裏庭の徒然草


静岡県伊豆在住のフリーの二輪車ジャーナリストであるKAZU中西(本名中西和久)さんとは20年以上の付き合いだ。

紙媒体であった本誌やミスター・バイクBG誌ではおなじみの取材者&カメラマンでもある。

最初に彼に会ったのはシンヤデイの時だった。

山梨県の二輪車安全運転競技会で優勝・県知事賞を獲得したこともあるKAZU中西さんは、そのシンヤデイの酒宴たけなわの時に、東京に出てきてフリーの二輪車ジャーナリストとして生きていくことでのサジェスチョンを私に聞いてきた。 私は今となってもあまり意味がわからないエラそーな答えを酒で頭も回らない、呂律も回らない口調で吐いていた。


「なあ、主観で書くか、客観で書くか。それを決めて始めなさい」。

酔っ払いのおっさん、何を言うとるんだろ。きっとその時KAZU中西さんは思っただろう。が、「ハイ、わかりました」と大人の答えを返してくれていたのを覚えている。  

そのKAZU中西さんから連絡が来た。

「2月24日に『伊豆スカ事故ゼロ小隊』を設立しました」。

彼は居を定めた地元の静岡県・伊豆スカイラインでの「伊豆のワインディングロードを愛するバイク乗り有志一同」という活動を始めていた。


首都圏周辺で絶好のツーリング/ドライビング・ルートのひとつである伊豆スカイラインでは2008年ごろから二輪車による重大事故が増加傾向を見せていた。

県など行政側は(通行禁止措置を含む)二輪車通行規制も検討する事態・状況になっていたのだ。

その中、現地を管轄する大仁警察署は、通行規制ではなく、二輪車の事故防止を目的としたイベントを2009年11月からライダーが多く集まる日曜に開催。

同スカイライン内の駐車場を会場として、警察署員による事故発生状況説明、静岡県警白バイ隊員による安全運転実技指導などに加え、2010年6月からはライダー自身も何かできないかということで自主参加したロードレース・ライダー/レーシング・ドライバーでありジャーナリストの宮城光さんによる安全運転講話と地元に住む二輪車ジャーナリストということでKAZU中西さんたち「ライダー有志一同」による販売店やライダー、二輪専門誌などへの呼びかけや啓蒙活動が開催されていた。

2010年11月までの1年間で5回開催されたこの「伊豆スカイライン・ライダー事故・ゼロ作戦」の効果は絶大で、その間の二輪車死亡事故はゼロ、重傷を負う重大事故も2008年の24件から12件(2010年10月末まで)に半減した。 この結果を踏まえ、参加したライダーを代表して宮城光さんとKAZU中西さんは大仁警察署から表彰を受けている。

そしてこのほどその「伊豆スカイライン・ライダー事故・ゼロ作戦」をライダー自身がサポートする新たな「伊豆スカ事故ゼロ小隊」という団体が2月24日に発足したのだ。

従来の“有志一同”から進展させる団体を設立した背景をその小隊長を務めることになったKAZU中西さんは――

●警察署には人事異動があり、担当が代わった場合でもこのアクションを継続させていくために経緯と、そこに賛同・協力するライダーがいると伝えるための一歩進んだ形の団体組織が必要。

●同じようなことが地元安全普及協会に対しても言える。

●現在地元の二輪車安全運転推進クラブ(2推クラブ)は休止状態である。

●旧有志一同は団体の実態が不明瞭で活動内容を理解しにくかったため、より積極的に安全運転啓蒙を可能にするため、しっかりした組織化を図り、活動内容を明確に伝える必要がある。

●各地からこういったライダー自身による“草の根安全運転アクション”への問い合わせが多く、伊豆スカイラインがその雛形となるものを早急に提起する必要があったこと。

――などと説明している。

その設立書によれば、主たる隊員は地元のライダー10数名で構成され、静岡県と隣接する県に在住するライダーも準隊員:サポーターとして参画している。

さらに活動内容としては――

●伊豆スカイラインおよび西伊豆スカイラインなどにおける、安全啓蒙活動(ビラ配り・声掛け・定期的な観察巡回など)。

●事故もしくは転倒の場面に遭遇した際の、二次災害を防ぐ緊急的な対処。

●タバコの吸殻のポイ捨てやゴミの不当投棄等への注意呼びかけ。

●伊豆スカイライン・ライダー事故・ゼロ作戦のサポートその他、関連する活動への人的協力。

――と書かれている。

ただこう聞いてきて気になるのは(嫌うライダーが多いと思われる)権威的、お上的、上意下達的なキナ臭いグループなのではないかという点。

そのことについては――


「伊豆スカ事故ゼロ小隊はあくまでも営利を目的としないボランティアの安全啓蒙活動団体であり、決していわゆる自警団的な活動は考えていません。 ただ、大仁警察署や交通安全協会大仁地区支部からの要望・要請については可能な限り協力するという姿勢です」

とKAZU中西さんはあくまで任意の民間のボランティア団体であると語っている。

そうしてその動きが! これ以上二輪車が走れる空間を狭めてはならない、そういう思いからスタートしたこの活動・行動は、特に二輪車事故が多いということで何らかの規制が考えられる各地のツーリング/ドライブ・ルートや、すでに走行規制を布かれているルートなどの周辺で、ならば走行マナー向上にライダー自身がかかわっていく


「“草の根”安全運転啓蒙アクション」

として各地で行動が可能なのか、そういう動きが立ち起ころうとしているのだ。

KAZU中西さんによれば、例えばすでに長野県・ビーナスライン/麦草峠/大門街道あたりを活動の場とする“ビーナス事故ゼロ小隊(仮称)”が、地元ライダーと地元ショップを中心に3月にも発足する予定とのこと。

また、ベテランライダーを中心に関東の週末ツーリングルートのメッカとなっている国道413号、通称「道志みち」でもマナーアップキャンペーンなどを2010年夏ごろから伊豆スカイライン有志一同と連絡を取り合ってライダー自身が行動を起こしていたが、ここも何らかの形で安全運転啓蒙アクションのための団体を組織することが地元ライダーによって進行中とのこと。

その他、静岡県西部のオレンジロードや森町、静岡県中部の日本平などでも活動意思を持つライダーがいるという話もあるようだ。

さらに大阪方面では二輪車通行規制を受けている信貴山生駒スカイラインの禁止解除へ向けてのアクションが某大手用品部品会社を巻き込んで起こりつつあるという情報も入ってきている。

一説には二輪車の通行規制がかけられている道路は全国で600か所以上、約1000kmあるとも言われているだけに(NMCA:日本二輪車協会のホームページ参照)、こういったアクションが各地元ライダーや販売店から今後起こってくる可能性は大きいようだ。

なーんだKAZUさん、物事をちゃんと客観で見て、主観で行動しているじゃん。そーいうことだよ私が初対面のシンヤデイで言ったのは。ハハハ…!

で、あなたの住んでいる、走っている地域で二輪車が走行規制を受けているルートはありませんか。

ライダーとして何らかのアクションを起こす人はいませんか。それが大きな「流れ」となった時、二輪車を取り巻く環境や社会の目が大きく変わる可能性があるのです!


ライダーが、そんな「うねり」を起こしましょう!

(2011.3.7更新)

古・編集・長 近藤健二
古・編集・長 近藤健二
ミスター・バイク本誌の編集長を4代目(1977年9月号~1979年10月号)&7代目(1985年4月号~2000年6月号)の永きにわたり勤め上げた名物編集長。風貌も含め、愛されるキャラクターであり、業界内外に顔が広い「名物編集長」であるところは万人が認める。が、名編集長かと問えば万人が苦笑で答える。悠々自適の隠遁生活中かと思えば、二輪業界の社会的地位を向上すべく老体にムチ打って今なお現役活動中(感謝)。ちなみに現在の肩書き?「古・編集・長」は「こ・へんしゅう・ちょう」ではなく「いにしえ・へんしゅう・おさ」と読んでください。

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