アッキーがキタ
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ミュージシャンになるべく夢抱き上京したバカ編 その11
アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。愛車の1台は写真の750ニンジャというマニアックな一面も合わせ持ち、アメリカン以外のジャンルもほほいのほい。見かけはご覧のようにとっつきにくそうだが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はウソでもない。

 えー、総選挙だか何だかで世間を騒がせているAKBだかSKEだかISO(これは違う)ですが、全くそれらに興味がないオレにとっては何がナニやら。てゆーか、英字3文字と数字組み合わせていくらでもグループ作れるんなら、世界初の諜報組織アイドル『CIA48』とか、んでもってそのライバルグループ『KGB48』とかあって、んでそいつらに宣戦布告するのが『AKD(アルカイダ)48』で、いちばんやっかいな『KCS(北朝鮮)48』とか……、おおっ! そーいえばドイツには昔から国境警備特殊部隊『GSG9』ってのがあるじゃん!! などといつものヨタ話が、今回はヲタク話に花が咲いてしまいました。

 で、今宵お届けするのは、途中で脱線しまくりながらも続いてきた『ミュージシャン編』その11である。で、本コラム初の泣ける(?)話であるっ!!

 読者の皆さんは骨髄バンクってのをご存じだろうか。簡単に言うと白血病の人のため、健康な体の人が背骨の骨髄を提供しようというネットワーク組織なのだが、まあ詳しい話はさておき、ある日、その骨髄バンクのキャンペーンとしてライブが行われた。もちろん、当時まだPANTA氏の付き人であったオレは彼に同行。会場に行き、楽屋へ入ってみると……

「ちちち、CHARがいるっ!」

 まあ若い人は知らんかも知れないが、日本のロックシーンにおいて、CHARというギタリストは(特に40歳代以上の邦楽ロック好きにとって)神様のよーな存在なのである。ビーズのなんちゃらみたいな軟弱モンではなく(あーコレでファンから苦情殺到だな)、骨太でテクニシャンでシブーいギターを弾く御方なのである(最近だと大和ネクスト銀行のCMに出演して演奏してるよね)。

 その他にもミュージシャンは結構楽屋にいたんだが、もうオレはCHAR氏がいるだけで大興奮、しつつもPANTA氏の付き人として来た手前、まさかサインくださいとかはいえるわけもない。

 そんなこんなで(どんな?)楽屋で皆が談笑したりしていると、主催者の人が急に入ってきて、オレの近くにいたCHAR氏に向かってこう言った。

「CHARさん、ボクの知り合いで白血病の高校生がいて貴方の凄いファンなんですが、病状が悪くて今日来れなくて。良かったら電話で声だけでも聞かせてあげてくれませんか」

 そういうと主催者はコードレス電話の子機をCHAR氏に手渡した。すると彼はくったくもないしゃべり方で「おうっ、今日来れなくて残念だったなあ。ホントはライブ観たかっただろうに。そうだ、ちょっと今からやるから聴いてろよ」

 そう言うとCHAR氏はそばにいたオレに「すまん、ちょっと電話持ってて」と言って子機を手渡すと、手持ちのアコースティック・ギターをひょいと持ち上げ、演奏を始め、歌い出したのである! おおおおお!! なんかよーわからんがカッコええっ!!!!

 で、すぐさまそれに同調するかのように、他のミュージシャン達もギターやサクソフォンを合わせてプレイしはじめ、ドラマーの人は机をトンタカし始める。まさにこれぞ最高のギグ! 即興演奏にも拘わらず、さすがはプロばかりの楽屋、そのプレイは素晴らしくまたライブ感も最高である。んでまた、ギター弾いてる時のCHAR氏をわずか1メートルの距離で観れたオレも幸せモンであった。

 そして数分後に演奏は終わり、CHAR氏は再び電話に出た。

「どう、ちゃんと聴こえた? またライブはやるからさ。体元気になったらおいでよ」

 そしてその日、イベントライブは大々的に開催され、多くの観客を沸かせた。それはそれで良かったんだけど、思い返してみると、やっぱあの楽屋でのセッションが今も鮮明に蘇るんだよなあ。

 後日聞いた話によると、電話でCHAR氏のプレイを聴いた少年は、その次の日に亡くなったらしい。まだ若かったのに。でも、最後に自分の大好きなミュージシャンが、自分のためだけに演奏してくれたんだから、きっといい思い出になっただろうね。

 つーことで、今回はバカ話一回お休み、でした。たまにはいいでしょ。


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