ヤマハがEC-03を発売開始

ヤマハから「パッソル L」以来となる約5年ぶりの電動バイクの新製品が登場した。
それが「EC-03」(イーシーゼロスリー)だ。

こちらの動画が見られない方はYOUTUBEで直接どうぞhttp://www.youtube.com/watch?v=yx4fqjWYVvU

EC-03はプラグイン充電方式。充電ユニットが車体に組み込まれているので、電源があれば外出先でも充電が可能だ。コードの長さも十分確保されているので、充電場所にも不都合はないだろう。なお、電源はアース付コンセント(3穴)が推奨されている。
EC-03はプラグイン充電方式。充電ユニットが車体に組み込まれているので、電源があれば外出先でも充電が可能だ。コードの長さも十分確保されているので、充電場所にも不都合はないだろう。なお、電源はアース付コンセント(3穴)が推奨されている。
モーターはインホイールタイプコントロールユニットと共に新設計となり、従来モデルに対し10~15%の低速時のトルク特性向上を果たす。バッテリーは三洋電機製の新開発50Vリチウムイオン。低速域での出力特性にも貢献している。
モーターはインホイールタイプコントロールユニットと共に新設計となり、従来モデルに対し10~15%の低速時のトルク特性向上を果たす。バッテリーは三洋電機製の新開発50Vリチウムイオン。低速域での出力特性にも貢献している。
ポップアップ式ロックのシート下部には充電ユニットが収まる。コードもきれいに巻き取れる設計だ。前方にはワイヤー式のヘルメットホルダーがある。ユーティリティに優れるコンビニフックも装備されている。
ポップアップ式ロックのシート下部には充電ユニットが収まる。コードもきれいに巻き取れる設計だ。前方にはワイヤー式のヘルメットホルダーがある。ユーティリティに優れるコンビニフックも装備されている。
バックライトで鮮明な高機能デジタル液晶メーターを採用。スピード、オド&トリップ、バッテリー残量、運転モード(標準/パワー)などを表示。4桁の暗証番号を設定できる盗難抑止装置も備わる。
バックライトで鮮明な高機能デジタル液晶メーターを採用。スピード、オド&トリップ、バッテリー残量、運転モード(標準/パワー)などを表示。4桁の暗証番号を設定できる盗難抑止装置も備わる。

※ヤマハ EC-03の車両詳細は「新車プロファイル2010」でご覧ください。

名称こそ、2005年に発売したEC-02の後継機種のように思われるが、形を見るとおり、そのものずばり2002年に登場したエレクトリックコミューター「パッソル」、2005年の「パッソルL」の進化版といえる。

EC-03という名称については、電動バイクであること、EVであることを広くアピールし、なおかつヤマハはすでに電動バイクへ早い段階から取り組み、すでに約5000台の実績を積んできたその歴史も表現できる、としている。一方車両としては、趣味性の高いEC-02よりも、時代の要請に合うシティコミューターの在り方、そして、より多くの人に受け入れられる形としてパッソルのコンセプトを進化させる、という考えで進んでおり、そこでネーミングの不一致が生じているようだ。しかし、発表直後から反響は大きく、ヤマハの電動バイクの歴史を知らない層にとっても、広く受け入れられ、このネーミングについては成功であったといえよう。

さて、実際の車両だが、先のパッソル、パッソルLと車両基本的な構造は同じで、バッテリーはシートの下、モーターは、リアのホイール内に超薄型のユニットを搭載したインホイールモーターで、駆動する。バッテリー、充電器、メーター、コントローラーを統括で管理・相互制御して簡便な操作性と滑らかな走行を実現するYMCS(ヤマハ・ミューチュアル・コミュニケーション・システム)がその特徴。

今回の大きな進化は、2つ。充電器を備えたプラグイン(コンセプトから直接充電できる)方式を採用し、それまでのバッテリー交換式は廃止となっていること、そして、バッテリーのハイボルテージ化、である。

プラグイン化によって、シートバックに充電器を収納するスペースが新設され、シート下には2mの充電コードが収納されている。また、交換式を採用せず、取り外すことを前提としなくなったため、バッテリーの重量増となっている様子。スペック表で、パッソルと比較すると、重量は45kg(パッソルLでは47kg)だったが56kgと10kg近く増えている。これは、バッテリーと充電器の増加分と見られる。

3サイズでは全長×全幅×全高:1,565×600×990mmであり、パッソル(同1,530×600×995mm)と比較しても、大きさはそれほど変わらず、エレベーターへも持ち込めるコンパクトさはキープ。しかし、ホイールベースは、1,080mmとパッソルに比べ40mmも長くなっている。この重量増を受けて、ホイールベースを長くし、直進安定性を高める措置が取られたといえる。

エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーは、50V(パッソルでは24V)になった。これにより、出力・トルクともに向上。最大トルクで言えば、より低回転で発揮されるようになり、モーターのトルク性質をよりリニアに発揮する。

バッテリーはパッソルLよりも10%容量アップを果たしているが、充電時間は従来と同じ6時間としている。1充電での走行距離は30km/h定地走行モードで43km。通常の使用では25kmほどだろう。気になるバッテリーの劣化であるが、500回の充電で70%ほどの能力になると見込んでいる。使用環境によって大きく異なるので、一概には言えないが、バッテリーのスペックからして、これは少しシビアに見た数字と言えるだろう。

誤発進を防ぐため、キーシリンダーでONをセレクトした後、メーター下にあるスイッチを押すという行為が必要。実際の走行には、ノーマルモードとパワーモードが選択できる。パワーモードはスペックどおりのパワーとトルクを発揮する。ノーマルモードは、電流量を抑え航続距離を延ばすモードで、時速30kmでリミッターが作動する。ちなみに、このEC-03の最高速度は43km/hとなる。もちろん、追い風であったり坂道などの条件で、この速度も変化はする。

実際に走り出すと、低速でのトルク感が非常によく、フロントの軽さが気になるが、リア側の重さも感じない。回生ブレーキを採用していないので、アクセルオフでの挙動も自然。モーターの駆動音がアクセルに伴う形で大きくなるが、モーター音はヘルメットをかぶって実際に走行してしまうとほとんど聞こえない。

国の補助金(経済産業省のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金)は、2万円。この額を大きいと見るか小さいと見るかは、人それぞれだが、パッソルでは5万円出ていたことを考えると、EVの普及時代になったということか。

ちなみにこの2万円というのは、値引き無しで購入した場合なので要注意。また、この国の補助金以外に地方自治体でも、独自に補助金を出す事例が増えているが、現在のところこのEC-03については、まだ何も予定されてはいない。

ヤマハもさまざまな普及活動に取り組んでいくようだが、二輪業界としても、こういったクリーン・モビリティの普及促進に更なる努力を期待したい。(レポート:青山 義明)

<諸元>
■EC-03 主要諸元■
●全長×全幅×全高:1,565×600×990mm●ホイールベース:1,080mm●車両重量:56kg(バッテリー装着時)●航続走行距離:43km(30km/h定地走行時)●モーター形式:交流同期●バッテリー形式・メーカー:リチウムイオン電池・三洋電機製●充電方式・時間:普通充電約6時間で100%充電

パッソル&パッソルLに対し充電ユニットが加わった分、追加されたテール部。1977年登場の初代パッソルを彷彿するという声も。しっかりとしたグリップも備わり、女性でもスタンド掛けや取り回しが楽になる。
パッソル&パッソルLに対し充電ユニットが加わった分、追加されたテール部。1977年登場の初代パッソルを彷彿するという声も。しっかりとしたグリップも備わり、女性でもスタンド掛けや取り回しが楽になる。
超薄型パワーユニット「YIPU」。後輪ハブ部にモーター、コントローラー、減速機、ドラムブレーキがまとめられ、アームと一体設計されている。フレーム、ホイールはアルミ製。タイヤは前後60/100-12という特殊サイズのチューブタイプとなる。
超薄型パワーユニット「YIPU」。後輪ハブ部にモーター、コントローラー、減速機、ドラムブレーキがまとめられ、アームと一体設計されている。フレーム、ホイールはアルミ製。タイヤは前後60/100-12という特殊サイズのチューブタイプとなる。
本誌編集部員の青山とは似て非なる肉食系ジャーナリスト。スーパーGT某レーシングチームのチームマネージャーも務めたこともあるほどの4輪業界ではインサイド通。2輪は特に近未来系の電動バイクやハイブリッドバイクにめっぽう強い。美大を卒業後なぜか仏壇屋さんに就職!? 北欧メタル好き。誕生日には必ずケーキを食べる。甘いものと肉とさくら水産が大好き!? のとてもせっかちな名古屋人。(友人談)
●プロフィール
青山義明(あおやま よしあき)
本誌編集部員の青山とは似て非なる肉食系ジャーナリスト。スーパーGT某レーシングチームのチームマネージャーも務めたこともあるほどの4輪業界ではインサイド通。2輪は特に近未来系の電動バイクやハイブリッドバイクにめっぽう強い。美大を卒業後なぜか仏壇屋さんに就職!? 北欧メタル好き。誕生日には必ずケーキを食べる。甘いものと肉とさくら水産が大好き!? のとてもせっかちな三河人。(友人談)
身長173cmのモデルが跨った状態。とにかくスリムの一言。軽い車体もあって、小柄な人でも何の不安もないはず。全長も1565mmとコンパクトなため、高層住宅の一般的なエレベーターでも載せられるとか。
身長173cmのモデルが跨った状態。とにかくスリムの一言。軽い車体もあって、小柄な人でも何の不安もないはず。全長も1565mmとコンパクトなため、高層住宅の一般的なエレベーターでも載せられるとか。
身長173cmのモデルが跨った状態。とにかくスリムの一言。軽い車体もあって、小柄な人でも何の不安もないはず。全長も1565mmとコンパクトなため、高層住宅の一般的なエレベーターでも載せられるとか。
身長173cmのモデルが跨った状態。とにかくスリムの一言。軽い車体もあって、小柄な人でも何の不安もないはず。全長も1565mmとコンパクトなため、高層住宅の一般的なエレベーターでも載せられるとか。
身長173cmのモデルが跨った状態。とにかくスリムの一言。軽い車体もあって、小柄な人でも何の不安もないはず。全長も1565mmとコンパクトなため、高層住宅の一般的なエレベーターでも載せられるとか。

ほんのわずか数十メートルのテスト用コースを2周しただけですが…

動力が電気となるバイク(ヤマハでは“エレクトリック・コミューター”と呼ぶ)だからと言って、操作方法は通常のバイクと大きく異なることはない。キーを右に回して電源をON。液晶メーター右下に“PUSH”のサインが出る。誤発進を防ぐためのもので、この状態ではまだ走ることはできない。メーター下に3つ並ぶスイッチのいずれかを表示通りPUSHしてやる。セルスタータースイッチを押す過程のようなものだろう。メーターに速度やトリップなどが表示され、セグメントバーがクルクル回りはじめると発進スタンバイとなる。通常のバイクで言うアイドリング状態というワケだ。

当たり前かもしれないが、発進はとてもスムーズ。電気モーターは立ち上がりトルクが大きいため、発進時のスロットル操作によってはギクシャクすることがあるが、EC-03はとても自然なフィーリング。緻密な制御が行われているのを感じる。

EC-03には「運転モード切替」が備わる。通常の走行は標準モードで、坂道などではパワーモードに選択可能だ。さすがにパワーモードは発進から力強さを感じる。ただし、限られた場所と時間内での試乗であったため、両モード共に伸びやかさを検証するまでには至らず......。

僅か56kgの車体は軽快そのもので、重量バランスも自然。スリム感を出すため、左側ミラーは敢えてオプションとしているという。開けた前方視界はとても新鮮だった。

とても洗練された走行フィールは、もはや未来ではなく現実の乗り物であることを改めて実感。各部の造りやデザインなど、所有欲も満たす1台と感じた。(レポート:高橋二朗)

フロントまわりのデザインはパッソル&パッソルLを踏襲。シンプルで飽きのこない顔だ。左側ミラーはオプションで用意。カラーは写真のホワイトの他、ベリーダークオレンジメタリック(ブラウン)の2タイプが設定される。
フロントまわりのデザインはパッソル&パッソルLを踏襲。シンプルで飽きのこない顔だ。左側ミラーはオプションで用意。カラーは写真のホワイトの他、ベリーダークオレンジメタリック(ブラウン)の2タイプが設定される。
電圧制御が緻密に行われているのか、EC-03の発進は洗練された印象。モーター特有の高周波ノイズもさほど気にならない。パワーモードが追加されたことで、坂道などでもパワフルな走りも生み出す。
電圧制御が緻密に行われているのか、EC-03の発進は洗練された印象。モーター特有の高周波ノイズもさほど気にならない。パワーモードが追加されたことで、坂道などでもパワフルな走りも生み出す。
WEBミスター・バイク末端スタッフ。電動バイクには以前から興味があり、関西の名物レース「ルーツ・ザ・原チャリ」のエレキング・クラス(電動バイククラス)に出場するのが夢。男として非力な部類のタカハシでも持ち上げられるほどEC-03は軽い!
●プロフィール
高橋二朗(たかはし じろう)
WEBミスター・バイク末端スタッフ。電動バイクには以前から興味があり、関西の名物レース「ルーツ・ザ・原チャリ」のエレキング・クラス(電動バイククラス)に出場するのが夢。男として非力な部類のタカハシでも持ち上げられるほどEC-03は軽い!