バイクの英語

第29回 Full of Beans
(フル オブ ビーンズ)

 昔はオコゲは癌に効くとされていたように思うのですが、いかがでしょうか? いつの間にかコゲを食べると反対に癌になる、といわれるようになってますね。

 歯ブラシでも同じような経験があるんですが、小学生のときは歯のはえてる方向に合わせて縦方向に歯ブラシをするように習ったのですが、後にそれでは歯の間に食べカスを追い込んでるようなもんだから、むしろ歯茎に沿って横方向にやった方がいいとも言われました。それからだいぶ経ってるのでどっちが正しいのか、どっちも正しくないのかわかりません。

 バイクのチューニングも、ちょっと前までは面研による圧縮比アップはパワーアップの常套手段でしたが、最近では故障に繋がる例が多いとかでやる人が少なくなりました。この先、何かの新しい技術で壊れなくなったらまた面研が王道になるかもしれませんので、正しいのか正しくないのかはその時々なのかもしれません。

 暖機運転はバイクが止まってる状態で、しかもバイクを直立(できればセンタースタンド)でやった方がいいという意見もあれば、暖気などせずにエンジンをかけたらすぐに走り出して、走りながらエンジンや足周りなど総合で暖機し、しばらくしてから通常走行に移るというやり方もある。どっちも正しいんでしょう。

 オイル交換なんてさらにいろんなことを言う人がいて、3000キロだとか、2500キロで交換なんていう人もいますが、それはちょっと古いかな? 空冷エンジンだったら3000キロあたりで替えるのが理想かもしれず、しかも車種によってはメーカー指定の距離かもしれないですが、今の水冷エンジンはオイル交換1万キロサイクルなんて普通ですよ。オーナーズマニュアルによると。

 色んな説があるのはいいことですが、それが誰かの都合に沿って意図的に作られる説の場合もありますね。

 以前、バイク雑誌で「いまどきバイクにレギュラーガソリン入れてる人なんていないでしょうけど…」なんていう記載を見て、レギュラー指定のバイクにレギュラー入れて何が悪い! と突発的に反抗心を持ちました。そりゃハイオク入れたほうが「より良い」でしょうけど、それをしないのが非常識かのように書くのはよくない。オイルもしかりで、そりゃ早めに替えるに越したことはないけれど、雑誌関係者のような立場の人が「3000キロが当たり前」みたいな言い方をしちゃいけないと思うんですね。あくまで「空冷車ならそのぐらいがお勧めじゃないかと思う。マニュアル参照のこと」ぐらいのニュアンスにしておかないと。ペニーオークションじゃないですが、そういう事言う人はどこかから30万円ぐらいもらってるのかしら?
 タイヤだって本当は2万キロ使えても「しばらく走ると形が変わっちゃうから早めに交換しましょう」、といわれることが多いわけです。もちろん、より気持ちのいいフィーリングで走るため、そして何よりも安全性のために、早めに替えた方が、そりゃよりいいですよ。極端な話、乗るたびに新品にするのが理想でしょう。ですがアレレ、よく見たらその人はタイヤ会社の人だった、なんていうこともよくある話。
 歯ブラシのしかたやオコゲが体にいいかどうかは直接誰かの利益にならないけれど、こういったことはすぐ誰かの利益になる。だからそういったものは「更なる快感を得るために、そういった考え方があります」という意見なのか「テストを行ったうえで、安全のための基準としています」なのかを見極める必要がありますね。でないといつの間にか植えつけられた常識に添って正しいことをしているつもりで、実は誰かの口車に乗せられていいカモにされてる可能性もあるわけです。いずれにせよ、自分でよく調べて、自ら判断することができればいいわけですが。

 うん、話がちょっと飛躍しましたが。

 にんじんが目にいいって話は聞いたことがあるでしょう。にんじんをたくさん食べると夜でも目が良く見えるようになる、なんていう話、実は海外でも聞かれます。が、これは真っ赤なウソらしい。この話は今までダラダラ述べてきた「誰かの利益になるための情報操作」ということにもリンクしますが、今月の英語「Full of Beans」ともリンクします。
Full of Beans とは、直訳すれば「豆でいっぱい」です。しかし言い回しの使われ方としては、「元気いっぱい」「活発な様子」を指します。豆が元気さや活発さをなぜさすようになったのか、諸説ありますが有力なものを一つ。

 

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 そもそも、にんじんが目にいい、もしくは夜目が利くようになる、というのは第2次世界大戦中のイギリスで起きた話だ。当時のイギリスはドイツからの空襲に脅かされ苦しい戦況にあったのだが、その中で特別に夜目が利いて、ドイツ爆撃機の撃墜に長けた飛行機乗りがいた。ジョン・カニンガムというこの飛行気乗りは、夜目が利くことで「キャッツアイズ」というニックネームを持っていたほどである。度重なる撃墜の成功からこの人物が新聞に取り上げられたのだが、そのときのコメントが「いつもにんじんをたくさん食べているから夜目が利くのだ」というものだった。
 実際に彼がにんじんをたくさん食べていたのかはわからない。しかしイギリスでは度重なる空襲警報による灯火管制がしかれることが日常的で、人々は暗い中での生活を強いられていた。このため夜目が利けばいいのに、と思った人は多かっただろうし、ヒーローとなっていたジョン“キャッツアイズ”カニンガムへ対する憧れもあったのだろう。この記事は広く受け入れられ、多くの人がにんじんを育て、にんじんを食べるようになったのだった。

 実際ににんじんが夜目に良いのかはわかっていない。ビタミンAを含むことで目の健康にはいいとされているが、夜目については定かではないのだ。さらに、2次大戦時にはすでにレーダー技術が取り入れられていて、爆撃機の撃墜に飛行気乗りの視力は影響しなかったとされる。
 今振り返れば、ジョン・カニンガム氏の発言は意図されたものだったのかもしれない。戦争により畑仕事もままならなかった国民を励ますため、もしくは野菜を採って健康を維持して欲しかったということだったのかもしれない。いずれにせよ、夜目が利くという話は事実無根だったわけだが、にんじんを育てる側、消費する側、国民に頑張って欲しい政府、そして野菜を食べたがらない子供を説得する材料として、「にんじんは夜目に利く」という話は事実として受け入れるにあたって都合が良かったわけである。

 Full of Beansについては、どこかの船乗りがいつも豆を食べていたことで元気だった、などという話は聞いたことがないのだが、しかしやはり戦時中に出てきた言い回しではないかとされている。今でも缶詰の豆はイギリスで広く親しまれ、各家庭の常備食材となっているが、戦時中も豆をしっかり採って健康でいよう、というキャンペーンがあったとしても不思議はない。少なくとも豆は育てやすく、保存もきき、そしてもちろん健康にも良い。戦時中であれ、積極的な耕作及び摂取を政府側などが訴えたかったことは十分考えられるわけだ。よって、定かではないものの、Full of Beansの語源はにんじんの件と同時期に浸透したのではないか、とされる説が有力である。

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 いかがですか? ここまで読んで、あれ? どこかで聞いたことがあるぞFull of Beansとお思いの読者もいることでしょう。実はマクドナルドでコーヒーを頼むと、そのコップに書いてあるのです。コップにコーヒーが入っているとそれは液状ではあるものの元は豆であり、まさに「豆でいっぱい」なのです。西洋にはFull of Beansという店名のコーヒーショップも良く見かけます。コーヒーを飲めばカフェインにより元気に、活発になるというところとリンクするわけですが、これはあくまで後でこの言い回しを使ったものであり、語源そのものではないという説が有力です。
 バイクで使うなら「たまにハイオク入れてみたらFull of Beansになったよ!」とか、「チューニングしたエンジン、どうだった」「もーう! Full of Beans!」などと使うのがいいでしょう。これから暖かくなりバイクのシーズンもスタートします。ライダーもFull of Beansで楽しみたいものですね!

筆者 
オールド・ビーン
モトGPのテストが始まりました。やっぱりロッシは速かった! ヘイデンの苦戦が… ドビも頑張ってほしいですね。中須賀、秋吉ともに好成績なのも嬉しいところ。今年もあるナイトレースに向けて今からにんじんを食べようかな。


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