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1966 650-W1

1966 W1

●撮影─楠堂亜希

カワサキ製4スト大排気量車が世界へ進出


 メグロK2をベースにボアを8mm拡大し、より速く、より強くを目標に製作されたモデルが1965年の東京モーターショーで発表された試作車X650。

 このX650をベースにホイールベースを10ミリ延長し、エンジンのパワーアップ、足回りは油圧式ステアリングダンパーやフロントツーリーディングドラムブレーキの追加などのさらなる改良が加えられ、1966年当時国産車最大排気量(624cc)の650-W1が誕生した。

1965 K2
1962年に製作されたバーチカルツインOHV497ccのメグロスタミナKをさらに改良し、パワーアップを図ったモデルが1965年の500メグロK2。1964年に目黒製作所は倒産し川崎航空機に吸収されたことにより、開発はカワサキと共同でおこなわれ、メグロブランド最後のモデルとなった。このK2をベースに試作車X650が開発され、後のWシリーズへとつながっていく。
●エンジン型式:空冷4ストローク2気筒OHV2バルブ●総排気量(内径×行程):497cc(66×72.6mm)●最高出力:36ps/6500rpm●最大トルク:4.2kg-m/5500rpm●圧縮比:8.7●変速機:4速リターン●全長×全幅×全高:2185×930×1090mm●軸距離:1415mm●車両重量:210kg●燃料タンク容量:15 L●タイヤ前・後:3.25-18・3.25-18●発売当時価格:295,000円

 W1の先祖に当たるメグロスタミナKが英国車ノートンコマンドを範としたため、右がチェンジペダル、左がブレーキペダルという一般的な国産車とは逆の配置となっているのも、W1の大きな特徴のひとつであった。

 5月からカワサキ初の4スト大排気量モデルとして北米へ輸出を開始。下準備として2月からW1の先行試作車を北米各地の展示会に出品したこともあって販売開始と共に百台単位の注文が殺到する成功作となった。

 北米向けカタログには50馬力、最高速度115MPH(185km/h)、ゼロヨン13.8秒と当時のトップクラスの動力性能が堂々とうたわれていた。

 日本国内には1966年7月から発売が開始される予定であったが、輸出が好調のため出荷は遅れ、また国産車のトップモデルは350クラスであり、外車並みの大排気量と高価格であったため注文販売という方法でおこなわれている。

 W1が誕生した1969年は、カワサキの生産台数が過去最高の月産9200台を記録し、一時は撤退寸前まで追い込まれていた川崎航空機(川崎重工業、川崎航空機、川崎車輌の三社が合併して現在の川崎重工業となったのは1969年)の単車部門が主要部門としてへと成長を遂げた記念すべき年でもあった。


●エンジン型式:空冷4ストローク2気筒OHV2バルブ●総排気量(内径×行程):624cc(74×72.6mm)●最高出力:45ps/6500rpm●最大トルク:5.2kg-m/5500rpm●圧縮比:8.7●変速機:4速リターン●全長×全幅×全高:2135×865×1090mm●軸距離:1420mm●車両重量:218kg●燃料タンク容量:15L●タイヤ前・後:3.25-18・3.50-18●発売当時価格:328,000円



1967 650-W1SS・W2SS

スポーツパッケージのSS登場

1967W1SS
650-W1SS
1967W2SS
650-W2SS

W1をベースにフロントを1インチアップした19インチとし、前後ショートフェンダー、タックロール付シート、キャブトンマフラー、丸形スモールテールランプを装備したスポーツパッケージがW1SS。

W1SSをベースに、吸気バルブ径が2mm拡大した新設計のシリンダーヘッドと、φ28mmのツインキャブを装着したチューニングバージョンがW2SS。圧縮比が9となり、最高出力は53psにアップ。

共に輸出専用モデルで、「コマンダー」(司令官)とペットネームが付けられた。


●エンジン型式:空冷4ストローク2気筒OHV2バルブ●総排気量(内径×行程):624cc(74×72.6mm)●最高出力:53ps/7000rpm●最大トルク:5.4kg-m/5500rpm●圧縮比:9.0●変速機:4速リターン●全長×全幅×全高:2135×865×1100mm●軸距離:1420mm●車両重量:220kg●燃料タンク容量:15L●タイヤ前・後:3.25-19・4.00-18●発売当時価格:輸出車 ※諸元はW2SS


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