さて千葉県警が一県民に答えた(と言うことは流れから言っても一国民に警察庁が答えた)驚くべき認識下の自転車の最高速度について、こちらが独自にフォローをしておこう。警察はこの質問に的確に答えてはいただけなかったとしか思えないので。

 これに関する法文は以下のとおりだ。

●道路交通法 第二節 速度 第二十二条(最高速度)第一項 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

●道路交通法施行令 第十一条(最高速度) 法第二十二条第一項の政令で定める最高速度のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては六十キロメートル毎時、原動機付自転車にあっては三十キロメートル毎時とする。


※上記、この施行令:政令の中で軽車両:自転車に関する規定がないのだ! それが自転車の最高速度は「無制限」という解釈を生んでいる。事実ネット上では「自転車は歩道では車道寄りを徐行して進行とあるが、車道では制限速度が規定されてない、無制限」という情報が乱立している。

●車両とは:道路交通法第二条(定義)八項で定められていて、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。軽車両とは同十一項で定められていて、自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む)とされている。つまり自転車は自動車や原動機付き自転車とは異なる軽車両というカテゴリーなのだ。


 以上、自転車の最高速度は、制限速度標識に車種が表示されていない道路では「車両」としてそれに従う。標識がない場合は自動車と同じ60km/hが最高速度になると解釈されている。おいおい、そこでは原付自転車は自転車よりはるかに遅い30km/hが最高速とされているわけで、自転車が60km/hまでOKというのは、おかしいだろう! また、制限速度標識に「高・中速車」などと表示されている場合は、自転車は制限されていないことになり、つまり理論的には無制限の速度で進行して良いことになる。

 今年10月、警察庁は全国の警察に、違反を重ねる自転車利用者の摘発強化を指示している。自転車は車両なんだから車道走行が原則という指導を各都道府県警察が強力展開しているその渦中で、前出記事のインタビューで警察庁の石井交通局長は――

「自転車は『車』との意識を持ってもらうことが目的で、スピードを出す人以外は従来通り、歩道走行で構わない」と強調した。

(11月21日読売新聞記事から抜粋)。

 歩道なのか車道なのか、これを読む限りわからなくなるのは私だけだろうか。前記した「前かごに荷物がある場合は歩道走行可」という同局長の発言が混乱に拍車をかける。現場はどうしたらいいのか。歩道を走っていて警官に「車道走行を」と言われた時、「前かごに荷物があるよ。その場合は歩道を走っていいと警察庁の交通局長が言っているよ」と掲載紙を見せられた現場・最前線の警官はどう対処すればいいのだろうか。

 1人1人が疑問を持って問い合わせても統一された内容でズバッと警察は答えてくれない(答えられない、答えようとしない=警察庁・広報室)。警察庁はこれに関して「ホームページに『自転車対策に関するQ&A』を載せている」と言う。見たら、各メディアで伝えている情報以下の、具体性に欠ける、非常におそまつなものだった。第一、見解が統一されていない問題が指摘されている中での見切り自転車対策だ。まず、警察庁はほとんどの問題に答える基本となる「ガイドライン」を作成すべきではないのか(有識者の検討を経て、2012年3月(遅い!)にも出されるという情報もあるが)。そして疑問のある国民に対してキチンと対応する「窓口」をもうけるべきではないだろうか。繰り返すが、肝心の警察庁に聞いても、答えてはくれないのだから。


つまり迷走しているのは警察なのだ

 そして。実はメディアを通して報じられるようになった自転車専用レーン設置に関して、二輪車、特に原付一種が深く関わってくるのではないだろうか。

 すでに「自転車レーン/専用車線」設置の社会実験が各地域で始まっている。私が住む千葉県船橋市でも社会実験を開始した。そこで、自転車レーンが設置された場合、車線の左端を30km/hで進行することが決められている、しかも二段階右折も求められている“街の足”原付一種はどこを走ればいいのか。自転車レーンの外側だと1車線しか残っていない場合は、ただでさえ狭いスペースに自動車と混合通行でせめぎ合うことになり、原付一種の危険性が増すのではないか――などを船橋市役所・道路建設課に発信した。

自転車専用レーン
自転車専用レーン

 バイク事故が増えた1980年代は一部地域でバイク専用通行帯も設置されたが、結局は違法駐車帯と化した。その教訓? からか一部では線を引くだけではない整備された自転車専用レーンも設置されているが、まだまだ例外的。そして原付はもちろん蚊帳の外。写真は国道14号線亀戸駅前付近。

 そういう二輪車側の観点からの意見はなかったらしく、早速記録に取って、検討する場合、市民である私名の意見として取り上げることを約束してくれた。ちなみに船橋警察署は「原付~? そんなこと誰も言って来ません。自転車レーンの外側を走ることになりますね。狭められたレーンの中での混合交通で危険が増す? (原付は免許のない自転車と違って)免許を持って乗っているんですから(決められたとおり乗っていれば危険じゃない? あるいは仕方ない?)」。以下発言は「原付使用者は免許持って乗っているんですから」、意味不明の、これ一辺倒で終始した。

 また、バスレーンと自転車レーンとの設置関係(どちらも車道左端)と原付一種の走行空間については、どこも(何も答えない警察庁は除く)明解には答えてくれなかった(これも警察庁の方針・指示が定まらず、答えられない?)。ただし、そういう各専用レーンを他車両が走って良い場合は「標識で示す」という答えはあったが…。

 車道左端空間。バス専用レーンがあり、自転車専用レーンがあり、「車道左端を最高速30km/hで進行」の原付一種はどこを走れと言うのだろうか。未だ交通体系での各車種の位置づけが明示されていない、この国!

 そう、自転車レーン設置促進…そんな今だからこそ、それでは原付一種の走行(規制)はどうしようかという論議が起こっていいのではないか。二輪車/ライダー/業界側からも声を発信すべき時だと思うが、いかがだろうか! 黙っていては行政官僚:藁人形が、せせら笑い続けるのは目に見えている。

ケイ

 なお、筆者の事情でこの『裏庭の徒然草』の更新に間が空いてしまったことをお詫びします。今後も更新は不定期になることをお許しください。

古・編集・長 近藤健二
古・編集・長 近藤健二
ミスター・バイク本誌の編集長を4代目(1977年9月号~1979年10月号)&7代目(1985年4月号~2000年6月号)の永きにわたり務め上げた名物編集長。風貌も含め、愛されるキャラクターであり、業界内外に顔が広い「名物編集長」であるところは万人が認める。が、「名編集長」かと問えば万人が苦笑で答える。悠々自適の隠遁生活中かと思えば、二輪業界の社会的地位を向上すべく老体にムチ打って今なお現役活動中(感謝)。ちなみに現在の肩書き?「古・編集・長」は「こ・へんしゅう・ちょう」ではなく「いにしえ・へんしゅう・おさ」と読んでください。

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