Roadhopper Type9i Roadhopper WEB SITE

Roadhopper Type9i

最初は「普通に乗れるのだろうか?」と思った。

ここまで低く地を這うようにたたずんだ大胆な姿はスタイリッシュだけど、その分、走りや操作性など、どこか犠牲になっているのではないかと思ったわけだ。

ところが、どっこい、そんな不安も何のその、乗って走り出すと、かなり普通に運転できた。ブレーキはちゃんと効くし、キャスターが寝ていることもあって直進安定性も良くコントロールしやすい。正直、本当に驚いた。

何より、感心したのは、そのポジション。フォワードコントロールで、ハンドルもそれなりに低い。フォワードコントロールの車両には量産、カスタム車、あわせてこれまで何度も乗ったことがあるが、中には身長170cmのボクでは足が届くのがやっとという厳しいものもあった。

しかしこのRoad Hopper Type9iは、シートに腰掛けたお尻の位置を基準にすると、ペグの位置が高めなこともあり、今の日本人では小柄といってもいいボクでも余裕がある。ロー&ロングのスタイルを構成する低いハンドルバーも、シート座面を基準にすると、実はそれほど低くなく楽に手が届く。

コンパクトなポジションなのだ。これが絶妙だと感じた。フォワードコントロールながら、ステップがちゃんと踏み込めるので、車体を安定して走らせやすい。格好良く乗れることと実用性が両立できている。Uターンでバイクを寝かしてもペグが簡単にガリガリと地面に当たらない、意外とバンク角が深いのも好印象。

リアのサスペンションはリジッドに見えながら、そうではなく、フレーム後端のアクスルを支持する部分が、関節のように動く、「マルチアームサスペンションシステム」と呼ぶ機構を採用している。これが路面の小さな凹凸からのショックを和らげて、当たりがソフトになっている。

この日、並行してリジッドサスのType 2iにも乗った。このバイクも楽しく乗れたけれどサスペンションに関しては、当然なんだけど明らかにこっちの方がショックを吸収してくれて快適だ。リジッドはダメというワケでないからお間違いなく。ただリジッドが飛び跳ねるように通過するところを、少しやさしくいなすのは事実。大きめの凹凸は流石にドンっとショックがくるけれど、あるとなしでは世界が違う。

気になったのは、履いているタイヤが若干角の立ったショルダー形状のものだったので、寝かしていくとあるところからカクっと倒れ込み少しクセがあること。ラウンドした普通のバイクタイヤだったらもっとナチュラルに走れるだろう。もうひとつ、シート下にあるオイルタンクから伸びているホースのクランプに、右フトモモが触れると熱いこと。股を大きく横に開けば気にならなくなったけれど、股の関節がかたい人もいるのでね。

実用的で楽なポジション。フューエルインジェクションを採用しても低回転の粘りが良くクセのないエボエンジン。リジッドより格段に快適な乗り味。このままロングツーリングに行けそうと思った。とても失礼な表現だけど、ちゃんとしたバイクに仕上がっている。

そして何よりカッコイイ! 手を伸ばすと地面に届きそう(届かないけど)と思える低さにシビれた。

(試乗:濱矢文夫)
220km/hまで目盛られた小型のスピードメーターを一つ配置。あとはヘッドライトの後に極力目立たないように左右ウインカー、燃料、オイルの警告灯がつく。
220km/hまで目盛られた小型のスピードメーターを一つ配置。あとはヘッドライトの後に極力目立たないように左右ウインカー、燃料、オイルの警告灯がつく。
こちらの動画が見られない方は、YOU TUBEのサイトhttp://www.youtube.com/watch?v=un8mB9Njz70で直接ご覧ください。
■ロードホッパー概要解説

「ロードホッパー」という車名を聞いてもピンと来ない方は多いかもしれない。アメリカン・カスタムブランド? ハーレーのチューニング・ブランド? いえ、れっきとした我が国産の“新車ブランド”だ。量産基準の信頼性を持ちながらカスタム・テイストあふれるモーターサイクル、ロードホッパーの生立ちには、輝かしいカスタム・バイクの歴史があった。

1990年代より数々のカスタム・バイク・ショーで高い評価を得ていたプロトのカスタム・マシンだったが、「ユーザーの大切な愛車のメインフレームにまで手を加えるという製作プロセスも多く、ある種のリスクを伴うもの」だった。そして2003年、次の領域へ進むためにとったアクションこそが、カスタム・テイストはキープしながら、信頼性や安定した品質を実現するための量産化だった。

ワンオフ製作では不可能なレベルの、試作段階で「実際に壊す」までの安全テストなどを行い、その結果を反映させ二次、三次と試作を繰り返すというプロセスを経て完成したのが新車ブランド“ロードホッパー”だ。

今回試乗させていただいたロードホッパーの最新モデルType 9iは、2008年のミラノEICMAショーにコンセプトモデルとして出品されるや、ヨーロッパ全土から市販化を熱望する声が寄せられたという。革新的なリアサスペンションと「カスタムテイストの量産車」というプロトのコンセプトが高く評価されたのだ。Type9iがロードホッパーの世界戦略車として運命付けられた瞬間だった。

“マルチアームサスペンションシステム”と名付けられた先進のリアサスは、構造的にはモノショックのリンク式スイングアームと考えると分かり易いだろう。無粋なスイングアームの存在を意識させないため、リジッドフレームの内側にさらにフレームに模した細身の鋼管で構成されたスイングアームが存在する。当然それだけでは不足してしまう剛性等を補うために各種のアームを追加した、というイメージだ。一見したところではまさにリジッドで、狙いは充分成功しているといえる。

フロントには、すでにロードホッパーの魅力の一つとなっているスプリンガーフォークが組み合わされる。量産車メーカーとしてのロードホッパーのプライドが、スプリンガーフォークも完全自社設計&メイド・イン・ジャパンを実現させている。

真ちゅう製のフリクションカラーによる減衰効果、長く好調と安全性を維持するコの字支持のロッカーピボット部、サスペンションストロークの最圧縮側に粘りを持たせるバンプラバー、ロードホッパー専用に何セットも試作しながら決定された最適なバネレートなど、カスタム向け部品とはレベルの違ったクォリティを持つフロントフォークだ。

筋肉質なビンテージルックを大切にしながら快適性も犠牲にしないのがType 9i。ちなみに目指したのは“アウトバーン品質”とか。その言葉どおり先ずはヨーロッパで販売され、国内には6月1日から発売が開始されるという。

 

●Roadhopper Type 9i 主要諸元

型式 PRC
全長×全幅×全高 2425mm×795mm×935mm
軸距 1689mm
最低地上高 140mm
シート高 636mm
車両重量 260kg
乗車定員 1名
エンジン型式 GDV
エンジン種類 4サイクル空冷OHV・V型2気筒
総排気量 1449cm3
燃料供給装置形式 フューエルインジェクション
始動方式 セル
潤滑方式 ドライサンプ
燃料タンク容量 約10L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式5段リターン
キャスター角 38°
タイヤ(前・後) 4.50-18・5.00-16
税込車両本体価格 (予価) 3,360,000円
カラーバリエーション ブラックパール/アズキ/アイボリー

Roadhopper Type9i

現在のロードホッパーのラインナップを紹介しておくと、まずはベーシックなType 1iとType 2i、グースネックのリジッドフレームとバルーンタイヤのロー&ロングなType 5i、そしてマルチアームサスペンションをリアに採用するType 9iとなっている。Type 1iと2iは2003年の初期型発売以来熟成を重ねてきたモデルでHD社製1200ccエンジンを搭載。2011年モデルでは車体重量バランスの適正化を図っている。Type 2iがスプリンガーフォーク、Type 1iがテレスコピックフォークを採用。Type 5iはこれぞZEROデザインと呼ぶのに相応しいロー&ロングのルックスを持つモデル。EVO、EVOのオープンプライマリー(クランク軸からミッション軸へ動力を伝えるコッグドベルト部にカバーを着けない仕様)、そしてEVO-Bエンジンの3タイプを用意。Type 9iでもオープンプライマリーがアレンジできる。

Roadhopper Type9i

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