川とセロー

 これまでの走りをアッキーが振り返る。


 「さすがのオレでも数十分も走れば多少は慣れてくる。ハマちゃん師匠の言うとおり『手の力を抜いて。ハンドルに手を添える程度に』というアドバイスを、“目標をセンターに入れてスイッチ”とつぶやくエヴァのシンジ君のよーに頭の中で繰り返す。

 すると! なんとなくコツが分かってきたのだ。

   多少の段差やら石ころ踏んだ程度では、ハンドルが左右にガタタっと動くも、そのままにしておけば前へ進んでいく。

 おー、バイクってすげえ乗り物だわ。今更ながらかんどー。

 つーことで、最大限の根性を発揮してハマちゃんについていくオレ(しかし彼は通常の半分程度の力)。

 もしかしてスピードヤバいくらい出てるんじゃないか!? だがその時、多少余裕の出てきた直線で見た液晶メーターの数字を、オレは忘れない。


『27km/h』……。


 原チャリの法定速度以下やんけっ! と、一瞬気が萎えるが、いーのよ。気持ちよけりゃ。

 気がつけばオレはメットのシールドを開け、初夏の森の匂いを楽しむ余裕なんかも出てきてキモチいい〜。

 少々のスリルと、自然の風と匂いや色合い。そんなのも林道の楽しみ方なんだってやっと分かったよ。

トンネル


 コーヒーを飲んだあとを片づけて、セロー250で行く、ハマヤ&アッキーの林道珍道中は続くのである。

 次は最後の目的地、長野県との県境にある、秩父市道大滝幹線17号線、通称、中津川林道だ。


   ダグラス・アダムズの『銀河ヒッチハイク・ガイド』の中に、「生命、宇宙、そして万物についての究極の答え=42」というのが出てくる。

「42」については諸説いろいろあるけれど、ふたりはちょうど42歳。ただの偶然だろうか。

 この林道旅で何かを悟るかもしれない─────────────────────────悟らないと思うけど……。(つづく)



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