(2011.7.27更新)
カリフォルニア州モントレー郊外のラグナセカサーキットで行われるU.S.GPは、AMA(全米選手権)の併催が通例になっている。レースウィークはMotoGPをメインイベントに位置づけ、その時間帯の前後も様々なカテゴリーのバイクがしじゅう走り回っている。
なんでも、AMAではもともとピットボックスというものを使用する風習がなかったとかいう話をきいたことがある。そういえば、現在使用しているピットビルディングは2005年のグランプリ復活の際に新築した建物だ。AMAへ参戦しチャンピオンも獲得した宮城光氏に、以前この件について確認してみたところ、
「そやでぇ〜。AMAではピットなんか使えへん。みーんなテントや。おれの知ってる時代のラグナには、ピットビルディングなんて影も形もあれへんかったわ」
と話していた。
じっさいに、今でもAMAはピット作業をもっぱら各チームのテントで行い、走行時間になるとサインボードを抱えたメカニックとエンジンを切ったバイクに跨った選手がぞろぞろと列を成してコースへ向かう。なんだかサンデーレースを観ているような、和気藹々とした風情である。そんなのどかな雰囲気と、グランプリレースはMotoGP1クラスしかないというゆったりしたスケジュールが相俟って、チームスタッフやパドック関係者たちもどことなくいつもよりリラックスしているような印象がある。もちろん年間全18戦の大事な一戦である以上、誰も気を抜いたりはしてないのだが、やはり平素とは何かが違う。あるいはひょっとしたら、このレースが終わったら短いサマーブレイクが待っている、という夏休み前の期待感が、この独特ののどかさと高揚感に拍車をかけているのかもしれない。
いずれにせよ、ラグナセカ独特のこの盛り上がりは欧州では絶対に味わえないし、同じアメリカ合衆国のグランプリでもインディアナポリスGPになると、この熱っぽい空気感は一気に失せてしまうから不思議なものである。
さて、そんな雰囲気のなかで行われた日曜日の決勝レースは、当初の予想どおりケーシー・ストーナー(レプソル・ホンダ)、ダニ・ペドロサ(同)、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー)の三つ巴の展開になった。3人ともラグナで優勝経験があるだけに、レース序盤で抜け出したこの三台がどんな争いを繰り広げるのか、まったく予断を許さない固唾を呑む状況が続いた。シーズン中最も短い3610mのコースを32周という最多周回で争うのだから、緊張感も尋常ではない。
結果は、終盤で抜け出したストーナーがロレンソを引き離して今季5勝目。ロレンソは2位フィニッシュで、ストーナーとのチャンピオンシップポイントは20点に。それにしても、27周目1コーナーでアウト側からストーナーがロレンソをオーバーテイクしたシーンにはシビレた。結果論的にはアクセラレーションでストーナーが勝っていたということになるのだろうけど、上り勾配から一気に下りつつ左へ曲がるあの超難関ブラインドコーナーで、ロレンソのお株を奪う<ポル・フエラ>(アウト側からのオーバーテイク)を仕掛けたのだから、いやあ、昂奮しました。
フェアで激しいバトルを終えてフィニッシュした彼ら3人が、ウィニングラップでそれぞれの健闘を讃え合い、表彰台でもわだかまりなくシャンパンをかけあう様子は、スポーツだけが持つ爽やかな解放感に満ちた風景だった。いや、じつにいいレースでしたよ、はい。
で、このレースが終えた頃を見計らったかのように、FIMから日本GPに関する調査報告の速報が発表された。大方の予想どおり、「レース開催に問題なし」という内容で、最終報告はこの月末にまとめられ、第11戦チェコGPで最終決定と発表が行われることになっている。おそらく、いろんなフェイズでまたひと悶着あるだろうから、その際には改めて報告いたしますです。
というわけで、この週末はいよいよ8耐。皆様、鈴鹿でお会いいたしましょう。ではでは。