2010年9月9日更新
「なぜ君たちは写真をとりますか?」
大学の、最初のあたりの講義で習ったことだけど
それまで漠然と興味半分だった写真を撮る行為に、意味があるのだということを教えてもらった大切な授業だったのは後になって知ることに。
日本特有の文化として、「ハレの日」と「ケの日」というのがある。
ハレの日とは、人生の節目で非日常を表わす日。誕生日や結婚式、入学卒業、そのほかの儀式、儀礼、葬祭とかね。
それに対してケの日とは日常のことを表わし、ケの日が疲れると「ケ枯れ」「ケガレ」となり、あまりいい意味では使われなかったりする。
もともと写真は、このハレの日に撮影されることが多かったわけです。
人生の節目の大切なときに記念に残し、その後々まで紙になって残って、思い出したようにアルバムを引っ張り出して、後世にまで語られるわけです。
一般にはたいしたことの無いスナップに見えても、撮られた人たちにとっては大切な瞬間を切り取っているもの。
だから、どんな写真でも大切なんですよと、もう誰だかも忘れちゃったんだけど、当時の先生に教えてもらったことをなんとなく考えることが多くなったこのごろです。
レースの現場というものは、すべてのライダーにとっての「晴れ舞台」ハレの日。
それぞれがいろんな想いをもってその場所にいる。
グリッドに立ち、シグナルが変わり、レースがスタートする。人生のなかで輝く瞬間がどれだけあるのかと考えると、その人たちの晴れ舞台に立ち会うこと、ハレの日の写真が撮れることをとても嬉しく思う。
今はカメラもいいから、走りやなんかの撮影はちょっと勘がよくて器用なら誰でもできる。
だけどその被写体の、いいと思える瞬間がいつ、どこなのかを考えて撮影するのが一番難しく、一番やりがいのある部分だと思っている。
レースの仕事は、間近でうそ偽りない人間が撮れるのが魅力で、たぶんスポーツカメラマンがみな感じているところだと思うけど、人が何かに打ち込んでいる姿はすべて輝いて見えるもの。
キラキラして、そして儚くもあるから撮りたい欲求にかられる。
走ってるのを見ているだけで感動することもあるし、ライダーが今一生懸命なのが伝わってくる、写真撮って残していかねばと思わせる。撮りたいと思う人がいること、自分が今それを撮影できる環境にいられることに感謝しています。
私は、彼が一生懸命に全日本を走っていたころ、彼の晴れ舞台を全力で撮影できたのだろうか?思い残していないか。昔の写真を引っ張り出すと、そこにはカメラを見つけては笑顔でサインを送る富沢祥也がたくさんいました。
この仕事をしていると、一つ一つのことを消化していくのが難しいこともある
だけど、これからも私はたくさんのライダーや輝いてる人たちを撮りたいと思う。
「今だ」と思った瞬間に写真を撮る、嬉しいときもつらいときも、すべてが眩しい瞬間だ。そして後でみんながそれを見て「こんなときあったよねぇ」って笑顔になってくれると嬉しいです。
すべての物事に意味があるのだということをもっと考え、思い残すことの無いように、そしてみんなの思い出に残るようないい写真を、ココロを込めて撮影していこうと思う
ステキな笑顔をありがとう。
R.I.P
Shoya Tomizawa
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