Native S

『電気でモータースポーツする会社。エレクトリック・モータースポート社の電気オートバイ“Native S”と“Native Z6”を発表します』というインフォメーションがユニオートというところから届いた。岐阜を拠点に、フェラーリやBENTLEYといった高級車を輸入販売している会社らしいが、失礼ながら二輪ではまったく聞いたことがない名前だった。

「電動バイクねえ。これまでも中国や東南アジア産の電動バイクがいろいろと入ってきているから、今さら珍しくも何ともないからなあ」と発表会場へと向かった。

それでもちょっと気になったのが「エレクトリック・モータースポート社は2009年、米国チームとして初めて、伝統あるマン島TTレースで勝利しました(電動モーターサイクルレース、TTXGP)」というリリース部分。

米国産の電動バイク。しかもマン島TTレースで実績を残しているメーカーという。そして何よりも、そのスタイル。これまでの電動バイクでおなじみのスクータースタイルではなく、誰もが興味をもつであろうスポーツタイプのボディだったのだ。

Native S/Z6

※Native S
タイカワサキの125~150cm3クラスのスポーツモデルをベースとした車体に、バッテリーとモーターを“コンポーネント化”して組み合わせたスポーツタイプの電動バイク、Native S。
Native S/Z6R
こちらはオーソドックスなスクータースタイルのNative Z6。最高出力14,200W(19.6PS)とNative Sと同一だが、あくまでコンポーネントの組み合わせしだい。最高速は100km/h、最大走行距離は64km(最大値)。

「リチウムイオン電池搭載のフルスペック電気スポーツバイク。モータースポーツで磨かれた完成度の高い好バランスモデル」のキャッチフレーズで紹介されたのがメイン・モデルと言えるNative Sだ。

全長1,900mm、125~250cm3クラスの車体にリチウム、ニッケル水素、そして鉛の3タイプのバッテリーを用意。モーターも高速型から標準型、低速型の3種。そしてドライブギアも高速型、標準型、低速型を用意してまさにレーシングマシン感覚で自分の使い途にあった組み合わせがチョイスできる。そして車載のコントローラーとWindowsPCをリンクさせることにより、スロットル開度、回生ブレーキの強弱調整、スロットルレスポンスの設定、そして各種のモニター機能などが使えるという。

ちなみに車体はタイカワサキの125~150cm3クラスがベースとなっているという。標準型で1,050,000円とされた価格設定の中身はモーター、バッテリー、それぞれが1/3程度を占めてしまうのだとか。「価格は今後の課題ですね。それでもずいぶんと努力した価格設定になっているのですが」(ユニオートの伊藤昭司社長)。

最高出力は14,200W、最高速度は112km/h。一充電での走行可能距離は96km。フル充電には約4時間30分。充電可能回数は2000回以上。充電器も内蔵している。

Native Sと同時にもう一台、スクータースタイルのNative Z6というモデルも発表された。こちらは全長1,880mmの原付二種クラスの車体にリチウムイオン電池とモーターを搭載した“高速電気スクーター”。トルクフルな加速と軽快な操縦性で、都市部での使い勝手も考慮されている。こちらもバッテリー、モーター、ドライブギアの選択が可能という。最高速度100km/h、走行可能距離は64km。

ちなみにエレクトリック・モータースポート社は2001年10月に現社長のトッド・コーリン氏がカリフォルニアで設立。自ら“テストパイロット”を名のるほど“乗ることを楽しむ”社長の下、早くからモータースポーツ活動を行い、2009年のマン島制覇へと繋がったという。Nativeシリーズはそのマン島レーサーで培った技術をフィードバックして開発されたモデルというわけだ。

※Native S/Z6R
Windows PCとリンクさせることでコントローラー制御ソフトにアクセス可能。自分の好みにあったスロットルセッティングにできる。
※Native S/Z6R
リチウムイオン電池のスタック。3つのスタックで構成している。独自のバッテリーマネージメントシステム(BMS)を搭載、電池残量が20%を切ると自動的に出力を半分に落として航続距離を伸ばすなどの機能を採用している。
Native S/Z6R
メインキーを回すとスタンバイ状態。さらにハンドル右のアクセルグリップホルダー部分に取り付けられたスイッチを押すと走行が可能状態に。あとはアクセルグリップを回すだけ。
Native S/Z6R
Native Sには充電器が搭載されている。出先での補充電も簡単に。通常のガソリンバイクのタンク位置に充電ケーブルを収納する“遊び心”。100Vの家庭用電源から4時間で満充電、80%なら3時間でOKだ。
※Native S/Z6R
こちらはNative Z6のメーター周り。右端に写っているのがスタートボタン。
※Native S/Z6R
ホイールインモーターではなく独立したモーターを採用しているため、その分ホイールベースが長い。モーターからリヤホイールは通常のチェーンドライブのため簡単にギア比が変えられる。

Native S/Z6

発表の翌日、都内で短時間ながらも試乗する機会を作ってもらった。自ら走ってみなければバイクは分からない。百聞はー走に如かず、だ。

ただし当日はあいにくの小雨模様。路面はすでにしっとり濡れている。電気モーターは回り始めが一番トルクが出る。電気自動車やハイブリッド車に乗っている方なら良く分かると思う。おとなしいファミリーカーだと思われている初代プリウスなどでもスタートダッシュで簡単にホイールスピンするほどトルクが出る。ましてや路面が濡れていれば、だ。

そんな特性を持つ電気モーターを搭載する二輪車。リッタークラスのスーパースポーツのように出力特性の切り換えボタンが欲しい。とまあそれは冗談として、気兼ねなく全開スタートを試せなかったのは事実。電気バイクの一番美味しいとろかもしれないのに、だ。

Native Sのスタートには慣れが必要かもしれない。モーター独特のフィーリングが身に付くまでは'70年代の2スト・レーサーかのような、オンかオフかのスロットル・コントロールに神経を集中させる必要があった。

ただし動き出してしまえばこっちのモノ。最高出力でも19.6PS相当の14,200Wは、まったく手に余ることなく、アクセルコントロールにもリニアに付いてきてくれる。

Native S
ストップ&ゴーの多い街中では動き始めのアクセルワークに気を遣うことが多かったNative S。パワー型にセッティングされているためもあってか、一気に走り出してしまう感じだ。走り出してしまえば、バイクはバイク。どんどん走りが楽しくなってくる。

もう一台の電動バイク、Native Z6の方はトルクを重視したモーターとドライブギアの組み合わせのためか、ストップ&ゴーの多い街中でもトルクの出方に慣れれば特に電動バイクと意識しないで使えるようになる。

「実は、Native Sの方の試乗車は最高トルクを出す組み合わせじゃないんです。トルクではなくパワーで走りをカバーする、そんなレーサー型と言いましょうか。Nativeシリーズはバッテリーとモーター、そしてドライブギアの組み合わせで様々な特性に作れるんです」(エンジニアの田澤竜生さん)。

ちなみにこのNativeシリーズ、ユニオートでは軽二輪での登録を推奨している。あくまで“推奨”で、免許の都合などで原付二種としても登録は可能なのだとか。電動バイクの枠組みは今のところ原付(一種)の「総排気量については0.050リツトル、定格出力については0.60kW」の規程がかかわってくるだけで、それ以上の定格出力については規程が無いそうなのだ。

あっという間に試乗時間は終わってしまった。街中じゃなくて晴れた日にワインディングで本来の実力を試してみたかった、なと思っていたら、試乗したほとんどの皆さんが同じような感想を語ったのか、ユニオートさんから「気持ちよく走れるところで再度試乗会を開きますからご参加ください」の案内が追って届いた…。

電動バイクといえば、これまでは高い経済性や環境にやさしい乗り物、などという面ばかりが強調されてきたが、このNative Sは初めてスポーツ性を前面に押し出して登場してきた。

極端に言えば既存のスポーツモデルの車体にバッテリーとモーターを組み合わせただけのようなモデルだった。ならばリッタークラスのスーパースポーツだって同じ手法で出来るはず。

そして電動スーパースポーツによるレースだって…。バイクが電動になるって、実はそんなに大変なことじゃないのかもしれない。

近未来のバイクの世界は、はたしてどのようになるのでしょうか。

■取材協力:ユニオート http://www.electricmotorsport.jp/

Native S/Z6R
こちらは一般的な電気スクーターといえるNative Z6。ただしNative Sと全く同じコンポーネントが用意され、自分好みの性格に作り上げることが出来るので“通勤バトルマシン”に仕上げることも可能。

 ●Native S 主要諸元
       Native S
 全長  1,900mm
 全幅  630mm
 全高  1,135mm
 シート高  750mm
 車両重量  135kg
 最高出力  14,200W(19.6PS)
 最高速度  112km/h
 充電時間   約4時間30分
 充電可能回数   2,000回以上
 タイヤ前  90/80R17
 タイヤ後  100/80R17
 ブレーキ前  シングルディスク 
 ブレーキ後  シングルディスク 

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