたら幸いです。

駐車監視員としての立場からも言いたいことはいっぱいあるはず。

                 (小宮山幸雄)



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