●自工会はこう注文をつけている

実は交通基本法の第13回検討会(6月7日)には、メーカーの集まりである日本自動車工業会(自工会)交通委員会も意見を求められ、代表して委員長の大山龍寛氏(本田技研専務取締役/二輪事業本部長)が意見を述べている。 自工会が主張した点は以下のとおりだ。


  • 「交通基本法制定の主旨は、一部の地域や住民、特定の交通モードのみ(筆者注:公共交通機関)を強調するのではなく、『広く国民を対象に、自動車(道路運送車両法により、具体的には乗用車、バス、貨物車、二輪車、原動機付自転車を指す。以下同)を含めた各交通モードの特徴を活かし、モビリティ(筆者注:移動手段)の充実を図ること』とするなど、包括的な視点を持つべきです」
  • 「(1982年に世界で初めて交通基本法を制定した)フランスの交通基本法では、移動権として移動手段選択の自由も保障。日本の交通基本法でも『交通手段選択の自由』を移動権として明記して、自動車を含めた多様な交通モードの充実を図るべきです」(第13回検討会で自工会が提起した資料から抜粋)。

加えて同会の「議事要旨」には「自動車を否定するような表現ではなく、車から公共交通機関への転換ではなく、共存の視点で整理すべき」との全日本自動車産業労働組合総連合会から提起があったことが記載されている。

まずその前に、各モビリティの位置づけを交通体系の中でキチンと構築すべきではないかも含め、いずれも二輪車ユーザーとして納得できる主張であるし、修正を望む。

この交通基本法については、前述の“予算のバラまき”にならないかの指摘の他に、公共性に傾きすぎていないか、現案では自動車の利用促進を促す高速道路無料化政策などと矛盾しないか、不採算路線の廃止などで移動権侵害の訴訟が相次いで起きないかなど問題点も指摘されている。


これらを含めて現在までの経緯などを詳しく知りたい方は国交省のHPなどを検索いただきたい。


●注目したいのは移動権の保障だ

しかし! 実は括目したいのは以上のような目的を達する基本的な前提として「国民ひとりひとり自由に移動することを保障される権利」を交通基本法が掲げている点だ。


前述の「基本的な考え方」(国交省)から引用すると
「交通基本法の根幹に据えるべきは『移動権』だと思います。まず、私たちひとりひとりが健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を保障されるようにしていくことが交通基本法の原点であるべきです」。

さらに
「移動権を保障するためには(略)『ユニバーサル・デザイン』、つまり交通施設を誰もが利用しやすいものにして行くことも重要です。権利を法律に規定してもそれを裏打ちする施策を充実していかなければ移動権は充足されないからです」。

ちなみに「保障」とは生命、財産、権利などを保護して守ること、とされる。また、同法は移動権を憲法の基本的人権のひとつに位置付ける法ともされる。

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