SUZUKI Bandit1250F ABS Shinsyu Midashi スズキ株式会社

二つ目の長いトンネルを越えると高速道路は四方を山に囲まれた盆地に入った。

そこを抜けると道は次第に上り勾配になる。

この季節が好きだ。時間と距離だけでは表現できないが、走るにつれて街の秋から晩秋の里山、そして標高を稼いで高原に行けば、秋の景色のままどこかに冬のしっぽが掴めそうな気がする。

むき身のバイクだからこそ、体ぜんたい楽しむ季節のグラデーション。1年でも濃厚なツーリングシーズンの到来だ。

途中、休憩のために寄ったパーキングで空気の変化を実感する。再び走りインターをグルッと回って高原に向かう道へと降りる。

里山を抜けるその道の両脇で夏に盛大に揺れていた稲穂は刈り取られ、独特の干し方で積み上げられている。遠くでたき火の煙が空の低いところにたなびく。秋らしい。

次々目に飛び込む風景を吸い込むように走る。乾いた田んぼの土の匂い、雑木林の針葉樹の匂い、酪農でもしているのだろうか、かすかに牛小屋の匂いも混ざる。道端にあった落ち葉がハラハラハラ、とミラーのなかで翻った。

こんな風景はいくらYou Tubeを探してもない。匂いと風が混ざった生放送にかなうものはないのだ。

午後3時を回るとあたりの空気はぐっと密度を増し温度を下げてきた。ジーンズ越しに感じる冷気はこの季節一番の冷え込みだ。
午後3時を回るとあたりの空気はぐっと密度を増し温度を下げてきた。ジーンズ越しに感じる冷気はこの季節一番の冷え込みだ。
紅葉と黄葉の競演に思わず引き返してみる。夏、足こぎスワンで賑わう湖面も冬の到来を待つかのような静かさだった。
紅葉と黄葉の競演に思わず引き返してみる。夏、足こぎスワンで賑わう湖面も冬の到来を待つかのような静かさだった。
尾根が重なり合う壮大な風景が広がる。そんなカーブを綺麗に切り取りながら走るバンディット。
尾根が重なり合う壮大な風景が広がる。そんなカーブを綺麗に切り取りながら走るバンディット。

冬になれば雪が降る地方の道は、適度なカーブが連続する。走ることが楽しい。スムーズな4気筒はさほど回さずともたっぷりと充実感を味わえるし、もっと遠くまで行こうと欲張りな気分を満たしてくれる。

大きく開ければもちろん強烈な加速を与えてくれるが、すぐそこまで迫っている季節の国境線を探す今回のツーリングをせかすことも無い。

バンディットはもっとヤンチャだと思っていたが意外な発見。エンジンが“メンコイ性格”なのだ。適度な存在感の音と振動。それがある時、躍動感がとろける瞬間がある。並列4気筒の透明感だ。フゥ~っという排気音をいつまでも耳にしていたくなる。

フルカウルと、ルックスを旅人にしている三つのラゲッジキャリアを付けても動きに重たさがない。これは嬉しい。キャンプ道具まで詰め込んだ夏のバックパッカーにも似た、慌てず急がず、着実にというような冒険旅行馴れした出で立ちを醸し出しながらも、バンディットらしい身軽さに曇りはない。

静かな中に水の流れる音。しばしバンディットの旅姿に見とれてみる。何でもない瞬間が織りなす今日の重みが少しずつ育つような気分を楽しむ。
静かな中に水の流れる音。しばしバンディットの旅姿に見とれてみる。何でもない瞬間が織りなす今日の重みが少しずつ育つような気分を楽しむ。
澄んだ池に映る色づいた景色。芸術の秋、というより秋は芸術の才能がすごい。こうして停まっただけで絵にしてくれるのですから。
澄んだ池に映る色づいた景色。芸術の秋、というより秋は芸術の才能がすごい。こうして停まっただけで絵にしてくれるのですから。

湧き水が汲めることでお馴染みの場所に今日はクルマが一台もいなかった。その先のカーブを5分ほど走ると標高1700メートルの場所にたどり着く。ちょっと斜めで錆びた標識はいつもそこで風景に負けじと働いている。

その峠から小さな湖に向かう。紅葉の赤さと対象的に黄色に葉を染めている木もある。唐松の太い幹に巻き付いたツタの葉は真っ赤だ。秋なのにどこか一足速いクリスマスだ。

その森を抜けると景色は一気に開けた。丘の中を道が進む。緩やかにアップダウンとカーブの連なりとなって楽しめるその道の途中から、遠くに富士山を眺めることが出来た。

あれこれと走り回り今はもう午後3時半。グローブの中の指先が冷たくなってくる。インナーを外している秋冬のジャケットの袖口から冬のしっぽが入り込んでくる。寒い。

うっすらピンクに染まり始めた空。こんな日は1年に1度楽しめるかどうか。まさにタイミングを探す冒険のようなもの。
うっすらピンクに染まり始めた空。こんな日は1年に1度楽しめるかどうか。まさにタイミングを探す冒険のようなもの。

例えば日帰りでも、山の稜線を眺めながら高原で落陽を楽しむとすれば、気温はあっという間に10度を割り、道端に設置された「只今の気温」計が零度近くまで下がる。秋冬のジャケットやフリース一枚をなんの気兼ねもなく放り込める積載性がツーリングのスパイスになっている。

こうしてたっぷり秋を楽しみ今年も冬との国境線を眺めた気分になれた。一日は終わろうとしている。東京まで2時間。季節を逆にたどりながら喧噪の中へと向かった。相変わらずバンディットのエンジンは3000rpmプラスでフゥ~っと解け合うような心地よさのままで……。

SUZUKIバンディット1250F ABS カラー:オールトグレーメタリック 価格:1,123,500円(税込)
SUZUKIバンディット1250F ABS カラー:オールトグレーメタリック 価格:1,123,500円(税込)
撮影車両には、ツーリングスクリーン(21,000円)、トップケース(18,900円)&サイドケース(52,500円)などの用品を装備している(ケースには別途キャリアが必要)。http://www1.suzuki.co.jp/motor/gsf1250fal1/index.html
撮影車両には、ツーリングスクリーン(21,000円)、トップケース(18,900円)&サイドケース(52,500円)などの用品を装備している(ケースには別途キャリアが必要)。
http://www1.suzuki.co.jp/motor/gsf1250fal1/index.html
西日を受けた山襞の木々がくっきりとした色合いを見せる。途中、一休みしたドライブインでお土産を買う。そこの女性店員が「一昨日から急に夜が冷え込んで、高い所は色が焼けたようですね」と教えてくれた。確かに標高1800メートルのその場所は褐色も混じり始めた。でも里山は緑も多く秋のグラデーションを色だけでも楽しめる最高の瞬間が今まさに進行中だ。
西日を受けた山襞の木々がくっきりとした色合いを見せる。途中、一休みしたドライブインでお土産を買う。そこの女性店員が「一昨日から急に夜が冷え込んで、高い所は色が焼けたようですね」と教えてくれた。確かに標高1800メートルのその場所は褐色も混じり始めた。でも里山は緑も多く秋のグラデーションを色だけでも楽しめる最高の瞬間が今まさに進行中だ。

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