ここまで付き合う覚悟があるならば、バイクはほぼ永遠に乗ってられるが、実際にはさまざまなパーツが供給されなくなるなどの難しさがある。純正欠品が出始めた頃、もしくは重要な消耗品が入手できなくなったとき、これが最初のNail in the coffinだ。「23インチのワークブーツ」XL250Sのタイヤなどがいい例かもしれない。オフロード車のフロントタイヤは21インチが一般的になり、23インチはタイヤも作られなくなった。現在まだ入手は可能だが、その種類は極めて少ない。タイヤがなければどんなに優れたマシンでも走れない。(とはいえ、フロントを21インチに替えてしまうなどのモディファイをすればそれはCoffin のNailではなくなるわけだが)
しかし旧いだけでなく作られた絶対数が少ないマシン、さらには専用設計部品が多いマシン、そして「不人気」などというキーワードが加わると部品の入手は困難になり、かつそのモデルに詳しい人も少なくCoffinのNailは増えやすくなる。
例えば各種の規制などでも使えるだろう。数年のうちに海外の騒音・排ガス規制と国内のものは統一されるというハナシがあるが、現在の厳しい国内各規制は日本のバイクマーケットのCoffinにNailを打ったのではないだろうか。国内展開では魅力的なモデルが少ない、などという声が聞こえてきて久しい。ここ数年では海外勢が非常に元気であり、国内メーカーの国内モデル展開は酸欠のような状態にも見える。この場合、「日本独自の規制は国内マーケットにとってNail in the coffinだ」と表現するだろう。もちろん、過去を見ても2ストロークをCoffinへと葬ったNailも各種規制だ。
二輪車通行禁止路線などでも使えるだろう。常々二輪車事故が多くて、二輪車通行止めにしようとの議論があったような場所で多重死亡事故があったとしよう。それがきっかけとなってついに二輪車通行禁止となってしまった。「あの事故がLast nail in the coffinになってしまったね」Lastとつけることで最後の釘。すなわちオシマイにしてしまったということだ。Nailはオシマイに近づく要素を指しているのである。
ちなみに廃車になってしまったバイク、もしくは不動になってしまったマシンはPaper weightと呼ばれる。これは文字通りペーパーウェイト、文鎮のことだ。マシンが高価なほど、それはValuable Paper Weight と冷やかしをうける。いかに高価な、優れたマシンでも動かなければそれはただの文鎮だということだ。マシンの、そしてバイクライフのNailを普段から気にかけ、愛車を文鎮にしないようにしたいものだ。