(ミスター・バイク 2009.12月号掲載)

まんが

山々が紅や黄色に色づきだした、ある週末の早朝。雲一つ無い快晴の空。

お出かけしないと、せっかく用意してくれた神様に怒られそうなほど。

そんな絶好のツーリング日和に、セローに乗った大学生が、紅葉を目指して高速道路を走っていました。

子供の頃から大好きだった釣りのための足に便利だろうと免許を取り、セローを手に入れたのが16の頃。

釣り道具を積んで、川や海へと走り回っているうちに、バイク自体の楽しさに目覚め、今では釣りとは関係無しにツーリングに出かけるほど、バイク乗りとして成長しました。もちろん、普段の足としても使っているので、運転は手慣れたものです。

渓流釣りの季節は終わり、この日は釣り無しのツーリング。

オフロードブーツにプロテクターといった装備に身を包み、林道を散策する予定。紅葉を外からだけでなく、森の中からも楽しもうというわけです。

土日の高速割引渋滞を避けるため、空が白みだした頃に家を出たので、明るくなってからも高速道路はクルマも少なく、快適に走っています。

バイクがセローなだけに飛ばせるはずもなく、時速90キロ程度で、左側の車線をのんびりと走っていました。

その一方。右側の追い越し車線にはトラックとミニバンが走っています。

こちらの2台も飛ばすでもなく、法定速度の時速100キロくらいでセローに並びました。

先行するトラックには工事用の足場や鉄パイプ、パイロンコーンなどが積まれ、どうやらこれから現場に向かうようです。

トラックのドライバーは、楽しげにのんびり走るセローを見て、「こっちはこれから仕事だってのに、バイクで遊びなんてうらやましいやね」などと思いながら、ごく普通に追い抜いていきました。

続くミニバンも、トラックとの車間を取りながら、ごく普通にゆっくりと追い抜いていったのです。

この3車の誰もが荒っぽい運転もせず、飛ばす訳でもなく、のんびりとした運転でした。

危険な要素など見あたらず、3車全てが安全に走行していました。ところが……。

セローを追い抜いたミニバンのお父さんが、何気なくトラックの荷台を見ていた時、それは起こりました。

工事用の荷物を押さえていたロープが、何の前触れもなくフワッと外れてしまったのです。

「あっ! 外れた!」

と思った瞬間、空気抵抗にあおられた足場と鉄パイプもフワッと浮き上がり、落下してきたのです!