つまり、既存のものを含めて自転車駐輪場へ自動二輪車の駐車の受け入れを各自治体が積極的に進めることを国交省は働きかけたのだ。

この警察庁通達と国交省通知が出たことで、メーカーの集まりである日本自工会、NMCA日本二輪車協会、とりわけ二輪車の利用環境改善で積極的に行動、今やそのリーダーであるバイク販売店の組織、全国オートバイ協同組合連合会:AJなどは各自治体に通達/通知に対して積極的行動を促す要望を続けている。

特にAJは岡崎トミ子・新国家公安委員会委員長に要望、さらに各地方支部団体を通して、その地域の自治体に効果的な働きかけを継続させている。

もちろんこの自治体への要望は各地域の住民のグループや町内会などの組織でも可能だ。

ちなみに東京オートバイ協同組合(TAC)は『東京都の二輪車駐車場について 現状とご提案』という最近のレポートで「東京都内で必要とされる原付・自動二輪車の駐車スペース収容台数は最低10万台以上と想定しており、現在では約8万6000台が不足している」としている。

で、今。警察庁通達と国交省通知が発せられてから半年が過ぎようとしている。

一般的に「通達」とは「上級行政機関が下級行政機関に対して命令する(!!:筆者注)一形式で、文書によってなされる場合をさす」(世界大百科事典:平凡社)だとされる。昔は「達」や「示達」とも呼ばれ、特に国と国の間で使われる、例えば宣戦布告に等しい最後通牒の「通牒」と同じ言葉だという。

つまりこれは行政機関に対する「命令」ということなのだ。

ただ、その解釈は時代と共に変化していて、「通知」も「通達」と同じような意味合いとされるが「通達」が事実上法的拘束力を持つのに対して、「通知」は法的な強制力はないとされているようだ。

ただし、「通知」に反すると直ちに違法とはならないとしても、知りながら従わなかったことでの責任追及をされる根拠とはなりえる、とされている。どうもこのあたり、解釈には様々あるようだ。

いずれにしろ警察庁からは「命令」が出され、国交省からは「指針」が出されたと考えていいだろう。

ならば、それは各省庁から出しっ放しでいいわけがない。関係行政機関は通達や通知を省庁が発した結果がどうなのか、どう進展したのか、問題点はないのか、検証や報告をすべきではないだろうか。

総務省にそういうことに関して評価するチェック機関があるという。そういった評価チェックを国民が求めるのは当然の権利と考えるがいかがだろうか。最近出た『現代語裏辞典』(筒井康隆・文藝春秋刊)によると「役所:たらい回し場」とあるが、ま、まさか…。

と、ここまで書いてきて、そういうチェックを求める動きが出てきているという情報が伝わってきた。

そこに至るまでには、どうやら事前の過程が必要なようなのだが、それが動き始めているというのだ。

特に民主党には二輪車ユーザーを支援する議員連盟(会長の内山晃議員は総務省の政務官に就任した)があり、自民党にはオートバイ議連がある。政治主導を標榜するなら、出番ではないか。ここはエールを込めて行動に期待する。

あえてこのコラムで前に引用したフランスの思想家で都市計画家、建築大学校長であったポール・ヴィリリオが1970年代に著わした『速度と政治』の中の一節を再度、掲げておきたい。

「都市には居住可能な交通しかないのであり、その点は例えば今日、日本においてとりわけ明白である。(中略)彼等にとって駐車禁止とは集会の禁止に等しいのだ」

日本全国、特に都市部の二輪車ユーザーは、未だに基本的権利である集会を大部分、禁止されたままだ。

(2010.11.8更新)

古・編集・長 近藤健二
古・編集・長 近藤健二
ミスター・バイク本誌の編集長を4代目(1977年9月号~1979年10月号)&7代目(1985年4月号~2000年6月号)の永きにわたり勤め上げた名物編集長。風貌も含め、愛されるキャラクターであり、業界内外に顔が広い「名物編集長」であるところは万人が認める。が、名編集長かといえば万人が苦笑で答える。悠々自適の隠遁生活中かと思えば、二輪業界の社会的地位を向上すべく老体にムチ打って今なお現役活動中(感謝)。ちなみに現在の肩書き?「古・編集・長」は「こ・へんしゅう・ちょう」ではなく「いにしえ・へんしゅう・おさ」と読んでください。



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