まさにNMCAの設立当初の目的はこれだったのだ。 hspace=

そして先日、ある国内メーカーの首脳クラスの方と話をする機会を得た。その方が言った発言に、私は正直驚いた。

「小型限定免許(125cc免許)取得の容易化などについて、お役所・官庁にいくら私どもの考え方を主張、発信しても、残念ながらモノゴトは遅々として進みません。今後は行政、つまり政治家に直接、私どもの主張、考え方、要望をアプローチしていきます。幸い民主党にも自民党にも“バイク議員連盟”がある。メーカーとしてそこへの発信、接触を開始しようとしています。もちろんメーカーによって考え方や、やり方について異なる部分はありますが、このままお役所・官庁に働きかけているだけでは、何も答えが出てこない」。

では具体的にどう動くのか。

その過程で政治家から「でも、(本来なら真っ先切ってアプローチしてくるべき)メーカーさんの顔が少しも見えないのは何故でしょうか」と言われたことがあるのは前述の抜粋・再掲載したとおりだ。

これについてそのメーカー首脳クラスの方はこう言った。 「まだ私見ですが、少なくともNMCA日本二輪車協会には積極的に動いてもらおうと考えています」。


NMCA日本二輪車協会は1997年1月、国内4メーカーが発起人となって設立された団体だ。

その活動理念は「すべての二輪ユーザーと二輪ファン、そして販売店、卸、メーカーがひとつとなる団体」で、具体的には「二輪車の楽しさの普及/二輪車を取り巻く環境整備/社会貢献」などをテーマに活動を行うとされている。

ただ、その肝心の環境整備は「二輪車の高速道路二人乗り解禁、AT免許導入、駐車場整備促進など、ユーザー調査と利便性の向上を目的とし、アンケート調査、署名運動などを実施し、ユーザーの声を社会や行政に届ける活動を行っています」と、そういう活動も必要ではあるが(実際、駐車場問題では国交省に自工会やMFJ、二普協などと連名でユーザーの署名を集めて提出しているが)、それにしても実現へ向けての行政への行動としてはなんとも生ぬるい。

さらに「利用環境改善の為の行政、関係先への働きかけ」活動をするとしているのだ。

既に高速二人乗りとAT免許は実現しているのはご存知のとおりで、その活動を現時点のホームページで「行っている」と書いたままにしている“無神経さ”には困惑させられる。


実はそのNMCAが立ち上がった時、私はメーカー首脳部から「今後はこのNMCAが行政に向けたロビー活動を行う圧力団体になります」と聞いていたのだ。

その方向性はどこへ行ってしまったのか。

それがメーカーは行政に向けての活動をしていない、「メーカーの顔が見えない」ままではないか的“怒り”を助長していたのは事実だ。

それではロビー活動とは何か。

これは、最初にアメリカで用いられた語なので、全世界的に「ロビイング」と呼ばれる。

意味は「各種団体、企業(筆者注:!!)、個人などが、特殊利益や公共利益などの擁護・増進を目的として議員や政府当局者に接触し、政治的決定形成に影響を及ぼそうとする活動」(世界大百科事典:平凡社)とされる。

議員が院外者と面会する議会の控室をロビーと呼んだことでの名称だ。

また圧力団体(プレッシャー・グループ)とは「政党以外で、なんらかの共通の目的の追及にあたって、公的政治決定に影響を及ぼす団体」(前出同)で、「アメリカでは、すでに建国の当初からみられた。

移民の国として成立したアメリカで、社会的利害の調整のために同一利害の上に立つ人々の発言が不可欠であり、またそれが社会的に容認されていた」(前出同)。

圧力団体というと日本では一般的に良い印象を持たない人も多いようだが、1930年代にアメリカを視察したフランスの政治家・政治学者・歴史家で自由主義者のトックビルは『アメリカの民主主義』という著作で「世界中でアメリカほど結社の原理が、多数の異なった目的に対して、成功的に用いられ、惜しみなく適用された国はない」と讃嘆している。

この著作に注目した日本人の1人は福沢諭吉だったというほど、歴史的にも古くから定着した考え方なのだ。

まさにNMCAの設立当初の目的はこれだったのだ。

しかし、ロビー活動にはその活動を行うロビイストというプロの人間が必要と言われる。

残念ながらそういう人材をメーカーもNMCAも得られないまま、時は過ぎ去って、今に至っている。


今回のあるメーカーの首脳クラスの方がNMCAなどを駆使してやろうと決心? した“ロビー活動”ならば、NMCAなどにそういう能力のあるスタッフ配置が早急に求められるだろう。

あるいは(既にそう動いているようだが)AJとスタッフ交流含め、さらに濃厚な関係をメーカーが加わっての再構築が非常に有効かもしれない。

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