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第51回『邪魔モノ扱いする…そして取り締まる。バイクのことじゃありません?』


 激増する自転車事故が問題になっていますが、その原因のひとつといわれる、いわゆる“悪質な自転車乗り”に対して、安全講習の義務化を盛り込んだ改正道交法の施行令が20日、閣議決定され、今年の6月1日から施行されることになりました。

 この施行令によって自転車の「危険行為」と定められたのは、信号無視や酒酔い運転など計14項目。警察庁の説明によると、3年の内にこの「危険行為」での摘発が2回以上となると、その違反者には講習を受けることが義務づけられるという。ちなみに予想されるのは、全国で年間数百人程度が対象となる見通しなのだとか。

(1) 法第七条(信号機の信号等に従う義務)の規定に違反する行為
(2) 法第八条(通行の禁止等)第一項の規定に違反する行為
(3) 法第九条(歩行者用道路を通行する車両の義務)の規定に違反する行為
(4) 法第十七条(通行区分)第一項、第四項又は第六項の規定に違反する行為
(5) 法第十七条の二(軽車両の路側帯通行)第二項の規定に違反する行為
(6) 法第三十三条(踏切の通過)第二項の規定に違反する行為
(7) 法第三十六条(交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
(8) 法第三十七条(交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
(9) 法第三十七条の二(環状交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
(10) 法第四十三条(指定場所における一時停止)の規定に違反する行為
(11) 法第六十三条の四(普通自転車の歩道通行)第二項の規定に違反する行為
(12) 法第六十三条の九(自転車の制動装置等)第一項の規定に違反する行為
(13) 法第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反する行為(法第百十七条の二第一号に規定する酒に酔った状態でするものに限る。)
(14) 法第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為

 以上の14項目ですが、道路交通法では具体的にどのように決められているかを見てみると…

■道路交通法
(1)(信号機の信号等に従う義務)
第七条 道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前条第一項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない。

(2)(通行の禁止等)
第八条 歩行者又は車両等は、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはならない。

(3)(歩行者用道路を通行する車両の義務)
第九条 車両は、歩行者の通行の安全と円滑を図るため車両の通行が禁止されていることが道路標識等により表示されている道路(第十三条の二において「歩行者用道路」という。)を、前条第二項の許可を受け、又はその禁止の対象から除外されていることにより通行するときは、特に歩行者に注意して徐行しなければならない。

※注 第十三条の二
 (歩行者用道路等の特例)
 第十三条の二 歩行者用道路又はその構造上車両等が入ることができないこととなっている道路を通行する歩行者については、第十条から前条までの規定は、適用しない。
※注 前条第二項
 (通行の禁止等)
 第八条
 2 車両は、警察署長が政令で定めるやむを得ない理由があると認めて許可をしたときは、前項の規定にかかわらず、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行することができる。

(4)(通行区分)
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
 4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄って設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
 6 車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入ってはならない。

(5)(軽車両の路側帯通行)
第十七条の二  軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、道路の左側部分に設けられた路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によって区画されたものを除く。)を通行することができる。
 2 前項の場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。

(6)(踏切の通過)
第三十三条
2  車両等は、踏切を通過しようとする場合において、踏切の遮断機が閉じようとし、若しくは閉じている間又は踏切の警報機が警報している間は、当該踏切に入ってはならない。

(7)(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
 一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
 二 路面電車である場合 交差道路を左方から進行してくる路面電車
 2 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
 3 車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。
 4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

(8)
第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

(9)(環状交差点における他の車両等との関係等)
第三十七条の二 車両等は、環状交差点においては、第三十六条第一項及び第二項並びに前条の規定にかかわらず、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
 2 車両等は、環状交差点に入ろうとするときは、第三十六条第三項の規定にかかわらず、徐行しなければならない。
 3 車両等は、環状交差点に入ろうとし、及び環状交差点内を通行するときは、第三十六条第四項の規定にかかわらず、当該環状交差点の状況に応じ、当該環状交差点に入ろうとする車両等、当該環状交差点内を通行する車両等及び当該環状交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

(10)(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあっては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

(11)(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一  道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二  当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三  前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
2  前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

(12)(自転車の制動装置等)
第六十三条の九 自転車の運転者は、内閣府令で定める基準に適合する制動装置を備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがある自転車を運転してはならない。

(13)(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条  何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
 ※第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあった者

(14)(安全運転の義務)
第七十条  車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。


 クルマやバイクの免許を持っている皆さんなら、これらの法律を忘れずにきちんと遵守していますよね?

 では、自転車に乗っている方は? 子供の頃に耳タコのように聞かされてきた「歩行者は右、クルマは左」「飛び出すなクルマは急に止まれない」などなど、最低限の身を守るルールは教えられたかも知れませんが、免許を取る機会でもない限り、道交法など知るよしもないと思うのですが。

 歩道での事故やトラブルの多発から、2007年の道交法改正で「自転車は基本的に車道」のルール確認が行われ、まったく交通ルールの知識を持たないままの自転車乗りも車道に押し出されてしまって今に至るわけです。その結果として歩道上での事故は確かに減りましたが、逆に車道での事故の多発や、自分勝手な走りでライダーやドライバーをヒヤヒヤさせる自転車が目に余るようになってます。30km/h制限などという数々の法規制に縛られている原付スクーターなどよりもよほどスピードが出る(出せる)自転車が、交通ルールなどどこ吹く風で爆走しているケースも見られます。

 これまでも問題のある乗り方をしている自転車ライダーには、警察官が“警告書”を交付しているはずですが、その数は一説には年間で200万件以上にものぼるといいます。その内どれぐらいの人間が実際に検挙され、罰せられているのかはわかりませんが、今回の道交法改正にあたって説明された予想摘発者数の数百人単位どころでは済まないだろうということは容易に想像が付きます。また、免許証を持たない未成年者や、身分を証明できる書類を持ってない場合はどう確認するというのでしょうか。自己申告? 違反者を摘発した場合は、氏名、住所などを記載した“調書”を作るというのですが、それはこれまでの“警告書”とは違うものなのでしょうか。そしてそれはどのように管理されるのか、データベース化されるのでしょうか、それを元にどのようにして3年の間に2回目だと判断するのでしょうか、システムを作るのか、等々疑問は尽きません。

 一部の自治体ですでに実施されている独自の“自転車免許”の発行などは、行き着くべくして行き着いた結果なのじゃないでしょうか。国が「危険行為」を取り締まり、そのデータを管理して行くことになるのなら、現在の運転免許証をベースに“自転車免許”枠を追加して、クルマやバイクの免許と同様に管理するのが一番なのでは。そして、違反を摘発したら講習会を受けさせるのはもちろんですが、免許を取る時に最低限の交通ルールを学ぶ講習を義務付けるべきでしょう。幼児用などの自転車はこれまで通り免許無しで乗れるようにして、歩道走行を徹底させる。車道を走る自転車は12歳以上、中学以上から等と区切って、正式に免許を取らせた方が、交通社会の一員としての自覚も育つことでしょうし安全の面からも利点は多いのでは。

 交通ルールを学ぶことが事故の防止につながるのというのは自明の理です。教育はしない、それでいて邪魔だ、危険だと、大型トラックから原チャリまでが道交法というルールの下で利用されている道路に自転車を追いやってしまった、それがこの国の行政の実態なのですね。市民からの問題提起に、自分たちはちゃんと仕事しているという実績を作る、ただそのためだけにその場しのぎの施策を行う。

 かつての「三無い運動」の時もそう。現在のバイクの駐車問題もまったく一緒。ある日を境に、一方的に駐車環境をバイクから取り上げておきながら、駐車監視員などという集金組織を作ってせっせと国庫金を稼ぐ。これでは行政による寺銭稼ぎ、詐欺といわれても仕方ないでしょう。「○○メートル以内に利用できる駐車場が存在しないにもかかわらず駐車違反で取り締まったのは違法」とか、裁判で勝てないものでしょうか。バイクが使われ出した時から駐車場に駐めるのが当たり前という環境だったというのなら取り締まりも当然でしょうが、それまでさんざんバイクを便利に使わせ、その恩恵を受けてきておきながら、一部の阿呆の迷惑駐車で苦情が集まれば、それを口実にどのような事態が起きるかを考えもせずに、掌を返したように全面駐車規制。やっぱり市民の常識では考えられない場当たり政策ですね。

 どう考えたってこんな状況でバイクやスクーターが売れるわけがない。自分の家の敷地から出た瞬間から、一部の公共機関や、理解のある商業施設以外に、生活圏内に合法的にバイクを駐めるところがない。そういうと反論する御仁がいる。「だから駐車場整備に努めているそうじゃないか」、と。その整備している二輪駐車場というのは、駅の近くや繁華街の一角、大きなビルの地下など人の集まるところばかり。それも遅々として進捗していない。それよりも、そんなところは別にバイクじゃなくたって公共交通機関で行ける。いや公共交通機関の方がよほど便利だ。本当に駐車場が必要なのは、以前は「二輪車を除く」などの補助標識で、違法じゃなく合法的に路肩に駐めることができていた、なんということはないそこいらの街の裏通りや、店の脇、住宅街のようなほとんど他の交通の迷惑とならないような場所だ。今やそのような場所も都市圏では一切駐められなくなっている。二輪用の駐車場など皆無、というのにだ。

 自宅のガレージから出発して、観光地までツーリング、途中の高速のサービスエリアで愛車自慢をして、名物でも食って、また一走りして自宅に帰る、それがバイクの使い途。二輪議連様だか何だか知らないが、政治家の皆様はそう思っておられるのだろう。だが、観光道路では自爆してくれる、いい年取った大人のくせに渋滞車の脇を高速のまますり抜ける、仲間ウチでツルんで走ってはクルマのドライバーを威圧する、爆音バイクを俺様流カスタムでございと乗り回す。人間の本性がもろに外に現れてしまうのがバイクという乗り物。そんな今時のバイク、そしてバイク乗りに、若い人達、いやバイク乗り以外の人たちが憧れるわけがない。

 話が飛んだが、「駐車監視員が巡回しているのは、駅やターミナルなどを中心とした駐車違反の多い重点地区を対象としています」って冗談じゃない。駐車禁止と決まってしまった以上、駐車監視員など来ようが来まいが関係ない。閑静な住宅地の路地や、どう考えても交通の邪魔になりそうもない所でも、法は法、守るしかない。バイクを駐めるだけで犯罪者になるわけにはいかない。これぐらいはいいだろうなどと手前勝手な考えで駐められるのは、この“バイクの駐車場難民時代”を生み出した元凶のあんちゃんたちぐらい。少なくとも最低限の遵法精神があるライダーは、そこで途方にくれてしまう。違法駐車させて国庫金を稼ごう、さもなければ「バイクなんて乗るのやめなさい」と画策しているとしか思えないですね。悔しいですが、確かに効果は絶大です。

 ちなみに皆さんのお宅には来客用のクルマの駐車場はありますか。自宅に駐車場が無くても、近くの有料駐車場はすぐに思い浮かぶでしょう。じゃ、二輪駐車場は?

 これが二輪生活の今です…。

(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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