順逆無一文

第55回『高齢車が暮らしにくい時代に…』

 バイク乗りにとって絶好の季節、皆様はいかがおすごしでしょうか。すでに旧聞となりますが、今年の4月は、軽自動車税が増額されるだの、いや1年猶予がついたからまだ先の話だ、などいずれにせよ今後、出費増を覚悟しなければならい事態に。
 
 そりゃそうですよね、生活の道具でもあるバイクの税金が、一気に1.5倍から2倍に引き上げられるというのですから(2016年4月1日現在の所有から新税率がかかることになりました)。250cc以上の小型二輪で4,000円が6,000円に、そして原付一種などは1,000円が2,000円に倍増というまさに公の施策とは思えない暴挙レベルの増税。一気に倍にしてしまうなど、どこかの一党支配国や独裁国でなければ考えられない対応です。バイク乗りは甘く見られたモノですな。
 
 それでもちゃんと社会の一員として認知していただいているのなら、市民の義務として唯々諾々として喜んで協力しますよ。ですが、現状はバイクなど無くなってしまえの駐車場差別。公共施設ですら「二輪車は駐車できません」「二輪車駐車禁止」の看板をペロっと1枚掲げているだけ。じゃあどこに止めればいいのか、ちゃんと表示しなさい! いやそんなことできる訳ないですよね。二輪駐車場そのものが無かったというのに駐車違反の取り締まりだけ始めたのですから。
 
 それでいて、駐車違反はキッチリ取り締まる。こういうのを“詐欺”と言わずしてなんというのでしょうか。
 
 話が飛びました。税金の話に戻すとこの軽自動車税の増税は、今や国民の大切な足として全国津々浦々で生活必需品となっている軽自動車を狙い撃ちしたもので、軽自動車を優遇しすぎているという一部の要請から行われたもの。ちなみに具体的なきっかけは、消費税の増税に合わせて自動車取得税を(消費税10%を実施した時点で)全廃すると決定したことによる自治体の税源消滅(都道府県税なんですね自動車取得税は)に対する穴埋め、見返り措置的なものとして行われたというわけ。さらに格好の言い訳材料となったのが久々に耳にする“外圧”。「アメリカ製の自動車が売れないのは軽自動車ばかりを優遇する日本の陰謀」というわけでした。
 
 それならヨーロッパ車だって同じこと。なのに現在、ヨーロッパ車、中でもドイツ車の販売が絶好調なのは何故でしょう。ロクに日本にきちんとした販売網も作らず、はたまた日本市場に合わせた車作りをするでもなく、それで売れないのを人のせい、他国の制度のせいにする、相変わらずのアメリカの自動車産業様なのですね。
 
 自動車重量税も2012年5月1日にエコカー減税を目的とした改正が行われ、それまでの税額が変更されるとともに、新たに初度登録から13年経過、18年経過の車両に関しては「自動車税のグリーン化」に逆行するということで、ペナルティが盛り込まれたのはまだ記憶に新しいでしょう。初度登録から13年未経過の“新しい”車両に関しては「エコカー減税」的措置で年2,200円だったものが年1,900円に減額されたのに対し、初度登録から13年経過以上した車両(18年未満)なら従来通りの年2,200円で実質減税されず、そして初度登録から18年経過以上の車両は2,500円に、というように古いバイク、イコール環境に良くないからペナルティ、の措置が導入されました。
 
 素朴な疑問ですが、目先の環境ではなく地球に優しく、という観点なら安易に短いサイクルで乗り換えさせずに、資源をとてつもなく大量に消費して作り上げたバイク、クルマですから、大切に乗り続けるのが一番環境負荷が小さいと思うのですが。そんな道理も、「環境だ、エコだ」の大合唱には逆らえず、というわけなのですね。
 
 今年5月からは、この「エコカー減税」の反動で、クルマではさらに“旧車いじめ”措置が厳しくなったのだそうです。バイクは今回は据え置かれましたが、古いモデルを大切にし続ける方にとっては、どんどん肩身の狭い想いをさせられる状況が強まりそうです。

二輪車の税金

                  ※ 
 
 今月の“困ったちゃん”です。
 
 埼玉県警は、4月上旬に草加市内で発生したひき逃げ事件について、草加署に勤務する男性巡査部長を容疑者として逮捕したと発表。国道4号線へ左折合流しようとした軽乗用車が歩道を進行してきた自転車を跳ねたが、運転者はそのまま逃走したというもの。跳ねられた高校生は肩を打撲するなどの軽傷で済んだのだが、あろうことか、の警察官のひき逃げ事件でした。「警察官も人の子。間違いも犯す」では困ります。法律に違反した人を検挙するという、とてつもなく特別な職業に就いているのですから。
 
 ひき逃げなどという重大犯に比べたらこちらは可愛いもの。いやちっとも可愛くなどないニュースです。福岡県警は、“二段階右折”の違反容疑で計187人もの善良な市民を誤って摘発、反則金を支払わせていたと発表した。本来なら県公安委員会から“車両通行帯”の車線決定を受けなければならないものを、単純に3車線の交差点というだけで取り締まっていたという。昨年の2月から今年1月まで、ミスに気が付かず取り締まりを続けてきたという。よく見かける一時停止違反の取り締まりなどのように、物影に隠れていて違反者を取り締まっていたのでしょうか。
 
 ちなみに編集部のすぐ近くにもUターン禁止の交差点がありますが、高速下の複雑な五差路で、通り慣れていないドライバーやライダーたちがいとも簡単に“網”に引っかかっています。
 
 それにしてもなんで物影に隠れるようなカタチで取り締まりをするのでしょうか。一時停止などの取り締まりでもそうですね。取り締まると言うことは、そこでUターンしたり、一時停止をしないと危険だからですよね。当たり前ですが危険じゃなければ規制する意味がない。
 
 ってことこは、警察は危険な行為を未然に防止する意志はまったくなく、一般市民にわざわざ危険な行為をさせておいてからそれをただ取り締まるだけの存在ということなのでしょうか。万が一そのUターン禁止場所でUターンして事故が起きてしまった場合、一時停止標識を見落として衝突してしまったなどという時に、物影に隠れて違反行為をさせてから取り締まろうとしていた警察官は、その場合はいったいどのように対処するつもりなのでしょうか。
 
「事故になるとは考えていなかった」とでも言い訳するのでしょうか。それとも「たまたま現場に通りかかったときに事故が起きた」と、いとも簡単に虚偽の証言をするのでしょうか。事故が起きることなどないと考えている? それじゃ故意に違反するドライバーやライダーと一緒じゃないですか。いやいや、事故が起きてもそれは仕方がない、と考えていたりしません?
 
 物影に隠れての取り締まり行為は、犯罪の“幇助”や“教唆”にはあたらないのでしょうか。目の前でみすみす危険な行為が行われようとしているのに、そのまま放置し、実際に犯罪行為が完遂した時点で検挙する。それが法律上はいくら正しくても、市民を守るという警察の存在理由としてはふさわしくないですよね。
 
 いや、警察本来の仕事が市民を守るなどということではなく、ひとえに社会秩序を守る、というのが実態と考えるならば充分納得の行為といえるのかもしれません。これで警察官を尊敬しろと言うのが無理な話。いや尊敬どころか信頼しろと言うのが無理なのではないでしょうか。サラリーマン警察官といわれて久しいですが、このまま行くと平和な社会にあってノルマを達成するだけの存在になりはててしまう可能性もなきにしもあらず。一般市民は物影に隠れて取り締まる警察官を軽蔑や憐れみの目で見ていることを知るべきです。
 
 尊敬される警察官になりましょうよ。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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