オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。

時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ900。

ミーティングレポート 11月は無人島、そしてアメリカ

 11月頭の3連休。今年(以下、年月は原稿を執筆した2013年時点のものです。編集部)もこの季節が来た。しまなみ海道沿い、見近島においてのショットガン・パーティー。
 毎年、夏が終わる頃になるとこの件の問い合わせがくる。その都度、オレは考える。今年やったら何回目になるんだろうか。今年もオレはやるんだろうか、と。思わせぶりな事を口にしながらもオレの腹は決まっている。やるのだ。
 回数的には7、8回だと思う。まぁ何回やったかなんてのはどうでもいい。ただ、最初の頃と今を比較してしまう自分がいる。元々、地元民以外では世間的にほとんど知られていなかった無人島。知る人ぞ知る隠れ家的な超穴場だった見近島も今ではすっかり有名になりカブを始めとするミニバイクで旅するものや四国のお遍路の流れでやってくる人達に多く利用されるようになった。別にその事を嘆いているわけではない。自分で散々宣伝しておいてそんな事を嘆くなんてのは筋違いにもほどがある。それにオレが宣伝せずともネットによる昨今の情報の広がり具合からすればいずれそうなる事はわかっていた。今で言う所の口コミは情報の伝達スピードが一昔前のそれとは桁違いに速い。

 オレは決定した開催日2日前の平日に島入りした。さすがに平日の昼間では利用者は地元の釣りをする人くらいでキャンプする者はいない。だがよく見ると管理棟に併設されている東屋の中に小さなテントがひとつある。あとでテントの主と話をしたのだがどうやら徒歩で旅をしている人のようでその居心地の良さから島の管理の手伝いをしながらこの島に居ついたようだ。この見近島も見方によってはもう無人島とは呼べなくなってきているように思えてしまう。
 10年も前の話になるが各地の公園などでブルーシートのテントが軒を連ねるという光景をよく目にする事があった。景気の悪化でホームレスが溢れかえった時期だ。ついその光景をこの島に重ねて想像してしまう。実際にはあれから出来た規制などによってそんな事態はそうそう起きる事はないのだろう。だが現実的問題がこの島では起きつつあった。利用者が増えた事によるマナー的な規制である。今年のGWや夏などかなりの利用者があったようでその際、様々な問題が発生したらしい。わかりやすい所で言えばゴミや火の問題である。少人数なら起きる事もない問題が大人数になるといとも簡単に起きてしまう。
 これについてはショット・ガンも同様である。ここ数年で参加者の数は増えた。そう、オレの手におえないほどに。参加者の数が増える事自体は正直言って嬉しくもある。元々がこの125cc以下でなければ乗り入れる事が出来ない見近島で行う事によってミニバイクで走る事の面白さやこの島の良さを共有したいと思って始めたことだ。共感してくれる人間が増える事は喜ばしい限りだ。それでも・・・・まぁ色々考えてしまうわけだ。

 しかしなんだかんだ言ってオレは今でもこの島が気に入っている。ショット・ガンはショット・ガンとして色んなバリエーションを楽しむため今回、オレは本祭を間にはさんで4日間この島への滞在を決めていた。その初日は当然のように一人だ。火を焚き本を読んだりしながら自分だけの時間を過ごす。寂しくないかと訊かれればそりゃ寂しいもんだよ。だがそれ以上に孤独と言うのは居心地が良いものでもある。それにこれから嫌でも徐々に賑やかになっていく。そう考えるとこの一人の時間は貴重だ。静かにのんびりと過ごさせてもらおう。


初日は当たり前のように一人で過ごす事に。聞こえてくるのは橋の上を走る車の音と波の音だけ
初日は当たり前のように一人で過ごす事に。聞こえてくるのは橋の上を走る車の音と波の音だけ。

 
 島入りして2日目。オレは昼過ぎまでダラダラと過ごした後、しまなみの島々をうろついた。
 エイプにガソリンを補給するため知人が経営する隣の大島のGSへ行った際、給油していたオレの目の前を黄色いハンターカブが走りすぎた。愛媛のジャクさんだ。会社を早退したか、もしくは休んだか・・・毎年、本祭を待たず先走って島入りし、前夜祭をやる者が何人かいる。大勢集まった中でのドンチャン騒ぎは楽しいがじっくり腰を据えて誰かと話し込むには不向きだ。だがそれも追加して楽しみたいと贅沢を望む者はなんとか時間をやりくりして前日にやってくる。かく言うオレもその常習者だ。
 給油を済ませて島に戻りしばらくするとジャクさんが島に降りてきた。途中、どこかで買出しをしていたようだ。日が暮れるのはまだまだ先だが構いはしない。火を起こし買ってきた惣菜をつまみながら酒を酌み交わす。いや、実に楽しい。サシだからこそ遠慮なく語れる内容の話もある。
 夕方に差し掛かった頃、九州からシゲさん、そして福山のタオくんが共にカブで島に降りてきた。こっちは完全に休暇をとったらしい。この流れでこの日はこの4人で宴会に突入。夜になって登場したイシイちゃんを加えてその楽しさ、面白さは加速していく。今までのオレの経験で言うならばこれくらいの規模が人数的には飲み会の様相で過ごすベストな状態だ。
 翌日、主催としていくらかの気遣いと行動の制限を余儀なくされるオレにとっては今回、これがメインではないかと思えるほどの充実した時間となった。


2日目には4、5人でのジミ宴。この島での楽しみ方はどちらかと言えばこの形が正しい
2日目には4、5人でのジミ宴。この島での楽しみ方はどちらかと言えばこの形が正しい。

 3日目。ここまで好き勝手に時間を過ごしてきたわけだがこれからが本番だ。
 昼近くなった頃から次々にミニバイクが島にやってくる。やはり3連休と言う事もあってショット・ガン以外の利用者もいつもにも増して多い。日暮れ時、その数はピークを迎える事となる。そしてこのショット・ガンではすっかり名物になってしまった、隣の大島在住の矢野氏からの差し入れ、鯛めしの登場だ。今年も二升炊きで持ってきてくれた鯛めしを全員で平らげその後もさらに飲みまくる。こうなるともうお祭りである。賑やかに、そして楽しく。それでいい。バイクの集会はそれがメインなのだと今でも思う。小難しい事はこういう場に持ち込むべきではない。たわいもない事を語り、楽しみ、思う存分はしゃぐ。そんな時間もやはり貴重なのだよ。



今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い


今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い


今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い


今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い


今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い


今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い
今年も色んな所から個性的な仲間が次々とやってきた。やはりこのクラスでは不動の人気を誇るカブの率が高い。

すっかりここでは目玉になった鯛めしの登場。最初の頃は弁当箱で10食ほど持ってきてくれていたものが今では2升炊きで釜ごと。今年も完食です。ご馳走様でした!
すっかりここでは目玉になった鯛めしの登場。最初の頃は弁当箱で10食ほど持ってきてくれていたものが今では2升炊きで釜ごと。今年も完食です。ご馳走様でした!


久しぶりに会う仲間に話したい事は山ほどある。それぞれが酒を片手に笑顔で語り合う


久しぶりに会う仲間に話したい事は山ほどある。それぞれが酒を片手に笑顔で語り合う
久しぶりに会う仲間に話したい事は山ほどある。それぞれが酒を片手に笑顔で語り合う。

 翌日の日曜日。早くも4日目である。
 世間的にも3連休であと1日休みを残している者も多い。次の目的地へ向かう者もいたがやはり帰路につく者が多い。ここまで持ちこたえてくれていた天気も悪くなる方向へ進んでおり昼過ぎには本格的に崩れていく予報だった。
 さて、オレはどうするか。そんな事を思案していると大阪のトモさん親子が一日遅れて島に向かっている事を知らされた。もう一泊、決定である。
 この日は昼を過ぎた頃に到着したトモさん親子とオレ同様にもう一泊を決め込んでいた高知の桜木氏で過ごす事に。祭の後のジミ宴だ。今まで他の集会ではよく顔を合わせていたがゆっくり語ることの出来なかった者同士の貴重な時間になりそうだ。案の定、これまで知る事のなかった意外な共通の人間関係だとか本音で語られる内々でのしがらみなどこういう形でなければ語られる事のないであろう話があふれ出る。
 バイク乗りに限った話ではないが肯定と否定でもめる人間関係。何が良くて何が悪いのか。価値観と価値観のぶつかり合い。そんな深い話が静けさを取り戻したこの島で3人のオヤジバイク乗りによって語られる。
 これは面白いとか楽しいといった次元の話ではない。単に欲求である。まったく人間は複雑だ。中でもバイク乗りは特にややこしい。だがそれがいい。この島での4日間、特に面白いハプニングやサプライズがあったわけではない。だがオレ自身、ひじょうに充実した満足な時間を過ごす事ができた。さて・・・・来年、どうしよ。まぁ来年の事を今から心配してもはじまらない。


*   *   *   *   *

 この11月、オレはもう一件のイベントを控えていた小さいバイクを小さな島で楽しんだ次は広大な場所でのデカいバイクばかりが集まるイベントだ。場所はアメリカ。正確には米海兵隊岩国航空基地。日本国内における治外法権のアメリカ領。Toys For Tots。歴史的には60年を超える米海兵隊の伝統行事であるこのイベントはこの岩国基地でも毎年、年末になると行われる。これまでは12月の第1週目の日曜に開催されていたのだが今年は1週間早い11月の最後の日曜の開催となった。
 基本は基地内でのデイイベント。だがオレはその前日に岩国へ向けて走った。今回のイベントスタッフであるマイちゃんから前夜に基地のバーで呑もうというお誘いをいただいていた。他の参加者がどんな楽しみ方をするのかは知らないがオレにとっては前夜祭こそがメイン。そりゃそうだろう。イベント会場が米軍基地内という特殊な環境であったとしてもせっかく久しぶりに会う仲間とハンバーガー食って日向ぼっこするだけではあまりにも味気ない。


リニューアルした足回りで絶好調な愛機ホーネット。岩国までの高速移動は・・・あんまり面白くなかったな
リニューアルした足回りで絶好調な愛機ホーネット。岩国までの高速移動は・・・あんまり面白くなかったな。

 久々にホーネットを引っ張り出し高速を使って岩国を目指す。200キロにも満たない距離を贅沢に高速移動したものだから予定よりも早くついてしまった。
 マイちゃんは夕方にならないと帰ってこないが早く着いたら勝手に上がってくれていて構わないと言われていたのでオレは彼女の自宅で待機。しかもオレに1時間ほど遅れて到着したコージと世帯主不在のまま酒盛りを始める始末。もうやりたい放題である。しばらくするとマイちゃんも戻ってきたがこの日、キャンプに行っていたようでノーメイクで頭はボサボサ。そして呑んでるオレ達の目の前でメイクをはじめる有様。彼女もやりたい放題だ。

 


この日の基地での飲みメンバー。ブレててよくわからない?はい、基地入場前ですがこの時点でわたくしちょっと酔っておりました
この日の基地での飲みメンバー。ブレててよくわからない? はい、基地入場前ですがこの時点でわたくしちょっと酔っておりました。

 6時を回った頃、オレ達は基地のゲートで彼女の友人達と合流して基地内に入った。
 基地の両替所で3千円ほどドルに換金してバーに入る。日本の居酒屋などで思いっきり呑もうと思うなら心もとない金額だが基地内では十分だ。前回来た時よりもビールは1ドルほど値上がりしていたがそれでも国内のそれと比べたら半値くらいだ。オレ達は言葉の通じない無愛想な店員とぎこちなく通貨とビールをやり取りしながら特大のピザやポップコーンを頬張った。いやいや、実にいいですな。普段、ベラベラとしゃべりまくるオレだが全員にちゃんと言葉が通じない環境と言うのは不具合だらけにもかかわらずなんとも新鮮で面白い。オレ達は100%アメリカンテイストな店で散々に呑み散らかした。

 


基地内のバーでとにかくビール呑みまくり。いやぁ、おかげで腹がパンパンです。デモ楽しいです
基地内のバーでとにかくビール呑みまくり。いやぁ、おかげで腹がパンパンです。デモ楽しいです。

当日のイベント会場には参加者からの多くのオモチャが集められた。これらは後日、施設の子供たちにクリスマスプレゼントとして贈られる
当日のイベント会場には参加者からの多くのオモチャが集められた。これらは後日、施設の子供たちにクリスマスプレゼントとして贈られる。


米軍の無人探査車両は子供に大人気。かなり細かな動作もやってのけていたがこれっていくらくらいするのかね?


米軍の無人探査車両は子供に大人気。かなり細かな動作もやってのけていたがこれっていくらくらいするのかね?
米軍の無人探査車両は子供に大人気。かなり細かな動作もやってのけていたがこれっていくらくらいするのかね?

基地外周のパレードランに出発する参加者達。オレは・・・寒いし気持ち悪いしでとてもそんな気になりませんでした
基地外周のパレードランに出発する参加者達。オレは・・・寒いし気持ち悪いしでとてもそんな気になりませんでした。

参加者には海兵隊員がハンバーガーなどを振舞ってくれる。しかし、コイツら肉焼くのがヘタ過ぎ。口に入れたとたん焦げた味が
参加者には海兵隊員がハンバーガーなどを振舞ってくれる。しかし、コイツら肉焼くのがヘタ過ぎ。口に入れたとたん焦げた味が。

チョイ悪うさぎの坂本氏と一年以上ぶりの再会。久しぶりなだけに元気な姿で会えるのはやはり嬉しいものだ
チョイ悪うさぎの坂本氏と一年以上ぶりの再会。久しぶりなだけに元気な姿で会えるのはやはり嬉しいものだ。

 イベント当日の朝、目覚めたはいいが、オレは酷い頭痛に見舞われた。
 昨夜はマイちゃんの自宅に雑魚寝だったのだが戻ってからもコージが土産に持ってきた焼酎で2時過ぎまで呑んでいたせいだ。おかげで指定されていた集合時間に遅れてしまう体たらくだった。調子に乗るとろくな事がない。主催者側の誘導で基地内に入ってからも頭痛は治まらない。完全な睡眠不足からくるものだ。
 基地内のイベント会場ではクリスマスがらみのお祭りだけあって子供たちが多い。それにしてもアメリカ人の子供と言うのは人形みたいで超カワイイ。参加車両は大半がハーレーだが今回は多方面に告知を打ったせいか国産や4輪も多くコブラやフェラーリなんて車両もいた。会場では軍用車両などの展示、またフリーマーケットなんかもあってまさしくお祭りといった感じである。イベントプログラムには基地の外周のパレードランなんかもあり参加者達は思う存分に異文化を堪能していた。
 オレはというとまったくアクティブな気分になれず体調が優れぬままにマクドナルドの倍ほどもあるハンバーガーをかじりながらぼんやりと過ごしたさ。それでも何人ものハーレー乗りの仲間との久しぶりの再会などもあり結構、充実していたよ。

 さて、いよいよ12月に入り2013年もあとわずかだ。仲間との呑みもいいが最後にもうひとっ走り本気で走ってみますかね。ちょっと東京まで・・・エイプで。


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