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ホンダ
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 2003年にフルチェンジをおこなったスーパーフォアをベースに、2005年に加わったカウル付きモデル、スーパーボルドール。同時にサイドカバーのスリム化で跨がった時の手強さ感を減少させるなど、多くの見えない箇所がブラッシュアップされた。
 
 たとえばエンジン特性や駆動系の見直しにより、まるでアクセルと後輪が直結したかのように扱いやすいビッグマシンが生まれた。以来、どんなライバルを迎えてもCB1300スーパーボルドールは自信をもって歩み続けてきた。
 
 そして2014年。その変わらぬボディーの中身はさらに進化した。その様子を確認しよう。
 
 その内容は、5速から6速へとなったミッション。エンジンのECUを最適化、そして新デザインのホイールの採用、スーパーボルドールのヘッドライトにはロー、ハイともLEDを採用。それに加え全車ABSが標準装備となった。細かくはギアポジションインジケーターの追加などまだあるが、注目度の高い変更が加えられたのは間違い無い。
 

ライダーの身長は183cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 
 また、従来モデルでは1300スーパーフォア、スーパーボルドールに加え、パニアケース、アップハンドル、ロングスクリーンを装備したスーパーツーリングがラインナップされていた。今回のモデルチェンジでスーパーツーリングはカタログから消えたが、オプションパーツを使って同様の仕様にビルドアップ出来ることになった。また、パニアケース装着を意識し、フレームの剛性バランスを変更したほかスーパーボルドールではマフラーの角度をスーパーフォアよりも低くすることで、パニアケース装着の親和性を上げている。
 
 そして今回乗ったのは、2015年6月8日(月)までの期間限定で注文を受けるスーパーボルドールEパッケージのスペシャルエディション。これはETC車載器とグリップヒーターを標準装備するEパッケージをベースに、専用外装を与えたモデルだ。パールコスミックブラック+キャンディーアリザリンレッドという深みのある色を組み合わせ、ブラウンメタリックのカムカバー、リアサスのリザーバータンクの色、スイングアームもスペシャルエディション専用のものとなる。価格はベース比で48,000円高となるが、プレミアム感を増したという点では気になるモデルに違いない。こうした定期的な提案も定番に安住しない秘訣なのだろうか。


走り出したとたん解る
CBらしさを追いもとめる
進化と深化。
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 ライディングポジションも理想的なもの。スーパーフォアよりも高く広いハンドルバーは、適度に手前に引かれたものだ。
 
 スーパーフォアよりもやや幅広なのだが、大きなタンク、フェアリングと視覚的に質量があるスーパーボルドールではこのバーのサイズが体感的、視覚的に全体にマッチしていると思う。ステップの位置を含め、バイクを小さな力でつまみやすい、というイメージだ。
 
 足つき性は体格によるところが大きいが、またぎ感のよいシート形状と、足を下ろした時ステップ、ペダルなどが干渉しない点は相変わらず。しっかり支えられる、という自信が持てるのがいい。
 
 カウルから生えたミラーがどことなく先代よりも外側に張り出しているようにも思えたが、ライディングポジションからの後方視界がバッチリ取れる。これも安心材料だ。
 
 エンジンを始動すると、新しくなった排気系デザインはより大排気量4発らしい切れの良い音を耳に届ける。

 ローにシフトする。クラッチをアイドリングでスルっと繋いでも、何のためらいもなく車体を押し出すトルク感は相変わらず。2000rpmを目処にシフトアップしてもあっという間に6速に入る。それでも充分な加速力だ。1500rpmまで落としても実用域として充分なトルクを出すこのエンジンは、4気筒エンジンに求める一つの理想郷だ。アクセルに対するエンジンの反応も理想的な穏やかさ。それでいて捻った分、欲しいだけの加速をしっかりと生み出してくれる。それなのに尖ったところが無く、ライダーは常にリラックスしたままバイクを操り続けられる。
 
 日常域でのハンドリングはとてもナチュラル。バイクの向きを変えようと操作した瞬間、車体は乗り手の意志通りに前輪に舵を与え、思い通りのラインを描いてくれる。その時、グリップから伝わる、“寝ていく様、バイクの動き”なども解りやすい。
 
 切れ味鋭いという表現はあたらないが、意のままなのだ。
 
 また、サスペンションに乗った車重や荷重、タイヤのグリップ感など乗り手に数々の情報をフィードバックしてくれる。その動きを感じとっていると、ハンドルバーの位置、角度、曲げ角などもピタリと合っていることがわかった。市街地速度でこれだけ意思の疎通が出来ると、自信をもってライディングを楽しめる。ビッグバイクを楽しむ素地を常に磨いているCBらしい部分だ。
 
 レバー、ペダルから操作するブレーキは効き始めから制動を引き出すまでの理想的なプロセスの扱いやすさだ。速度によって換えたい前後の効き具合の変位なども絶妙。良くまとまっている。
 
 郊外のツーリングペースでもそうした調和がますます整ってくる。峠へと進み、積極的な加速と減速を交えたコーナリングを楽しんでみた。5速より明確にクロスレシオになった、という印象は無いが、シフトダウンも安心して操作ができた。また、ブレーキを握りこむ、踏みこむ、というレベルへと操作をする。その時、市街地では快適な乗り心地を提供したサスペンションストロークが進むにつれしっかりとした減衰を生みだし、理想的な姿勢変化で受け止めていることに気が付いた。加速同様、減速そのものを楽しむスポーツバイクとしての素養は充分。車重274キロと重量級ながら手強さはない。カーブの前に速度処理が楽しく終了する、というイメージだ。
 
 減速からの向き換え、そして立ち上がりの旋回へという一連をたっぷり楽しむ。リアサスの動きも良く旋回中のギャップも安心だった。
 
 この風合いこそCB1300の魅力でもある。価格帯、同セグメントなど国内外からやってくるライバル達も、乗りやすく魅力的なバイクが増えている。けっして定番人気セグメントという安住の地はない。アップデイトされた走りはそうしたバイクの中にあってしっかりと自分の勝ち技を磨いていた。
 
 定番はメーカーが造るものではなく、ユーザーの信頼が造るもの。CB1300の真価を感じる試乗だった。
 
 辛口な事を言えば、トラクションコントロールやコーナリングABS、クルーズコントロールなど海を渡ってくる海外プレミアムクラスのモデルに当たり前のように付いてくる装備を、日本メーカーも国内向けモデルに積極的に採用して欲しいと思う。こうした電子制御、本来日本の十八番だと思うからだ。次なるCB1300のエボリューションはそのあたりを見据えてみて欲しい。逆に言うとそれぐらいしかスキが無いのである。
 
(試乗&文:松井 勉)

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10 本の細いスポークが印象的なホイール。ニッシン製4ピストンキャリパーを擁するフロントブレーキ。フロントフォークは正立。動きがスムーズでしっかりと路面を捕らえているのが分かる。 上下2段になったヘッドライト。スーパーボルドールでは輝度の高いLEDを採用。灯具を取り囲むように導光帯があり表情の輪郭をクッキリと見せている。フェアリング内側には左右に小物入れスペースが設けられているのは従来通りだ。
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スペシャルエディションではブラウンのカムカバーが印象的。エンジンマネージメントの進化と6速化によりさらに扱い易さが磨かれている。エンジン特性と車体の特性もしっかりチューニングが合っている印象だ。 全体のデザインによりマッチングしたと思う細身のサイレンサー。意匠はスーパーフォアと同じものの、サイレンサーの取り付け角度を路面に近づけパニアケースなどを装着することを意識したデザインに変更したのがスーパーボルドールの特徴だ。
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速度、回転計という二眼式のメーターの印象は変わらないが、中央のモニターにはギアポジションインジケーターほか、燃費を表示するマルチファンクション機能も備わる。 アルミ製角形スイングアームやチェーンアジャスターの造型も力強い。このスペシャルエディションではリアショックのリザーバータンクの色がグレーに、スイングアームが黒となる。10本スポークのホイールが足回りに軽快感を与えている。 パッセンジャー、ライダーとも充分なスペースを持つシート。シート全体のエッジをしっかり丸め、足つき性を向上させ、同時にバイクをコントロールする時の動きの自由度、減速時のサポート感、そして乗り心地を含め良く出来ているシートだ。
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■Honda CB1300 SUPER BOL D’OR E Package Special Edition 主要諸元

■全長×全幅×全高:2,200×825×1,205mm、ホイールベース:1,510mm、最低地上高:125mm、シート高:780mm、車両重量:274kg■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ、総排気量:1,284cm3、ボア×ストローク:78.0×67.2mm、最高出力:74kW(101PS)/7,000rpm、最大トルク:115N・m(11.7kgf-m)/5,500rpm、燃料供給:F.I.、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:21L、変速機形式:常時噛合式6段リターン式■タイヤ(前+後):120/70ZR17M/C 58V+180/55ZR17M/C 73W、ブレーキ(前+後):油圧式ダブルディスク+油圧式シングルディスク、懸架方式(前+後):テレスコピック式+スイングアーム式、フレーム形式:ダブルクレードル■メーカー希望小売価格:1,507,680円


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