Hi-Compression Column

バイクの英語

今月の一言
“Pig’s ear”
ピッグズ イヤー

(もしくはピッグジヤー)

(9月13日更新)

なんともひどい…… 
 誰かもうちょっといい案がなかったのか…… 
 こんな有様でいいのか……
 いくらなんでももっとなんとかなったでしょうよ……
 そんな状況がピッグズ イヤー。誰かもうちょっと本気を出して取り組もうぜ!


大人になってから知ったけれど、世の中、大抵のことはナァナァのテキトーで成り立っていると感じてます。

最近驚いたのは、4メーカーの一つである某に勤めるうちの妹と、スポーツランドSUGOにて待ち合わせをしたときの話。

「お兄ちゃん、SUGO行ったことある? 行ける? 3時には出たほうがいいよ? 東北道だからね? 入り口にはこんな看板があるからね?」といやというほど念を押され、さらには詳細に色々指示したメールが届き、さらにはファックスまで流れてくる始末。

ナンダコノヤロウ! SUGOぐらい行けるわ! 

としまいには腹立たしくなってきた上に、同時に妹が普段ビジネスで付き合っている人たちは、そこまでしてやらなけりゃSUGOに集合もできないようなヤツラなのか? と不安に、心配になった兄だったのです。

あでも、僕が仕事で付き合っている人たちも当日になって「で、どこ集合だっけ」なんて言ってくる人たちもいるなぁ……。

どうにも無責任だよなぁ。「なんとかなるっしょ」という、他力本願、責任放棄がにじみ出ていると感じます。


同じような状況は、お酒の席で仕事が決まる時にも感じています。

自分はあまりお酒を飲みません。というのは電車に乗るのが大嫌いで、どこへ行くにも90%バイク、9%車だからです。

飲んだら乗るな。なので、家で風呂上りにビールをヒッカケルのはしても、外で飲んで終電で帰ってくるってのは3年に1度ぐらいしかしません。

だって遅くまで飲んでると次の日の午前中はまず無駄になりますもの。

時間貧乏にはそれが耐えられない。

だからこそ、二言目には「飲みに行こう」という人とは付き合いにくい。

さらには「酒も飲めねぇヤツとビジネスはできねぇ」とまで言う人もいますが、どっちかって言うと「コチラコソ」って感じですな。

酒が入ってない状態で議論しないとナァナァのまま話がまとまって(というかまとまった気になって)、結果あまりいいものが産まれた例は多くないと感じています。


蛇足だけど、酒の話になったついでに言っておきたかったのは、破滅飲み系のミーティング。

きっとその昔の○○○デイあたりからそういうのが定着したんだろうけど、とにかくあらぬ距離を走るのはソートーカッコイイと思うんです。

知り合いにブラックバードの人がいて、全国に影武者がいるといわれているほどあらゆるところに出没するらしい。

うーん、尊敬しますね。だけどいろんな人からそういう集まりの話を聞くと、なぜか酒にまつわる話ばかり。せっかくのカッコよさが霞んじゃうんダナァ。あ、このハナシはピッグズ イヤーに関係ないや、スマン。

誰も責任をとろうとしないからね。大多数ははっきりとしたビジョンなどないし、持っている少数と同調してそれを作り上げようという気持ちも希薄。出来上がるのはまさに「ピッグズ イヤー」なのです。


で、SUGOで感じた「全てお膳立てしてあげなきゃできない人」の話も、「酒の場で仕事」の話も、結果として生むのはナァナァな仕事だったりすると思うわけです。


ピッグズ イヤーとは、そのまま「豚の耳」って意味です。語源というか、うん、そのまますぎてあまり掘り下げた話しはできそうもありません……

   ※    ※    ※

牛などの家畜は現在も耳にタグをつけられる。ピアスみたいに、耳に穴を開けてその個体の経歴や持ち主などを記してある、あのタグだ。

今ではあれを打ち込む機械があり、タグも抗菌のプラスチック製になっているため清潔で、しかもスマートに装着されるために引っかかって外れることも少ないが、昔は金属製であり、動物がそれを柵などに引っ掛けて止め具が外れる、もしくは耳を引き裂いてとれてしまうことが多々あった。

当時は現在のように一瞬で、ほぼ無痛で装着されるものではなく、千枚通しのようなもので穴を開けてから、重い金属製のタグをつけられていたわけだ。よって家畜にとっては痛みと違和感がしばらく続き、また、その重さからもタグを嫌って壁や柵に耳を押し付けたため、その金属製のタグは外れたり、耳を引き裂いて抜け落ちたりしていた。

特に豚については、もともと地面を転がりまわる習性があることと、そして牛などに比べて耳の厚みそのものが薄く、裂けやすいこともあり、タグが耳を破いてとれてしまうことが多々あった。

そうなると、管理者は豚の耳のより奥の方へまた新たなタグを通すのだが、それも裂け……と繰り返しているうちに、豚の耳はズタズタになり、見るも無残なことになってしまうのだ。

よって現在の耳にぴったりフィットし、突起物のないため引っ掛けにくく、よって耳を裂きにくいプラスチックのタグが登場した時は誰よりも豚たちが喜んだのである。

ちなみにこのような金属のタグは、旧くからの酪農エリアを散歩していると現在でも稀に見つけることができる。

ピン側のみを見つければそれは抜け落ちたものだが、ピンの反対側の留め具がついたまま見つけたならば、それは耳を裂いて取れてしまったものであり、まさに「ピッグズ イヤー」(もしくは牛か馬か羊か)を引き起こしたもの、というわけだ。

   ※    ※    ※

このようにして、ひどく扱われたもの、ひどい有様のものを「ピッグズ イヤー」と呼ぶようになりました。

それが進んで、ひどい仕上がりの仕事、ヤッツケ仕事を指すようになっていったのです。

例えば本当はカウルをボルト止めしなきゃいけないのにタイラップで済ませちゃう。

例えば本当はフロート室のガスケットを替えた方がいいのに、液ガスでごまかしちゃう。

例えばシートの張替えを自分でやってシワがよっちゃう&ケツが濡れる。

こういった作業は全て「ピッグズ イヤー」ですね。ちゃんとやってないさま。ヤッツケ仕事。

どうですか? まわりにはヤッツケ仕事が溢れているでしょう。

僕の周りではヤッツケじゃない仕事を見つけるのが難しくなってきましたよ……。


ちなみに筆者は「ピッグジヤー」といいます。

英語で話すときはけっこう頻繁に使う表現ですが、僕の近辺のバイリンガルな人たちの間では、日本語で話す時も普通に使われています。

ぜひ使ってみてください「ピッグジヤー」。

ちなみにアクセントは「ジ」につきます。



バート・フォンタン
バイクの英語
究極のピッグジヤーは最近の国内モデル! なんていう反社会的なことを平気で言って担当編集者に「それはちょっと……フザケンナ?」と叱られるフリーライター。素晴らしい国内仕様といえばカブ110とニンジャ250。海外仕様のリファインで大成功。あとFZ-1。これもかなりいい。実は輸出仕様よりイイ。スズキだとバンディット1250がいいね。それ以外だと、以外だと、えーっと。ないなぁ。日本メーカーは海外の市場を一生懸命開拓して、国内は眼中になく。同時にトライアンフとかアプリリアといった海外メーカーが日本で手腕を振るう。イトオカシ!


[第2回“Cheese under the nail”]
[第3回“Pig’s ear”]
[第4回“In the Navy”]
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