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衛藤達也
現地集合、現地解散 ドイツ5日間、200台撮影の旅 その5
【前回までのあらすじ】 1980年代後半から90年代にかけ、ミスター・バイク誌上で数々の作品を発表したエトーカメラマン。撮影は順調だったが、ケンオウの有り余る車愛についていけず、気まずい雰囲気となるも、そこは大人の心で対応。より強い絆を作った。単体撮影は終了し4日目には余裕を持てイメージ撮影を行ない、あとは帰るだけの一歩手前で、またまた大事件が……
(2011年5月11日更新)
最後の最後まで……
順調に進んだ撮影最終日。好事魔多し、大変なことが起きた。
私は普段メガネをかけているが、撮影している時は外してそばにおく癖がある。
草むらに寝そべって望遠レンズで撮影し、次の場所に移動して気づいた。
メガネは?……戻って探しても見当たらない。
撮影が終わってからもう一度行ってよく探したが見つからなかった。すでに暗くなってきたので、あきらめた。
翌朝、ホテルを出て空港に向かう。
ケンオーが「いいですかエトーさん。せっかく、ドイツに来て何もしないで帰るのはもったいないでしょう。空港に荷物を預けてフランクフルトの町を見学しましょう」
その時の目の奥では「あなたはいい大人なのだから、私に頼ってばかりいないで、少しは年下の私を楽しませなさい」と語っていた(に違いない)。
そーいえば、飾り窓があったなあと話したら、ぜひ見てみたいというので多分この辺と連れて行く。
すると、目の前にポルノショップを発見。「いいですかエトーさん、何事も経験ですよ。とにかく入りましょう」
目の奥は「あんた、俺以上に目が輝いてるぜ。本当は凄ーく入りたいんだろーが」とギラギラしていた。
店には色々な物が売っていた。完全に二人は壊れた。あっちで興奮こっちで歓喜。その内、店の奥の方で「シャワーショウ、シャワーショウ」とアナウンスが聞こえた。
何だろう? と思っている私にケンオーは「いいですかエトーさん、ここはフランクフルトです。日本ではできない経験なのでぜひ見ましょう。こんな経験はめったにできません」と力説するのだが、私はメガネがない。
劇場らしきところで演じられるようだが、遠くが見えないので渋っていると「いいですかエトーさん、人間努力すれば見えない物も見えてきます。努力で人間は成長するのです。さあ、行きましょう」
そのとき私は、今まで感じたことのない強烈なケンオーの目力を感じた。
劇場にはガラス張りの部屋が有った。しばらくすると、金髪のオネーさんが出てきてシャワーを浴びて帰って行った。
狭い部屋でシャワー、ということは湯気で曇って見えない。しかも私はメガネがないのでもっと見えない。
だまされた? でもシャワーショウには違いない。出発の時間がそろそろ近づいたので煮え切れない気持ちで空港へ戻る。
空港でまたもや衝撃的なことが起きた。
帰りは一緒の飛行機だと思っていたがケンオーはルフトハンザ、私はJALと別便が指定されていた。
ケンオーが先に出発した。私の出発は4時間後。
現地集合、現地解散。なんという仕事だろうか。
時間もあるしメンドくさいので持ってきた荷物を全部預けようとJALのカウンターに向かう。
カウンターのオネーさんに英語で「youは一人旅なのか?」と聞かれ、自慢げにイエス! と答えた。
するとオネーさんは、にこりともせず言った。
「重量オーバーです。あと7万円払いなさい。それなら、荷物を一つ機内に持ち込めます」
え? 7万円? 近くにいた日本人の女性クルーに泣きを入れてみたが、厳格なドイツ人は「一度量ってしまった物は変更できません!」と、取り付く島もなし。
ネバってもだめみたいなので、渋々カードで支払う……ついでに領収書をもらう。
なんとか、一人で成田に着いて、I井さんに「何かしらないが、超過料金をとられたから払って下さい」と領収書を渡した。
Iさんは、困った顔で怪物君の様に激しくごしごしと顔をしごきだした。
(おわり)
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