タイトル
オーストラリアでも“HACHI-TAI”は有名だよ。そんな大きなレースに出られることになってレース前はすごく緊張していたよ

今年のYOSHIMURA SUZUKI Racing Teamは、第一ライダー加賀山就臣を中心としたマシンセッティングを進め、レースウィークの走り出しから予選まで、すべてのセッションでトップタイムをマーク。決勝もポールポジションから通算5勝目を狙っていた。加賀山、青木宣篤の両選手に続き、第2ライダーとしてこのチームに新たに加わったのが、ジョッシュ・ウォーターズだ。

2009年のオーストラリアのスーパーバイク選手権ルーキーイヤーでチャンピオンを獲得。今年は、YOSHIMURA SUZUKI Racing Teamからスーパーバイク世界選手権に参戦しているライダーである。今回、レース終了後に、ジョッシュ選手へのインタビューを敢行した。


初めての日本、初めての鈴鹿ながら、7月上旬の合同テストから積極的に走りこんでいるが、鈴鹿についての印象はどうだったのだろう?

ジョッシュ「シケインのようなコーナーがオーストラリアのサーキットにはないんだ。だから最初はすごく戸惑ったよ。日本人ライダーはみんなあそこを抜けるのがすごく速いんだ。そこが悩みの種だった。もちろん、コースは最高。僕は東コースが得意だよ。特に1コーナーからダンロップコーナーにかけてが大好きなんだ」

8耐参戦前の、鈴鹿8耐のイメージはなにかあったのだろうか? そもそも知っていたのだろうか?

ジョッシュ「オーストラリアでも“HACHI-TAI”は有名だよ。僕も2001年からのHACHI-TAIは毎年見ているんだ。そんな大きなレースに出られることになってレース前はすごく緊張していたよ」

ヨシムラというチームの印象はどうだったのだろう。また、マシンについて、特に加賀山選手が中心となってのセットアップのマシンはどうだったのだろう?

ジョッシュ「スーパーバイクも同じチームだし、チームの動きも前からわかっていたから問題はなかったね。ヨシムラのマシンはタイヤとのコンビネーションもいい。他のライダーも乗るマシン、という状況は今まで経験のしたことのないものだった。妥協が必要であることはわかっていたし、偏見なく取り組もうと思っていた。でもマシンに対して3人とも同じようなフィードバックがあって、加賀山さんにセットアップを安心して任せられたんだ」

プロフィール
離されることなく常に玉田誠選手の後ろに張り付いていた走りの真相は!?

今回鈴鹿8耐決勝では、2回のスティントを走行している。1回目の走行は第2スティント、26周目から。トップはハルクの玉田誠選手、ジョッシュは2番手で走行を続ける。清成龍一選手が転倒したことによるマシンの確認作業でピットアウトが遅れたTSRの秋吉耕佑選手が後ろから追いつき、33~34周目にこのトップ2台をパス。その後秋吉・玉田両選手のバトルが繰り広げられるも、ジョッシュはしばらくその後ろにぴったりとついて走る。そして50周目、玉田選手が秋吉選手に離され始めると、すかさずこれをパスして、秋吉選手へ追いつく。そして予定された28周を走りきりピットイン。最初のスティントを終了した。

日本の、いや世界の名門中の名門チーム、ヨシムラで鈴鹿8耐を走ることとなったジョッシュ。スーパーバイク世界選手権で共にスポット参戦している関係から、すでにチームに溶け込んだ雰囲気。エースの加賀山、ベテラン青木とのトリオとなった。
日本の、いや世界の名門中の名門チーム、ヨシムラで鈴鹿8耐を走ることとなったジョッシュ。スーパーバイク世界選手権で共にスポット参戦している関係から、すでにチームに溶け込んだ雰囲気。エースの加賀山、ベテラン青木とのトリオとなった。

ジョッシュ2回目の走行は、第5スティント、109周目から。トップで戻ってきた加賀山選手を引きついで、トップでコースインしたジョッシュ。しかし、同時にライダー交代したハルクの玉田選手にアウトラップで前に行かれてしまう。その後はテール・トゥ・ノーズで2番手をキープ。そして、122周目、またしても秋吉選手に2台ともパスされ、ジョッシュは3番手へ。すぐさま124周目のデグナーで玉田選手を追い抜いて2番手へ浮上。137周まで走ってこの走行を終える。

つまり走行2回ともに同じような展開が繰り返されたわけだ。バックマーカーを何台も何台もパスしながらも、離されることなく常に玉田誠選手の後ろに張り付いていた。もちろん、タイミングによっては、玉田選手をパスできるチャンスも幾度となくあったはずだ。しかし、スティント終盤に秋吉選手が2台を抜いてトップに立つと、前を行く玉田選手を軽くパスしていく走行を披露した。たいへん気になる走り方に見えたがこれについてジョッシュは?

634玉田選手、そして玉田選手と♯11秋吉選手のトップ争いから離されることなく走行。
♯634玉田選手、そして玉田選手と♯11秋吉選手のトップ争いから離されることなく走行。しかも2度、同じ展開が見られた。「トップに食らいついていくこと」が、ジョッシュに対するチームからのオーダーだった。24歳のオージーは、その仕事を冷静かつ大胆にやってのけた。撮影:楠堂亜希

ジョッシュ「チームからのオーダーは、落ち着いてクラッシュせずにリーダーについていけ、というものだった。離されないこと、でもリスクは負わない、ということ。ずっと玉田選手の後ろについていた。自分が速いところもあれば、玉田選手の速いところもあって、玉田選手を抜くのは非常に難しかった。抜きにくいからリスクを負うことはない、ということでついていったんだ。秋吉選手が前に出てから? 自分の仕事がトップに食いついていくこと、だったので、ちょっと無理して玉田選手を追い抜いただけだよ」

淡々と答えてはいるものの、チームの要求した難題を、初の舞台で、そこまで冷静かつ大胆にやってのけたのだ。24歳ながらレースキャリアがすでに20年近いだけに貫禄も窺うことができる。今回の鈴鹿8時間耐久で発見したことはあるだろうか?

ジョッシュ「シケインがうまく走れるようになったよ。一方で、アウトラップを速く走るのは難しかった。2回目のスティントでもトップでコースに戻れたけれど玉田選手に抜かれてしまった。フレッシュタイヤでどこまでアグレッシブにいけるのか、これを課題として持ち帰って今後に活かしたいと思っているよ」

この若者の今後の活躍に期待したい。


第34回 鈴鹿8時間耐久ロードレース

(2011世界耐久選手権・第3戦) 2011年7月31日決勝
順位No.チームライダーマシン周回数
1 11 F.C.C. TSR Honda 秋吉耕佑/伊藤真一/清成龍一 ホンダ 217
2 12 ヨシムラSUZUKIRacingTeam 加賀山就臣/J.ウォーターズ/青木宣篤 スズキ 217
3 634 MuSASHi RT HARC-Pro. 高橋巧/玉田誠/岡田忠之 ホンダ 217
4 99 BMW MOTORRAD FRANCE 99 S.ジンバート/E.ナイゴン/D.カドリン BMW 212
5 01 エヴァRT初号機トリックスターFRTR 出口修/芹沢太麻樹/武石伸也 カワサキ 211
6 3 クラウン警備保障RACING 浜口俊之/北口浩二/渡辺一馬 ホンダ 210
7 94 YAMAHA RACING FRANCE GMT94 IPONE D.チェカ/M.ラグリブ/K.フォレイ ヤマハ 210
8 999 テルル・ハニービーレーシング 岩田悟/関口太郎/野田弘樹 ホンダ 210
9 1 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM V.フィリップ/A.デラール/酒井大作 スズキ 208
10 104 TOHO Racing 広島デスモ 山口辰也/國川浩道/江口謙 ドゥカティ 206