週末はセローで、ほんの少しの大冒険


 何度も言うようだけど、林道を走るということは、発動機の付いた2輪車に乗って走る楽しさに加え、自然の中に入り込んでいく気持ちよさ、それと少しの冒険心。

 

「冒険」という言葉を辞書でひくと「危険な状態になることを承知の上で、あえて行うこと。成功するかどうか成否が確かでないことを、あえてやってみること」と記されている。

 

 人間の文明がここまでこられたのも、「冒険」があったからに違いない。

 

林道を走ると細胞の片隅に隠れてしまった本能が騒ぎ出す。

 

 セロー250の珍道中も今回が最後となった。

 

 向かったのは、有名な秩父市道大滝幹線17号線、通称「中津川林道」である。

中津川林道


 中津川林道は意外にも埼玉県と長野県を結んでいるクルマが通れるただひとつの道。だから4輪車も含め休日は通行車両が多い。

 長野側は舗装されているが、埼玉側は県境の三国峠までダート。基本的に締まっている土でフラットな路面が多い。オンロードバイクで走る人もいるくらい。

 だが、だからと言って、赤子の手をひねるようにカンタンじゃあない。

 場所によってはゴロゴロ石でガレていたり、ワダチが深かったり、段差があったり。ガードレールのない幅の狭い部分(さらに下は崖)も多数ある。

 なめてかかると痛い目に合うかも知れない、特にアッキーは。あははははは。


中津川林道


 ボク(ハマヤ)が初めてここを走った時は、勢いよくカーブを曲がったら、なんとビックリ、道がなかった……。

   三国峠手前で崖崩れにより完全に道がふさがっていたのだ。

  「しぇー!」と叫びながら急停止して事なきを得たが、自然の力に左右される林道は何があるか判らないとあらためて知ったっけ。

中津川林道


中津川林道


中津川林道


アッキーの感想文

 ジョーとの対戦を控え、水一滴すら飲まずに減量中の力石のように、っていきなり何のたとえだか若い読者にはサッパリだろうが、とにかくかな〜りキツい思いをしながらもう何十キロ走ったことか(実際にはそれほど走ってないかも・・・)。

 まあ、相変わらず開け開けで走る命知らずのハマ師匠に無理して追いつこうとせず、自分なりに走れればいいや、ってな感じでどんどん進むと「ホントにここは日本?」と思える大自然のが周りに広がっていった。

 

 も、もしやオレはハマヤ氏にだまされ、薬でも打たれて気がつけば知らない異国に! などというアホらしい妄想をしながら走っていると、とにかく風が気持ちイイ。

 アメリカナイズされているオレは思わずヘルメットを脱いで走りたくなったが、そんなコトすると編集部に怒られるだけでなく、ライター生命も終わりそうだし、なにより頭を割って人生そのものが終わりそうだから断念。

 でも、フルフェイスのシールドを開けるだけでなんか「自然っていいな〜」と思わせるやわらかい空気を味わえた。

 うん、攻めるのもいいんだろうけど、そればっかりに集中してちゃ景色を堪能することはできない。しばしの間はマイペースで景色や匂いを楽しみながら走るのであった。

中津川林道


 中津川林道のダートは長い。そこがいい。

 水たまり、ワダチ、石ころ、セロー250はあらゆるシチュエーションをまったく苦にする気配もみせずにずんずん進む。

 未舗装路を走るにはいろいろなテクニックがあって、それを身につけると走破性は上がり、安全で楽になるんだけど、このダートくらいだったら、それを知らなくてもスロットルを開けているだけで走っていける。

 その良い例が、ボクの後ろからしっかりついてきているじゃないか。

 中津川林道は林道初体験をするにはとてもいいダートだ。

 雑多な日常で精神的に疲れたなら、トレールバイクで土の上を走ってみるのはどうだろう。

 高速道路を疾走するより、汚れて洗濯はタイヘンだけど、それに見合う何かを手にすることができると思う。

 現実からの逃避、「逃げ」ではない。だって「逃げ」は帰ってこないから。

 日常に帰ってくるために森へ行く。贅沢な楽しみだ。 


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