裏庭の徒然草



国内の自動車/二輪車メーカーの集まりである一般社団法人日本自動車工業会(自工会)には二輪車を担当する(国内4メーカーによる)二輪車特別委員会(通称、二特)が組織されている。

その自工会・二特の二輪車企画部会・世古俊晴部会長が2011年の始まりにあたって、二輪車利用環境改善での重点テーマを明らかにしている。

ここではまず、自工会の媒体向け情報発信誌である「モーターサイクルインフォメーション」からその内容を整理してお伝えしたい。  

それはいわば国内4メーカーが「この二輪車利用環境を重点的に改善したい」と考えている“意思表示”&“宣言”でもあるのだ。


世古部会長は4つの重点テーマを提示している。それは——

●駐車場問題
●走行空間の研究
●二輪車の高速道路料金
●原付二種の免許取得時の負担軽減


それを補足しての世古部会長のコメントをまとめると——

@日本にはクルマの普通免許を取る前に原付免許を取得した人が1700万人いる。以前に二輪車に乗っていた人たちと考えると、再び二輪車に乗るファーストターゲットとして捉えたい。

@まずはその1700万人に向けて、二輪車の有用性に気づいてもらい、四輪と二輪の使い分けを提案したい。

※今でも年間約20万人が原付免許、約20万人が普通二輪免許を取得している。現在国内の二輪車需要は約40万台。それにこの新規の二輪車参入40万人が、なるべく新車に乗る工夫を業界として委縮せず、柔軟にしたい。

@そのために(前記した)4つを自工会・二特として取り組む重点テーマとする。

それでは掲げられた4つのテーマについて、具体的にメーカーはどう改善しようと考えているのか、モーターサイクルインフォメーションから抜粋。実際の現状・現況、また筆者の補足・考えも加えたカタチで展開していく。


駐車環境の改善

『自工会・二特では、2007年から2010年にかけて、全国の政令指定都市および東京23区のなかで、二輪車の違法駐車取締り件数の多い自治体を訪問し、二輪車の駐車対策について現状を尋ね、公共駐車場の整備促進を求めてきた。

そして最近では、各地に二輪車駐車場ができはじめたことから、そうした駐車場の整備ノウハウを自治体が相互に共有する一助にと、参考資料をこのほどまとめた。

この資料は『自治体の二輪車駐車場・事例集2011』というタイトルで、設置場所によって駐車場を分類し、路上に設置したケース、自動車駐車場に併設したケース、自転車駐輪場に併設したケース、水路敷に設置したケースなど、16事例を紹介している。80ページのボリュームがあり、写真を豊富に用いて視覚的に施設の状況を読み取れる資料となっている。

二特では、この春、全国の主要な自治体をはじめ、交通・駐車場関係者にこの資料を無償で配布する予定となっている』(以上、自工会の主張)。

実はこの問題、単純なのだ。二輪車販売店の団体である全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の吉田純一会長とお話しした時、吉田会長は次のように喝破しておられた。


「都市部の道路に(駐車用の)線を引く。それで実は解決するんです」。


まったくそのとおりで、本誌が紙媒体であった時に何度もヨーロッパの都市における(都市にとっても環境、渋滞緩和、駐車スペースなどの観点から二輪車の利便性をどう活かすかが大きなテーマとなる前提が構築されている)二輪車の駐車スペースは、基本的には道路のデッドスペースに駐車スペースを示すラインを引くことで“解決”しているのだ。

しかしこの国では、すぐに立派な駐車場(箱もの含め)作ろうとするし、その施策でどういう利益(利権)が生じ、それを配分するにはどうすれば“おいしいか”頭をひねる人がいるようだ。

この2月から、東京・表参道に2009年11月から全国初で設けられた「二輪車用パーキングチケット(34枠)」の60分料金が、「警視庁関係手数料条例」(そんなのあるんだ:笑)改正で「二輪車用については」300円から100円に値下げされる。

これなど、開設される時点で300円はないだろう、誰も利用しない、と言われていたことで、とにかく「駐車スペースがない」とうるさいから、料金の妥当性、ラインの引き方など事前の“研究”なしに“とりあえず作ってしまえ”的としか思えないものだった。

まあ、高すぎると声を発すれば、それに向けて遅々とではあるが変わることもあるのだとは思いたいが。


駐車スペース問題は緊急の課題でもある。そしてこのページで既報したように各法律などが改正され、見かけは解決へ進捗している面もある。また、その改正が正しく、妥当に、運用されているか総務省行政評価局も監視を始めている。

しかし繰り返して、あえて言えばAJ吉田会長が指摘するように、二輪車の特筆すべき利便性を都市部の交通で活かすために「道路に駐車用スペースのラインを引けばいいのだ」という基本部分を業界、ユーザーは、民主党・二輪車ユーザーを支援する議員連盟や自民党のオートバイ議員連盟などを含めて国交省/警察庁/地方自治体などへ全面主張・発信していくべきだ。


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