Hi-Compression Column

2010.07.13更新しました
■第5戦〜第7戦ダイジェスト
目が回る……多々ありすぎの3戦でした。


第5戦から第7戦は、3週連続のレース。イギリス・シルバーストン→オランダ・アッセン→スペイン・カタルーニャ、という欧州大移動のスケジュールである。なかでも慌ただしくなるのが、第5戦から第6戦への移動だ。

第6戦オランダGPは、第二次大戦前の独立レース時代からの伝統で、毎年土曜に決勝を行うことが通例になっている。

つまり、通常よりもスケジュールが一日前倒しになるわけだ。

ということは、チームの各種機材は火曜には現地に到着していなければならない。

各クラス各チームのロングトレーラーの運転手たちはもう必死である。

イギリスGPのレースが終わると即座に目を三角にしながら撤収に取りかかり、まだ陽が高い夕刻のうちに次の開催地オランダ・アッセンへ向けて移動を開始する。

バーミンガムの南東に位置するシルバーストーンサーキットを出発して、ドイツ国境のアッセンまで、乗用車でさえくたびれてしまうこの距離を、速度に限界のあるロングトレーラーで一気に走り抜けようというのだから、これはもうひたすら我慢大会みたいな運転である。

まずは世界屈指の渋滞地ロンドンを巧妙に回避しつつ、イギリス国内を南下してフォークストンへ。そこから英仏海峡(ドーバー)トンネルで大陸側のカレーへ渡り、フランス北部に抜けると今度はベルギーを通過してオランダ・アッセンを目指してひたすら北東方向へぐいぐい走り続ける。で、月曜の日没前にようやくアッセンのパドックに到着したかと思うと、ひと息つく間もなく、今度は週末のレースに向けた設営準備に取りかかるのだから、裏方の人々の大変な苦労たるや推して知るべし。彼らの尽力なくしてレースは成立しえない。

華麗で賑々しいグランプリは、じつはこのような人知れぬ地道で大変な活動に支えられているのだよという、以上、今月のちょっといい話でした。



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膨大な数のトレーラー群が、一気に撤収から大移動へ取りかかる様子の慌ただしさときたらあなたもう!!


で、このただでさえ慌ただしい今回の3連戦では、ご存じのように第5戦の決勝日午前に青山博一(インターヴェッテン・ホンダ)が転倒負傷を喫し、第6戦からはホンダテストライダーの秋吉耕佑が代役参戦。



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秋吉耕佑が代役参戦の一報を受けたのは日本時間の月曜午後、水曜には現地入り。ご苦労さまでした。

その次の第7戦では、第4戦イタリアGPで負傷し長期欠場を強いられているバレンティーノ・ロッシ(フィアット・ヤマハ)の代役として、ヤマハテストライダーの吉川和多留の参戦が決定。



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「自分の役割は理解しているつもりだけど、それでもさすがに緊張するよ」とベテランの吉川和多留。

さらには速報でもレポートしたとおり、この第7戦ではMoto2クラスで手島雄介が超のつくほどの急遽代役参戦を果たす。と、日本人選手の出入りをこうやって文字にするだけでも、どれほどせわしなくバタバタした3連戦だったかは容易にご想像いただけると思う。

だってほら、読んでるだけでもう息が詰まりそうになるでしょ?

日本人にフォーカスするだけでもこうなんだから、MotoGPクラス全選手やMoto2、125ccも含めた動向や全体像を捉えようとすると、もう何が何やらしっちゃかめっちゃか、である。

……なんて言ってると、ケーシー・ストーナー(ドゥカティ)の来季ホンダワークスへの移籍が正式発表されたじゃないの。

西村 章
西村 章
スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社等にも幅広くMotoGP 関連記事を寄稿。訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマ ンスライディングテクニック』等。twitterアカウントはPermanent_Waves。

でもまあ、これはシーズン第2戦スペインGPあたりから通奏低音のように噂されてきたことなので、さほど驚くにあたらない。

この噂、当初はストーナー、ホンダ両者ともに否定していたものの、イタリアGPの際にはHRC(ホンダレーシングコーポレーション)の首脳陣が大挙して現場を訪れていたため、おそらく何か契約関連の大きな動きがあるのだろうなあと推測してはいたのだが、こうやって蓋が開いてみると、なるほどやっぱりそういうことだったのね、と帰納的な推論(あながち穿ちすぎでもないと思うけど)もできようというものだ。



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2011年のホンダワークスは3台体制が噂されている。スポンサーやチーム構成は、近日中に発表??


となると、次の興味の対象は現在負傷欠場中のロッシの去就である。

これまた最新情報では、次のドイツGP復帰視野に入れたテストランを実施し、体調と相談しながら早々に現場復帰するかどうかを決める、ということだけれども、この話についても、そこまで早い現場復帰を望むロッシの意図を深読みし出せばきりがない。

なので、深読み(下司の勘繰り、とも言う)はひとまず措いておくとしても、彼に関する目下最大の興味は、来季ドゥカティに移籍するかどうか、ということ。

日本でこの情報が注目されはじめたのがいつ頃なのかは知らないけれど、少なくとも現場ではイギリスGP終了時には、もはや既成事実のように語られていた。

といいながら、「今のところはドゥカティ移籍で確定っぽいけれども、明日の展開は誰にもわからない」という但し書きもついていたのだけれども

ま、この結末もそう遠くないうちに決着がつくだろうから、それまでは慌てず騒がず、事態の推移を落ち着いて見守ることにいたしましょう。

というわけで今回は、レース結果はすでに皆様とっくにご存じだろうから、ちょっと目先の毛色を変えて、水面下の動きみたいなものに注目をしてみました。日本ではこのテの情報はなかなか浮上してこないので、たまにはこういうのも一風変わってていいんじゃないかと思うんだけど、どうすかね。

BGMは、ゲイリー・ムーア&Gフォースの"Hot Gossip"あたりでひとつよろしく。

さて、次回も連戦。ドイツ(ザクセンリンク)〜アメリカ(ラグナセカ)と続く2週連続のレースである。

現在ランキングトップのホルヘ・ロレンソ(フィアット・ヤマハ)は5勝。ランキング2位のダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)は1勝。

HRC総監督の山野一彦氏は「年間優勝ラインが9勝だと考えると、これ以上相手に勝たせてはいけない。ドイツとアメリカでは連勝を狙う」と必勝モード。

フィアット・ヤマハ総監督の中島雅彦氏も、「チャンピオン獲得の目標勝率は5割」(=今年の場合は9勝)と常々口にしている。山の両側から同じ頂を見ているともいえそうな両総監督の言葉を見ても、この2連戦はどうやら今季最初(にして最大?)の天王山になりそうな気配。

名勝負になってくれることを祈るばかりである。結果は、可及的速やかに当欄でレポートしたいと思っております。ではでは、お楽しみに。



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「チームスタッフ全員より心をこめて ヒロ、早く戻ってこいよ!!」という温かいメッセージ。※クリックすると写真が大きくなります。



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