■二輪車の走行空間

『二輪車交通の安全と円滑化を確保する観点から、二輪車の走行空間のあり方に関心が出てきている。

とくに最近では、自転車やバスの専用通行帯が積極的に導入されているなかで、二輪車の走行空間の位置づけがあいまいなものとなってきている。

本誌(モーターサイクルインフォメーション:自工会)が2010年5月に調べたところによると、バス専用通行帯を設定しているのは全国で36都道府県。 このうちバス専用通行帯に自動二輪車を走らせているのは21道府県で、交通規制の運用実態がバラバラなことがわかっている。

自工会・二特では、引き続きこうした規制の導入状況について実態を把握し、今後、二輪車の走行空間がどうあるべきか検討を行い、改善すべき点を行政に訴えていくこととしている』(以上、自工会の主張)。


現在、全国のバス専用通行帯の6割の区間がすでに二輪車と共用化されているとされる。

道路交通法ではバス専用通行帯は原則では原付一種のみが走行可能となっている。

しかし渋滞緩和などの施策として続々とバス専用通行帯の二輪車共用化は進んでいるのも事実。

これを残り4割はもちろん、新設される通行帯に関しても二輪車(自動二輪車)との共用化を拡大させるべきだ。

特に東京都はこの動きに対応が著しく鈍く、“後進地域”とさえ指摘されている。

またこの問題と同時に2009年時点で全国608区間、1,017.8kmで二輪車が走行禁止となっている事実も忘れてはならない。交通実態を再考察して適宜解除するのは行政の当然の義務だ。

なお、これを所管するのは都道府県の公安委員会/警察本部交通部交通規制課である。

■高速道路の料金に二輪車区分を

『二輪車の高速道路料金は、普通車の金額を1とすると、その0.8の料率となっており軽自動車と同じ金額が徴収されている。

首都高など都市高速道路では、普通車と二輪車が同じ金額となっている。

二輪車ユーザーからすれば、なぜ二輪車と四輪車が同じ金額なのか得心できず、非常に割高な料金を支払わされているという感覚がある。

過去のアンケートでも、二輪車を利用するうえでの不満として、多くのユーザーから「二輪車の高速道路料金を引き下げてほしい」と指摘を受けてきた。

このため自工会・二特では、政府に対して「二輪車独自の高速道路料金区分を設定するよう」継続的に申し入れを行っており、最近では内閣府の「国民の声 第1回集中受付」(昨年1〜2月)の際に、自工会から要望を行った。

これに対する国土交通省の回答は「車種区分及び車種間料金比率については、占有者負担の考え方に、原因者負担の考え方及び受益者負担の考え方を加え、それぞれの考え方を勘案して決定していくことが妥当であるとされており、それらの考え方を踏まえ、道路運送車両法の区分等により規定しています」として、「対応不可」という判断だった。

2011年4月からは、新しい料金制度が実施される見通しだが、ここでも二輪車を独立させて対応するといった考えは見当たらず、二特としては引き続き二輪車ユーザーの立場に立ってアピールを続けていく』(以上、自工会の主張)。


ちなみに、高速走行時の二輪車の道路損傷度は普通車を1.0とすると二輪車は何と0.003。専有面積では普通車と比べると約1/4とされる。これらを踏まえると料金負担割合は普通車の0.5あたりが正当な料金ではないか。

この4月からの新料金制度でも「二輪車区分」の発想は出てきていない。二輪車ユーザーの声をくみ取ると言っている民主党・二輪車ユーザーを支援する議員連盟、自民党・オートバイ議員連盟の国会議員の方々は、新料金制が実施される過程で何をするのか、その姿が現時点では見えないのはなぜなのだろうか。

なお、この課題の担当は国交省道路局高速道路課や有料道路会社だ。

■原付二種の免許取得時の負担軽減

『国民の身近な移動手段である原付一種と原付二種は、現行の免許制度上、原付一種=「原付免許」と、原付二種=「普通二輪免許(小型限定免許を含む)」に分かれており、免許取得時の負担に大きな差がある。

しかし近年、原付二種は、ユーザーにとって経済的で移動効率が良いなど、利便性が急速に見直されており、原付一種に比べて四輪車と使い分けやすく環境にも好影響が期待されるなど、社会的な有用性の面からも評価が高まっている。

このため自工会・二特では、2009年9月、警察庁に対して原付二種の免許取得時の負担を軽減する“新しい免許取得制度”のイメージを提案。昨年も引き続き、制度見直しの要望を行うなど活動を続けてきた。

運転免許・教習制度は、十分な運転者教育を行う観点からはもちろん、今日的な国民のニーズに合わせて、その内容がより時宜に合致したものへと見直される必要がある。

二特では、今年さらに国民の意見をヒアリングするなど、原付二種の免許取得時の負担軽減についてさらにイメージを煮詰め、警察庁に対して積極的な検討を促していく』(以上、自工会の主張)。

この課題について自工会はかなり積極的に警察庁などへアプローチしている。行政側も一定の理解をするまでになっていると聞くが、最大のクリアしなければならない課題があるという。それが実は——


「国民がこの免許取得負担軽減を求めていない」ということなのだという。


当の二輪車ユーザー含め「免許取得を簡単にしたら事故が増える、安全が担保できない」との声が多いという。これが行政側からすれば最大の“難関”だというのだ。

もちろん提案している自工会も「安全運転技能の習得を確保して」ということは主張している。

具体的にはAT小型限定普通二輪免許取得時に——

●技能講習時限数を2時間程度短縮、6時間に。
●技能検定の代わりに「見極め」教習を行う。
●結果、入校から卒業まで1〜2日程度に短縮。

——以上が主な提案点だ。

確かに原付一種と二種では操作方法やサイズなど車両特性がかなり近いことはご存知のとおり。税法や保険も二種は一種並みの扱い。しかしその免許となると二種に乗るには小型二輪限定以上が求められ、原付一種免許取得と比べるとかなりの負担差があることも事実だ。


ちなみにこの課題の所管は言うまでもなく警察庁交通局運転免許課。ここがパブリックコメントを求めてもやはり「反対」の声が多く寄せられるのだろうか、それとも! 世界の“原付”の主流は100〜125ccで、(すなわちグローバルスタンダードの観点でコスト高の)日本の50ccはガラパゴスなのだが…。

以上、ここに挙げた4つの他にもまだまだ二輪車利用環境改善の課題があるのはご存知のとおりだ。このページでは今後もこれ以外の課題も取り上げていく。

それで自分が「これは改善すべきだ」と思われるものがあったら、特に一般マスコミや、そして行政に、投稿/メールなど様々な(可能なあらゆる)手段で声を発信していただきたい。なぜならば——

「二輪車に乗っている人たちは課題が分かっている。問題は二輪車に乗らない人がまったくそのことを知らないでいることだ」(民主党・二輪車ユーザーを支援する議員連盟・内山晃会長)

(2011.1.17更新)

古・編集・長 近藤健二
古・編集・長 近藤健二
ミスター・バイク本誌の編集長を4代目(1977年9月号~1979年10月号)&7代目(1985年4月号~2000年6月号)の永きにわたり勤め上げた名物編集長。風貌も含め、愛されるキャラクターであり、業界内外に顔が広い「名物編集長」であるところは万人が認める。が、名編集長かといえば万人が苦笑で答える。悠々自適の隠遁生活中かと思えば、二輪業界の社会的地位を向上すべく老体にムチ打って今なお現役活動中(感謝)。ちなみに現在の肩書き?「古・編集・長」は「こ・へんしゅう・ちょう」ではなく「いにしえ・へんしゅう・おさ」と読んでください。

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