Hi-Compression Column

おやびん道

それぞれの道には、それぞれの風土、気候、環境などを積み重ねた表情がある。それはまた人生にも似ている。道は人生、道の数だけ物語がある。野口おやびんが走って来た幾多の道を、想い出話と共に語ろうか


第17回・国道20号線

(2011年11月29日更新)



R19
国道20号線=R20は東京都中央区日本橋と長野県塩尻市を結ぶ一般国道で、延長は225km。江戸時代に整備された五街道のひとつである甲州街道とほぼ同じ道筋のため、R20は甲州街道と呼ばれてもいる。また、ほぼ全線に沿って中央高速自動車道が走っている。

R20号は都心から新宿〜府中〜八王子と、都内を西に横断するかたちで走っている道であり、俺が住んでいる世田谷に隣接していることもあって、馴染みがある。特に新宿から調布、府中あたりまでは使用頻度が高い。

初めて走ったのは10代の末頃だっただろう。明治通りから環七までの区間を時々利用した。その後も明治通りから環八までの区間は折りにふれて使い、中央高速で八ヶ岳方面や信州、また富士五湖に向かう場合は、環八から調布インターまでR20を走ることが多かった。幹線道路なので常に交通量が多く、環八までの区間にはオーバーパスなどもあるが渋滞しているイメージが強い。

新宿
あの3.11から1週間後の20号線桜上水付近。通常ならば車が途切れることなく行き交い街灯で明るく照らされているが、車も少なく街灯も全て消されて真っ暗の異様な光景だった。(2011年3月19日 ●撮影-PINKIE高橋)

余談だが、暴走族全盛期にはR20を名乗るグループもあった。R20=ルート・トゥエンティがそれだ。'70年代半ば、都内には大きな暴走族グループがいくつもあったが、R20も構成員の大きさではトップクラスだった、と思う。武闘派だったのかどうか、詳しいことは知らないけれど、若いバイク乗りでその名を知らない者はいなかっただろう。

道のことに話しを戻す。



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環七もしくは環八から調布、府中あたりまではよく使ったわけだが、取材がらみ、仕事がらみで八王子までR20を利用したことも何度かある。八王子までの頻度が少ないのは、前述のように混んでいて時間がかかるので、中央高速を利用することが多いからだ。個人的にツーリングのアプローチで八王子やその先までR20を走ったことはまずない。

はっきりした理由は思いつかないが、都内から西方へのツーリングでは中央高速を使うのが当たり前、という感じになってしまっていたからだろう。それでも、数回は八王子の先まで行ったことがある。

よく覚えているのは'80年代初頭の頃だ。当時、暴走族、ではなく、峠道を往復して走るローリング族が台頭していた。で、R20の道程の八王子〜神奈川県相模原の間にある大垂水峠は、そのメッカのひとつだった。多分取材がらみだったと思うが、金曜か土曜の夕方頃にバイクで出かけて行った。交通量の少なくなる夜になってから走るライダーが多いと聞いていたからだ。当時、ローリング族が出没する峠道での事故が増え、それが社会問題になりつつあって、大垂水峠はどんな様子なのか確認するためだった。カメラマンと一緒だったように記憶している。

峠の前後はタイトコーナーが続き、東京方面から行って峠を過ぎて少し下ったあたりに1軒の茶屋があり、その近くの駐車スペースに驚くほど多くのバイクとライダーがいた。見物コーナーだったのだ。そしてそのコーナー付近を小中排気量のバイク(改造車も多かった)が行ったり来たりしていた。何台ものバイクがフルバンクさせながらコーナリングスピードを競っていた。

大垂水
峠最盛期はバイクだらけで事故も日常茶飯事だったダルミも今は昔。しかし現在も土日は125cc以下の通行が禁止されている。(2010年8月 撮影─Pinkie高橋)

当然、なかには転倒する者もいた。俺が行ったときは大けがを負ったライダーはいなかったと思うが、転倒者が出ると、その仲間かギャラリーの人間がすぐに駆け寄り、助けていた。二次事故を防ぐために交通整理する者も数人…。当然ながら一般のバイクや車も走っていたし、彼らの行為は危ないもので、これじゃ事故は増えるよな、と思った。  

その後、大垂水峠は一般国道であるにもかかわらず交通規制されることになる。  

大垂水峠以西〜山梨県内南部までのR20はこれまでにほとんど利用したことがないが、甲府市近くから韮崎市、また諏訪湖周辺から塩尻市までの区間は何度か走っている。数年前もツーリングで塩尻峠を通ったし、仕事で諏訪湖の近くに立ち寄ったときにも短い区間だったが利用したことがある。

今度、信州方面にツーリングにいくとき、環八からR20に入り、全線にはならないけれど塩尻あたりまで走ってみるのもいいかもしれないな、なんて思う。普段交通量の多い区間も、早朝に発てば、空いていてスムーズに通過できるだろうから…。


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野口眞一
のぐち
バイクに乗って40年、二輪雑誌の仕事をして30年、の55歳。若い頃からツーリングが好きで日本各地を旅してきた。現在の所有車はトライアンフのサンダーバード(1996年型の水冷並列3気筒)で、13年乗り続けている。
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